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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第二章 機械仕掛けの夢
9/11

予想外の乱入者

階段で巌流が気絶している。吹き飛ばされた勢いで頭を打ってしまったのだ。そして彼を吹き飛ばした者…突如乱入したアンドロイドの左手に持つ杖が、不気味な深い紫色に光り輝く。そのアンドロイドから放たれる気迫と一切のスキを感じられない様に、皆は容易に近づけないでいた。


「なんだいこのでかいの…こんなアンドロイド見たことないよ…」


「アマンダデモ知ラナイノナラ、対策ハ困難デスネ…ドウシマスサム?」


「…僕が巌流を起こしたら、二人で左右から懐に入り込む。みんなは時間を作ってくれ」


「了解!」


テレパシーインカムによるサムの指示を受け、ビルとエージェントたち、援軍として到着した包囲部隊の面々はアンドロイドに向けて発砲する。


とっさにアンドロイドはカナロアを自身の後ろに引きずり込むと、右腕で盾を構えるようなポーズをとった。すると、腕部から紫色のエネルギーの幕が出現する。それは、今ビルたちが後ろに隠れているエネルギーシールドと著しく類似していた。

しかし通常の銃弾は防げても、ビル、エージェントたちのテーザー弾の電撃は防げない。十数発腕に着弾したテーザー弾は、とたんにアンドロイドに致死量レベルの電撃を流し込む。その威力に思わずアンドロイドは「グゥッ…!」とうめき、その場で跪いた。


しかし


「…?なんであいつ倒れない?」


「三~四発撃ちこまれれば大戦時のやつでも火を噴くのに…」


エージェントたちがそんな会話をしながら続けて発砲していると、アンドロイドが立ち上がる。その勢いのまま右腕を大きく振り下ろした。するとシールドに着弾していた弾が全弾床に転がり落ちる。電流が止まり、アンドロイドは再び調子を取り戻す。皆が射撃の腕を止め唖然としていると、アンドロイドがゴキゴキと首を鳴らし、杖を強く握りしめた。


「もう終わリカ?なら次ハコチらの番だ」


直後、アンドロイドが部隊に向けた杖先からレーザービームが照射される。その威力は強力で、ビルたちが隠れているエネルギーシールドを、着弾個所に隠れていたエージェントの体ごと貫いてしまった。

ビームは勢いそのまま地上のつながる階段に迫る。とっさに階段周囲の部隊は上部へ退避、サムは巌流を抱え部屋の中に避難する。しかしビームの着弾によって階段が破損、アナたち後続の突入部隊が下りられなくなってしまった。


「まずい…」


「サム!大丈夫か!?」


「僕も巌流も無事だ!君たちはそのまま上階で待機してろ!」


「でも…」


「被害が大きくなるかもしれない!!とにかく待機だ!!」


「り、了解!」


サムがアナたち後続部隊に指示を出す中、エージェントたちにも混乱が走っていた。


「ジェリー!!そんな嘘だ!」


「なんでこんな…」


「全員落ち着け!悲しむ前に、まずはジェリーの弔い合戦だ!!」


狼狽するエージェントたちをビルは落ち着かせ、再度攻撃を開始した。

二人が左に、ビルともう一人が右からアンドロイドに発砲する。しかし二度も同じ手を食うほどアンドロイドもバカではないようだ。

アンドロイドが左の二人に腕を向ける。突然指先が光ると細いレーザーが五本射出され空中の弾を破壊、そのまま左の二人の体を貫通した。二人は生きてはいるものの、この戦闘で動くことはできないだろう。


「エミリー!シド!!」


「私たちは…大丈夫…」


「それよりあいつを…!」


ビルとエージェントが腰から小型のヒートエッジを取り出しアンドロイドに向かって走り出す。アンドロイドもそれに気づき杖を向け光弾を数発放つが、軽い足取りで光弾をかわし一気に詰め寄ると、正面と側面からヒートエッジをあらん限りの力をもって向かわせた。

だがアンドロイドは即座に反応、杖を持ち替えると先端で正面のエージェントの頭を突き壊し、ビルを右手の掌底で殴り飛ばした。

正面の一人は即死、掌底を食らったビルも壁に吹き飛ばされ、すぐに動ける状態ではなかった。


「ビル!サトー!」


「そんな…」


一瞬で四人を無力化したアンドロイドは、左腕をほこりを落とすかのように払うと、ゆっくりとビルに近づく。その杖の先端は紫色に光り輝いていた。


「あとハオ前だけだ。安心しろ。後ロノオ仲間もすぐに送ッてやる」


「…へっ。それはどうかな?」


ビルがちらりと右を見る。アンドロイドが目線を追うさなか、一つの影がすさまじい速度でビルを飛び越し、アンドロイドに向かってくる。アンドロイドがとっさに杖で防ぐと、とてつもない金属音が部屋に響いた。


「ほォ、まだ生きテイるとは驚いた。やるな、サムライ」


「あれしきでくたばってちゃあ、この仕事はやってられんさ!」


巌流の赤熱する刃がアンドロイドの杖を徐々に焼き溶かし食い込んでゆく。しかし両断するには至らない。半分手前で刃が止まった。


(硬い…!ヒートエッジでも切れないとなると、材質はタングステンか?)


巌流が考えていると、アンドロイドが徐々に杖を右に回転させる。それと同時に、食い込んでいた刀と共に巌流の身体も持っていかれはじめた。巌流の体勢が徐々に傾き手の力が緩む。その機を逃さんとアンドロイドは巌流をで蹴り飛ばした。巌流もとっさに刀を放し両腕を組んで防ぐが、かなり後方に吹き飛ばされてしまった。


「いい刀だ。私デモウマく扱えるかな?」


そう言ってアンドロイドは杖に食い込んだ刀を引き抜き持ち替えると、巌流めがけてやり投げのフォームで刀を投げ飛ばした。銃弾のような勢いで向かってくる刃を巌流は軽々とかわし柄をキャッチ、即座に持ち直した。

それとバトンタッチする形でサムがアンドロイドへ直進する。アンドロイドは杖から光弾を数発放ち迎え撃つも、サムはジェットブーツを巧みに操り方向転換、アンドロイドの周りをまわるように飛びながら両手の銃を連射した。

アンドロイドは腕で顔を覆い銃弾を防ぐ。やはりただの銃弾ではかすり傷程度のようだ。


(やはりボディープレートの硬度も他より高い…弾を変える必要があるな)


考えてる間に弾が切れる。

その隙を逃さずアンドロイドはこぶしを握る。すると指の付け根から四本のビームが発射された。ビームの一本がサムのジェットブーツに命中。サムは勢いそのままに地面に激突した。


「君の手は丸ごとビーム兵器なようだね…?」


「貴様の装備はビームへの耐性が低いヨウダナ」


アンドロイドは迷うことなく杖からビームを照射する。


「まずい!!」


サムは胸をダブルタップする。瞬間エネルギーシールドと同じ膜がサムの体を覆った。どうやらビルが出したシールドよりも強力らしく、ビームは体を貫通することなくバチバチと音を立てて周りに飛び散る。


(ボディタイプのシールドなら防げるのか…しかし…)


サムの着用しているゴーグルには様々な情報が視覚的に映し出されている。その画面の左下にはシールドのエネルギー残量が記されていた。数値は見る間に減っていく。それはすなわち自身の死を意味していた。


(なんて威力だ…このままじゃあと二十秒でジェリーの二の舞だ…)


なおもレーザーは止まらない。次第に体の各所のバリアがはがれ始めてきた。


(…二十秒もなさそうだ…)


ガキィン!!


サムが半ばあきらめていると、複数の飛翔物がアンドロイドに激突、その衝撃にアンドロイドの体制が崩れビームの軌道がそれる。その隙を見て、サムはジェットパックを起動し即座に後退、巌流、ビルと共にアンドロイドに向き直った。


「グ…」


アンドロイドが頭を押さえながら飛翔物の行方を目で追う。それは数回アンドロイドの周りを周回すると、階段のほうへと戻っていく。そして先端をアンドロイドへとむけながら一人の少女の周りで制止した。


そう。アナである。


アナに次いで、アマンダ、キッドマンもサムたちに合流した。


「サムライの次ハ女子供とカウボーイか。随分と”バラエティ”に富んデイるな?WDO」


「アナ!なぜ降りてきたんだ!」


「ごめんなさいサム…でもまずはこのアンドロイドを何とかしないと!」


「アナの言うとおりだよサム。ここまで強力なアンドロイド、ここで拘束しないと大変なことになる!」


「それに、こんな事態も踏まえたうえで前線に立つのを許したのはお前じゃないのか?サム」


話しながらアマンダは機械的なグローブを装着し戦闘態勢をとる。キッドマンも銃のリロードを終え、アンドロイドに銃口を向けた。


「…わかった。キッド、爆破徹甲弾で遠距離から援護射撃を頼みます」


「はいよ」


「ビル、僕と一緒に中距離で奴を射撃、恐らくペネトレートスタン弾が有効だ」


「おう」


「アマンダと巌流、奴の杖から出るエネルギービームは脅威だ。接近戦で杖を封じてほしい」


「了解」


「オッケー任せて!」


「アナ。遠距離からラプターを使ってアマンダと巌流の補助を頼む。思いっきりぶつけるだけでいい」


「わかった!」


サムの指示を受け、各々が戦闘態勢に移る。


「敵は強力だ。遠近共に隙がない。お互いがお互いをカバーしながら叩くぞ!!」


「応!!」


掛け声とともにアマンダと巌流がためらうことなく一直線にアンドロイドに向かって駆け出す。


「何度も同じ手を食ウと思ッテイルノか!」


アンドロイドは三度、杖から光弾を発射する。しかし光弾は空中ですべて爆散した。


「俺が後衛にいるときに、遠距離攻撃できると思うなよ?」


爆風によって巻き上がる土煙を切り裂き、巌流が胴に一太刀浴びせる。だが表面のプレートに切り傷をいれるだけで、致命傷には至らない。


「っしゃおらああぁ!!」


その切り傷めがけ、アマンダの拳がグローブのジェット推進もあって深く突き刺さる。こぶしと体が交わった瞬間、先ほどのテーザー弾とは比べ物にならぬほどの電撃がアンドロイドに走る。少しだけ見える胴体の配線に直に干渉したのだ。


「グおオオおオおお!」


アンドロイドのノイズがより一層激しさを増す。しかしただでは止まるまいと、アンドロイドは左手の杖をアマンダめがけ大きく振り下ろす。


「させるか!!」


巌流の刀がうなる杖を受け止める。だが、さすがはアンドロイドというべきか。普通であれば体から火を噴くほどの電撃を受けながらも力は一切変わらない。しかし巌流とて負けてはいない。あらん限りの力を

身体に込め、アンドロイドの杖を進ませない。

アンドロイドの右手が光る。エミリーとシドを貫いたビームをアマンダに向けて撃とうとした直後。


「やらせない!」


アナのラプターが右手に食い込む。それと同時にビーム兵器も壊れ、もう撃つことはできない状態となった。


「今だ!一気に畳みかけるぞ!!」


サムとビルは側面に移動、正確な狙いで銃弾を数十発お見舞いする。

弾種はペネトレートスタン弾。その名の通り貫通力が高く、着弾した対象に深く食い込み電撃を浴びせる弾である。

ビルとサムが放った弾は、装甲の深くまで食い込むと電流を流し込む。


「ガアアアアアあアア!!」


アンドロイドのノイズはより一層激しさを増す。


もうじき倒せる。殺すとまではいかずとも、拘束可能なまでには無力化できる。この場の皆がそれを確信していた。



だが



突如奥の部屋から、今相手しているアンドロイドより少し大きい全身が黒いアンドロイドが、奥の部屋の入り口を破壊し勢いよく現れた。

黒いアンドロイドはアンドロイドの体を引っ張り奥の部屋に投げ込むと、その腕の勢いそのままに巌流を殴り飛ばす。さらに右腕でアマンダの体を掴み、勢いよく後方へ投げ飛ばした。


「なんだ!?」


「また乱入者かよ!」


サムとビルはぼやきながら黒いアンドロイドへ銃を連射する。直後、黒いアンドロイドが左右に腕を広げる。すると、黒いアンドロイドの肩、腕の装甲がガシャガシャと動きだし手のひらに集約、大盾のような形状に変形する。その盾によって銃弾はすべてはじかれ、地面へぼとぼとと落ちる。


「マジか…?貫通弾だぞ?」


「あいつより硬いのか…」


「だが前ががら空きだぜ!」


キッドマンがすかさず全弾を黒いアンドロイドに向け撃つ。しかし奥の部屋から放たれたビームによって全弾撃ち落された。

ビームの主はあのアンドロイドではない。カナロアだった。


「私が後衛にいる間は銃弾など無意味だ…さて…」


カナロアは四本のアームのうちの一つで黒いアンドロイドの背中をたたく。その合図で、黒いアンドロイドは両腕を体の前で合わせる。すると大盾のような装甲がさらに変形し合体、さらに大きな盾となって奥の部屋にふたをした。サム、ビル、キッドマンはひるまず銃撃を続けるが、黒いアンドロイドはまるで意に介さない。

すると、先ほど部屋に引き込まれたアンドロイドがゆっくりと立ち上がる。


「…少シ侮っテイタヨウだナ」


「!!ご無事でしたか!」


「アア…今回ハ撤退だ。コレ以上ハ難シイだろう」


「かしこまりました…」


その会話に反応したかのように奥の部屋が光る。


「それでは行きましょう」


「アァ」


「待て!!」


皆が捕えようと一斉にアンドロイドの元へと向かう。すると黒いアンドロイドの大盾の一部が再び変形、大きなスピーカーのような形状に変形した。直後、そのスピーカーから強力な音波が発生。思わず皆は足を止め、その場にうずくまってしまった。


「これで問題はありますまい」


そう言ってカナロアとアンドロイドは皆に背を向け歩き出す。


ビュン!!


一つの飛翔物、ラプターがアンドロイドの頭めがけ飛んでくる。アンドロイドは難なくラプターを掴むと、飛んできた方向を見た。


そこには目を水色に輝かせるアナが、皆がうずくまる中よろめきながらも立ちあがっていた。しかし音波に耐えるのがやっとなのか、ハァハァといきは絶え絶えだった。


「絶対…行かせない…!!」


「驚イタナ。ギガスの音波ヲ受けて立ち上ガルモノガイルトは…イヤ、君ナラ当然カ」


「どういう…こと…!?」


「今は話セン。ダガ近いウチニマタ会うダロウ。ソノ時にマタ話ソウジャナイカ。アナ」


「待て…!!」


「そウダ、私が君の名前を知っテイルダケトイウノモ不公平ダ…名乗ろウカ」


そう言うとアンドロイドはアナに向き直る。


「私の名はゼノン。世界中で不条理に虐げられている我が同胞たちを救い出す…それが目的だ」


アンドロイドは目的と名を名乗る。先ほどまで大半の声に乗っていたノイズは、一切流れなかった。


「ではさらバダ。マタ会オう、アナ」


「ダメ…行かせない…!」


手を伸ばすが届かない。作戦開始前、ラプターを用いての周囲の散策と今の戦いで、アナの体力は限界に達していた。ついに音波に耐えきれずアナはその場に倒れこむ。


アナが必死に手を伸ばす中、ゼノンとカナロア、ギガスと呼ばれた黒いアンドロイドは光の中に消えていった。


to be continued

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