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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第二章 機械仕掛けの夢
31/31

ゼノンの底力

「この数を相手するのは、少々面倒だな」


アナの宣言を聞いた直後、ゼノンはアロンの中に格納されている球状のアレスを掴むと、引きずり出そうと力を籠める。

よほど強固に結びついているのか、二つの距離が離れるほど、その間を青白い稲妻が走り、まるで綱のように二つをつなぐ。

それでもゼノンは力を緩めることなく、ついに二つを引き離した。


離れると同時に、アレスの中心部に赤黒い光が灯り、ひとりでに宙に浮き始めた。その光景を確認し、ゼノンはアレスに命令を下す。


「アレス。私を援護しろ」


直後、命令を聞いたアレスの赤黒い光がより一層輝くと、ゼノンの頭上に場を移し、球状の体から触手を四本、まるでタコのようにうねらせ始めた。


その光景を見ていたSIUの面々は、より一層警戒を強める。


「なんだあの鋼玉…うねうねと気持ちわるい…」


「あれじゃない?例の兵器…なんだっけ」


「ロストウェポンだ。恐らく自我がある。AIの類だろう」


「なんだっていいさ。本命はゼノンだ」


アレキサンダー、颯、巌流に流れた少し緩い雰囲気を、サムはすぐに引き締める。


「サム、フォーメーションは俺が説明してある!好きに動け!」


「わかった!それじゃあみんな!ラウンド2だ!行くぞ!!」


「「応!!」」


サムの掛け声と同時に、巌流とアレキサンダーは、迷うことなくゼノンめがけて突き進んでいく。


「単調な。それは通用しないと学んだらどうだ!!」


ゼノンの言葉に反応するように、アレスの触手が砲のように変形し、エネルギービームを二人人めがけて発射した。


「動きは同じでも、スペックは前とは違う!!」


二人に徐々に迫るビームを前に、後方にいたアナは叫びながら手を前に突き出す。すると、六機のラプターが二人の前に出たかと思うと、三機一組で先端を突き合わせた。


【ラプター トライアングルシールド!】


直後、アナの声に反応したラプターたちが姿勢そのままに広がる。すると、三機の間にトライアングル上の青い膜ができた。

膜ができたラプターたちは、二人の前に展開する。


「そんな薄い膜程度で防げるとでも?!」


「防げる!!」


ギュビイイイイイイイイ!!


アレスのビームとラプターのシールドがぶつかり、熱を帯びた甲高い音を発する。接触部分は白く発行し、前すら見えないほどにまばゆい閃光を放つ。アレキサンダーと巌流の眼前で起こるその光景は、ゼノンの元までたどりつくその足を止めるのに、十分である。


しかし、数多の戦場を潜り抜けてきたこの二人には、一切問題なかった。


迷うことなく、二人は前へ突き進む。

そしてゼノンの元までたどり着くと


「破天一刀流 岩砕突き(がんさいづき)!!」


「”パイル・スティンガー”!!」


同時に放った技は、一直線にゼノンの頭めがけて進んでいく。だが、ゼノンは特に意に介していないようだった。


ゼノンは左腕に持つアロンで、回転するアレキサンダーのランスを受け止め、もう右手で巌流の刀を掴む。すさまじい速度と威力で放たれた技の勢いが、ぴたりと止まった。


「いい威力だ。この腕でなければ、あるいは届いていただろうな」


そう言ってゼノンは刀ごと巌流を持ち上げ、紙屑のように投げ飛ばすと、間髪入れずアレキサンダーに手を向ける。手からは駆動音と共に紫色の光が放たれ、周囲の空気を吸い込んでいく。


「まずは一人!」


ゼノンが言い放った直後



ビュゥン!



エネルギー兵器特有の音が鳴るとともに、ゼノンの右肩に痛みが走り、腕の照準が大きくそれる。


「ぐっ!?」


痛みに反応し、ゼノンが振り返る。そこには、先ほどまで巌流を守っていたラプター三機が、銃口をこちらに向けて漂っていた。


(別々のラプターの同時並行操作…!ガーデハイトでやってこなかった以上、出来なかったはず…!)


考える暇もなく、自身の左肩を射抜いたラプター群から、再び攻撃が始まる。


(致命傷にはならずとも、無視できる威力ではない…!)


ゼノンが指を鳴らす。


その直後、頭上にいるアレスの“目”と思われる部分が赤く光ったかと思うと、ゼノンの頭上を離れ、ラプターに攻撃を開始した。


「これしきのかく乱、どうとでも!」


「なら、これはどうかな?」


ゼノンが再びアレキサンダーに腕を向けようと動かした直後、その半ばで腕が動きを止めると同時に、電流が走るようなしびれと痛みが、ゼノンの右腕を襲う。再びゼノンが右腕に先に目をやると、地面においてある円盤状の物体が、ゼノンの腕に電流を巻き付けていた。


「!?」


「アマンダの試供品『エレクトロマグネット』!電気の力で張り付いてんだ、並大抵の力じゃちぎれないないぞ!」


自慢げに話しながら、サムとビルが左右に展開する。


ビルの言う通り、ゼノンは何度か力むがピクリとも動かない。それどころか、動かすほど電機の縄が締まっていくのを感じる。


「破壊不可なら、取り込むまでのこと!」


その言葉と共にゼノンの右腕が変形し、周囲の空気ごと電気縄を吸い込んでいく。


「ヤールングレイプルにとって、すべてはエネルギーにすぎんのだ!!」


すると、電気縄を吸い込んでいる右腕に、パリパリという音とともに、紫色の電流が走り始める。その電流に比例して、電気縄の光がか細くなり始めた。


「まずいな、ロストウェポンはあんなこともできんのか…」


「隙であることに変わりはない!一気に行くぞ!」


「おう!アレク!」


「わかった!」


アレキサンダーが返事をしたと同時に、ランスが回転を止め、「バガン」という音と共に先端を開ける。ゼノンが音に反応し見たランスの中。その奥には、まばゆく輝くオレンジ色の光があった。


「”ボルカニック・バースト”!!」


直後、業火がうなりをあげてゼノンの体を包み込んだ。


「雷は吸い込めても、炎は無理だろう!!」


叫びながらその場を離れるアレキサンダーとバトンタッチする形で、サムとビルが業火に包まれているゼノンの元へ向かう。


「今までさんざん好き勝手やってくれたからね!」


「俺たちからのお返しだ!!」


二人は同時に、腰のポーチに入っていた爆弾のようなものを投げつける。爆弾は炎の中に入ると同時に作動。周囲に放電を始めた。


「『サンダーボール』!ハルキンソンの戦いで、君が電気に弱いことは知っている!」


「エレクトロマグネットの吸収速度を見るに、この量の電気を即座には消せない!そのまましびれてろ!!」


二人の見立て通り、稲光が走る業火の中から、ゼノンの苦しむ声が聞こえてくる。どうやら炎もサンダーボールの雷も、吸収できていないようだ。


「今だアナ!」


「うん!!」


アナは、先ほど防御に使ったラプター三機を携え、ゼノンの元へ全速力で向かう。その道程で、二機のラプターが、互いにビームを照射。そこからエネルギー状の縄のようなものが生み出される。


【ラプター ユーズダブル フォースバインド!!】


ラプターが生み出した縄がゼノンの体に絡みつこうと回り始める。


その刹那



「なめるなぁああああああ!!!」



雷鳴のごとき轟音とともに、ゼノンの体から電気をまとった衝撃波が発生し、自身にまとわりついていた炎と雷もろとも、ラプター群を吹き飛ばす。衝撃波のすさまじい威力に、皆もその場で踏ん張らざるを得ない。


その衝撃を間近に食らったアナは、全身に流れる電流と共に、壁に激しく身を打ち付け、気を失ってしまった。


そんな中、爆風を耐え忍ぶアレキサンダーの前で、ふいに声が聞こえる。


「お返しだ」


アレキサンダーがゆっくりと目を開けると、ゼノンがエネルギーを蓄積し紫色に発光する左腕を、大きく引き絞っていた。


〔ヴォイドフィスト〕


ゼノンの拳がアレキサンダーに命中した途端、電気質のエネルギー波が再び発生し、アレキサンダーを吹き飛ばす。すさまじい勢いで壁に激突したアレキサンダーの体には、紫色の電流が走っていた。


「アレク!!」


「気を向けるのはそっちでいいのか?」


ほんの一瞬気をとられたビルの元に、ゼノンが瞬間移動かのごとき速度で距離を詰める。


「ビル!!」


「やべ…」


ビルとサムの言葉を待つことなく、ゼノンはビルの頭を掴むと、地面に叩きつける。その勢いでコンクリート状の地面は大きくくぼみ、辺りを覆った土煙を、遅れて発生した紫色の衝撃波が吹き飛ばす。


次に見えたビルの姿は、とっさにかばったであろう腕が粉々に砕け、体中から火花と電流が、バチバチと音を立てて辺りを舞っていた。


「ビル!!」


「よくも!!」


その光景を見て、激高したサムと巌流がゼノンの元へ向かう。サムのマシンガンから絶えずことなく掃射される弾幕も、ゼノンに効果はなかった。


「くどい」


そういって、ゼノンは二人に向けて右腕をかざす。途端に右腕は変形し、紫色の電流を周囲に放ち始める。


「させない!!」


と、横から数本の糸が伸び、ゼノンの右腕に絡みつくと、あらぬ方向へと軌道を変えると同時に、すさまじい推力がゼノンを襲う。踏ん張るゼノンが糸の出ているほうへ目をやると、颯が猛スピードで進むレオンハルトの肩に乗りながら、必死に糸を引っ張っていた。


「おぬしの攻撃手段は変形する腕と杖のみ!」


「僕が封じちゃえば、それで勝ちだ!」


颯はゼノンの腕と杖をからめとろうと、さらに糸を射出する。


だが、糸は体に巻き付く前に、ゼノンにつかまれてしまった。


「これしきの糸で、私を捕縛できるとでも?」


ゼノンは糸を引っ張る。しかし、糸は切れないどころか、引こうとした腕すら動かない。


「その糸は特別製でね!そう簡単には切れないよ!」


「それに、颯の体は我と糸で固定されておる!そんじょそこらの力では、我は動かんぞ!」


「ほう?おもしろい。ならば攻め方を変えるか」


唐突に、ゼノンは踏ん張るのをやめ、糸に身をゆだねる。


「おぉ!?」


ゼノンとの力比べをするために、ジェットの出力を最大まで上げていたレオンハルトは、途端に壁へと直進、そのまま激突してしまった。


「ぬぅ…すまぬ颯…大事ないか…?」


「う、うん…僕は大じょ…」


「それはどうかな?」


二人が立て直す間もなく、ゼノンが杖を振りかざしてとびかかってくる。


「!颯!危ない!!」


とっさにレオンハルトは、自身のハンマーで杖を受け止める。辺りに火花と鈍い金属音が響き渡る中、二人は押し合いになっていた。


「これしきの力ぁ…我の防御を破るには足りんぞぉ!!」


「力などいらん。貴様を殺すだけならばな」


と、ゼノンの持つ杖の先端が紫色に光った直後、巨大なビームがレオンハルトに向けて照射される。


「ぐおぉおお!!?」


「どれだけ貴様が頑強だとしても、この距離でこの威力のビームには耐えられまい」


ビームは威力を弱められることなく、絶えずレオンハルトを襲う。何とか腕を使って顔への直撃は防ぐが、次第に照射面のアーマーは溶け始め、猛烈な熱がレオンハルトを襲い始める。次第に、ビームの音にまぎれて、レオンハルトの叫び声が聞こえ始めた。


「どちらが先かな?焼け死ぬか、塵となるか!!」


ゼノンがさらに出力を上げようとした直後、突然腕ごと杖が引っ張られ、ビームの軌道がそれる。


「これ以上好きにさせるか!!」


颯が叫びながら、腕から射出した糸を使って、ゼノンの腕を必死に引っ張る。だが、当のゼノンはふぅとため息を一つつくと、杖を持ち替え糸をからめとり、強く握りしめた。


「糸使いのくせに、からめ手は使えないようだな」


瞬間、糸を伝って颯の体にすさまじい電流が流れる。颯の耳を抑えたくなるような叫び声が、部屋全体に響きわたる中、その声をかき消すほどの怒号がゼノンに向けられる。


「貴様ぁあああ!!!」


再び巌流とサムが、ゼノンへ向けて直進してくる。ゼノンは糸を手繰り寄せると、ぶんぶんと振り回し、颯を二人めがけて投げ飛ばす。


「!あぶない!」


とっさにサムが自らの体をクッションに颯を受け止めるが、勢いそのままに激突。地面へと打ち付けられてしまった。


しかし、攻勢の手を緩めるわけにはいかない。


二人の姿を横目に流しながら、巌流は今一度、ゼノンめがけて刃を向ける。


「破天一刀流!!」


だが、その刃はゼノンに届かない。


突然、巌流の背後から鋼色の触手が複数本伸び、巌流の刀と腕に絡みつく。


アレスが、先ほどまで相手していたラプターを倒したのか、再びゼノンの援護を始めたのだ。


「ぐ!?」


「おぉ、さすがアレスだ。数機だけとはいえ、もうラプターを伸したか」


巌流の腕から、ギリギリと痛ましい音が響く。


「さて、私の体に幾度となく傷をつけた貴様の太刀筋は脅威だ。幾度となく向かってくる精神力も、目を見張るものがある。貴様がアンドロイドならば、どれほどよかったか…」


杖を携えながら、ゼノンが巌流の元へ歩み寄る。


「だがまぁ…その精神力で下手に生き延びられても面倒だ…とどめを刺す前に、ここで芽を摘んでおくとしよう」


その声と同時に、アレスの腕を締め付ける力が強まり、引きつぶされるような痛みが、巌流の体に走る。しかし、巌流はうめき声一つ上げることなく、ただ一点。ゼノンをにらみつけていた。


「すさまじいな。これほどまでの胆力…もはや尊敬に値する。」


「どれだけこの俺を痛めつけようと、貴様に屈することなどありはしない…!!仲間の仇をとるまではぁ!!!」


「ならばこの際だ。貴様が屈するまで痛めつけるとしようか」


その声に反応し、アレスの力がさらに強まり始めた。


と、ゼノンの目に巌流の刀に目が留まる。


アレスの巻き付く隙間から見える刀の刃が、赤く光り始めた。


「破天一刀流……炎舞…!」


「…なに?」


「炎龍爪!!!」


直後、巌流が渾身の力をこめ、腕を振り下ろす。その力に耐えきれず、アレスの触手はブチブチと音を立ててちぎれ、刀に巻き付いていた触手は焼け溶け、ばらばらと空中で霧散する。


そして



ザン!!



巌流の振り下ろした刀の炎熱する刃が、ゼノンの体に袈裟懸けに深い傷をいれる。


「!?」


「俺を甘く見すぎたな…!」


「…やはり…貴様がアンドロイドだったらどれほどよかったか…」


巌流が刀を振り下ろし、再度一撃を見舞おうとした直後。



巌流の体を、アレスの触手が貫いた。



「がっ……」


「来世で再び相まみえよう。今度は、同じ種族として」


ゼノンの杖が紫色に光り輝き、稲光が走る。巌流に死を連想させるには、十分だった。


「さらばだ」



ガギィン!!



と、ゼノンの杖とアレスに、ラプターが突っ込んできた。

その先をゼノンに目をやると、気絶から目覚めたアナが、ラプターを持って突進する。


アナの剣のように持ったラプターが、ゼノンの持つ杖、アロンとぶつかり、火花が飛び散る。



再び、二人の顔が付き合う。今度はもう、逃げ道はない。



「ゼノン!!!これ以上はさせない!!!」


「アナ……残るは貴様だけだ…!」


to be continued

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