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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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42−1.冒険者の真似事


 朝霧が残る平原で、ドスンドスンと言う大きな魔獣の走る音が響き渡り、白い霧の先に赤い光が見え隠れする。


 「グレン君!其方に行きました!!」


 叫ぶアレイナの声に「はーい」と気のない返事をしたグレンが、霧の中から飛び出し突進してくるフレイムボアに向かって両手を向ければ、目の前に赤い魔法陣が出来上がりそこから勢いよく青い槍が飛び出し、フレイムボアの額を貫通した。


 ドサリと言う音を立てて、琴切れたフレイムボアが平原の草むらに横たわる。


 少し離れた場所でも、フレイムボアの悲鳴が響き渡り、ドサリという音が響いた。


「タキナ様、この辺りの魔獣はこれで最後のようです。」


 そう言って、荷馬車ほどの大きさのフレイムボア、その牙を掴んで引きずって持ってきたリリーちゃんの腕力に慄く、相変わらず我がパテーティーのロリショタ腕力には脱帽です。


「意外と早く片付きましたね。

 ハイランジアで幾らになるのか…」


「タキナ様ぁー、解体始めっちゃって良いですかぁー?

朝食はぁー、この新鮮なお肉でぇーぱーっと焼肉にしちゃいましょぉー!

お肉お肉〜」


 朝っぱらから焼肉パーリィー!?

エルフって鋼の胃袋なのか?それともロメーヌだけ…な気がするな


 焼肉の言葉に反応したグレンが、狩ったフレイムボアを引きづりながら走ってくる。

だから、腕力…君達の持っているフレイムボアは発泡スチロールか何かでできているんですか?

と、問いたくなる。


「エルフ!これも、このフレイムボアも捌いてくれ!」


「もちろんですよぉー、サクッと全部捌いちゃいましょー

お肉は多い方がいいですもんねぇー」


「ウンウン!肉は多い方がいい!」


「2人とも朝からお肉なんて、よく食べれますね…」


 アレイナが呆れたように言いながら、ロメーヌの解体の手伝いに入る。

 私の狩ったフレイムボアも解体を託し、リリーちゃんと共に焼肉のための準備を始めた。





 平原に出てきてはや2日、ハイランジアに向かう道すがら、我々一行が平原に出てきた魔獣を善意で狩って…いるわけではない。


 事の発端は、ミッドラスから出立した日の夜

 皆が寝静まったのを確認して、隣に座って焚き火の世話をしていたリリーちゃんに話しかける。


「リリーちゃん、少し相談事があるのですが…」


 ゆらめく炎に顔を照らされたリリーちゃんが、不思議そうな顔をしてこちらを向く


「何でしょうか?

タキナ様の憂いを晴らすためなら、リリーは何でも致します」


 相変わらず平然とした顔で、とんでも無い事を言い出す幼女に頭を抱えそうにる。


「リリーちゃん、気持ちは嬉しいのですが難しいと思う事、出来ない事はちゃんと言ってくださいね。

 私からのお願いです…。

 それで、相談事と言うのは…旅の資金についてです…。

 ミッドラスは想定外に短い滞在だったので、そんなにお金は使いませんでしたが、これから向かうハイランジアでも宿や食事が必要になると思うので、お金の工面をどうしようかと思いまして…」


「タキナ様の願いであれば、リリーは是が非でも不可能を可能にします。が…金銭問題ですか?

ドラゴノイドから献上された品を売れば結構な額になると思います。

ドラゴノイドの工芸品は人間の貴族の間で、人気があると聞いていますので」


「リッ…リリーちゃんの気持ちは十分伝わりました…はっ…話を戻しますが…

それも考えはしたんですが…売ってもいいと言われているとはいえ、アレイナやクロイから感謝の気持ちで頂いた品を売ると言うのは気が引けるんですよね…。」


 人として、神として…それって倫理的にどうなの?と、思ってしまう。

 貰ってから結構年数たってるとか、もう2度と貰った本人と会わないよね!とかなら私も迷わず売るが…貰ってからそんなに経ってないし、本人目の前に居るし…自分でも気にしすぎとは思うが偽善者の私は、他者から悪く思われたくないと言う思いが先行してしまう…。


「あぁぁ…何処までもお優しいタキナ様…あれっぽっちの奉納品にすらお気持ちを割くなど…リリーはリリーは…心を打たれました。」


 演技がかった様子ではあるが、額に手を置き夜空を仰ぐリリーちゃん。

 そんなリリーちゃんだが「そうですね…。」と、やや考えながらも顔を正面に戻す。


「1番手っ取り早いのは、ハイランジアへの道すがら魔獣を狩ってその皮や牙、魔石などを売る事かと思います。

 ミッドラスほど大規模ではないですが、大抵どの国も魔獣の買取はしていますし、道すがら狩っていけば結構な量になるのではないかと」


 リリーちゃんの言葉に、やはり魔獣狩りしかないか…と考える。

 幸か不幸か平原に魔獣が頻出しているので、神としてのお仕事としてハイランジアまでの道中とはなってしまうが、掃除して通るのも悪くはないか…。


 ただな…神っていうより、冒険者になっちゃうよね…でもな…お金のためだし、みんなを養うにはそうするしかあるまい。

 

 くっ、新米のダメ神である私は冒険者へと転職します。

 もはやラノベのタイトルか何かのようだ…。

 

 世界崩壊は迫っているはずなのに、こんなので良いのか私…いっそ、力を振り翳して人間ども世界が崩壊しないように協力しろ!じゃないとお前らから滅ぼすぞー!と、脅した方が楽なのでは?と、脳筋的なことを考えるが、ブルリと全身が震える。

 思い出すのはあの悪夢…色々あり過ぎて頭の隅に追いやっていたが、夢か未来か…私は、私の思う神になりたい…。


はぁ…と、深いため息を心の中でついた。


「そうですね。

早速、明日の朝にでも皆んなに話をして、魔獣を狩りながらハイランジアへ向かいましょう。

 ついでに、食料事情も解決できて一石二鳥かもしれませんね」


「人々は魔獣を狩って歩くタキナ様を、感謝と尊敬の念を込めて、地べたに…いえ、跪いて、涙ながらに崇めるに違いありません!

 はぁ〜、人々に跪かれ、祈られる神々しいタキナ様のお姿が目に浮かびますぅ〜」


 ロメーヌが乗り移っている!?

と思ってしまう程、体をくねらせ歓喜に打ち震えるリリーちゃん


リリーさーん、戻ってきてくださーい。


 でもまぁ、魔獣を狩って歩くことは結果的に平原の小さな村や、旅人達を守ることに繋がるだろうし、神の仕事からは逸脱していないか…ものは言いようだけど…。



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