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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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41−2.脱出


 誰かが階段を登ってくる音、屋上の出入り口に顔を向ければ出てきたのは、見慣れたエルフのお色気お姉さん、ロメーヌだった。


「あらぁー、私が1番最後?

皆んなはやぁーい」


 えへっ♡と、言わんばかりの笑顔をするローメヌだが、露出度の高い服から丸見えの肌に残る赤い跡、キスマークというやつですか?


 ロメーヌさんこの短時間で貴方…ブレなさすぎる!!

 流石ロメーヌさん!どんな時もブレません!!一周回ってやっぱり好き!!

 そんな事を思いながら脳内で拍手していると、クロイが盛大なため息をついた。


「タキナ様、このエルフは里に返した方が良いのでは?」


「アハハ…まぁ、遅刻したわけでもないですし、ロメーヌは大人ですからプライベート時間まで口を挟むつもりはありませんよ…まぁ、子供の教育にはよろしくないとは思っておりますが…」


乾いた笑いで誤魔化せば、クロイが眉を顰め


「妹にも悪影響です…」


と、ポツリと呟く


「ロメーヌさん、首回り虫刺されですか?

痒いなら塗り薬がありますよ?」


何も知らない純粋なアレイナの言葉に、ロメーヌがあっけらかんとしたように


「アレイナちゃんありがとぉー、でもこの跡は虫刺されじゃなくてぇー、イイ男とね「ロメーヌ貴様、いらん知恵を妹に与えるな」」


「えぇー、お兄さんったらこの跡がなんだか分かっちゃうなんてぇー

さては付けた経験がおありなのかしらぁー、ンフフフー」


 ドンマイ…してやられたなクロイ、ワナワナと顔を赤くして震えているクロイを憐みの目でみる。

 干し肉を黙々と食べていたグレンが


「虫刺されなんて、誰にでもあるんじゃないのか?」


 と、アレイナと共に首を傾げている。

なんて純粋な2人!!!


「ハイハイ、2人ともそれくらいにしてください。

荷物をしまったら直ぐにでも出ましょう

私達がいなくなった事に、兵士が気づいてもおかしくないですからね」


「あっ!それなら、もう気づかれてますぅー

さっき、兵士達がタキナ様を探せ!

って、走って通り過ぎて行きましたぁー」


「それを早く言って下さい、ロメーヌ!!

早く荷物をまとめて!!

直ぐに出ますよ!!」


 広げていた食料を慌てて鞄に詰め込み、クロイとエドが様子を伺うために建物の淵まで行き、物陰に隠れて下の様子を伺う。

 城壁の方はアレイナが兵士の位置を再度確認してくれている。


「タキナ様、僕の背に乗って出て行った方が早くないですか?」


 食べていた干し肉を飲み込んだグレンが、こちらを見る。


「それはそうなんですが、ドラゴンの姿はあまりに目立ちますから…これ以上、街の皆さんを怖がらせるもの気が引けますし、平原にいる人々にもあらぬ噂が流れかねない。

 何より、ドラゴンの背に乗れば私の行き先が漏れなく丸わかりですからね」


 ちぇーと言わんばかりの顔をするグレン、グレン的には街の人々に威厳あるカッコ良いところを見せたいのかもしれないが、許してくれ…。


「準備ができましたタキナ様」


 リリーちゃんの言葉に頷き皆の方を振り返れば、クロイとエドが荷物を肩にかけ、アレイナもリュック型のカバンを背負う。

 ロメーヌは来たばかりで休む間もないが、視線が合えば大丈夫です♡と言わんばかりにニッコリと笑みを浮かべる。

グレンも革鞄を肩からかけ、リリーちゃんは手ぶらなのでいつでも準備万端


「今からあの城壁に飛び移りますが、距離的にどうですか?

届かなそうなら、背負って城壁まで飛びますが?」


 城壁の高さは10階建の建物相当、この建物は5階建なので高さが5階分足りない。

 さらに建物と城兵の間は30m程離れている。

 一瞬、アレイナ、クロイとエドがギョッとした表情をするが


「だっ、大丈夫です…届かない距離ではないかと思います」


と、クロイの返答に周りも頷いているので、なんとも頼もしいメンバーと思いつつ、ドラゴノイドの運動神経が今更ながらに凄いなと改めて驚いてしまう。


「では、行きます!」


 そう言って、屋上の上を走り出し助走をつけて屋上の縁を蹴り勢いよく飛び上がり、一気に城壁の上へと飛び上がる。

上空で風をきるのは何とも癖になる心地よさだ。


 飛び上がった束の間の対空時間、その一瞬で平原に沈む美しい夕陽が視界に入る。

 朝日を見ながら戦ったと思ったら、その日のうちに夕陽を見ながら逃走とは我ながら慌ただしい事だよまったくと、美しい夕陽に目を細めた。


 城壁の頂にある通路へと着地して、後ろを振り返れば、難なく飛び上がって来るリリーちゃんとグレン、しかしドラゴノイド3人は飛距離がギリギリだったようで、城壁の淵になんとか手をかけて、ぐぬぅー!という効果音が聞こえそうな表情で、城壁の通路部分に這い上がってきた。


 そんな3人を横目に、城壁の出っ張った縁部分に錘が括り付けられたロープが巻きつき、ビンッとロープが張られたと思ったら、ロメーヌが颯爽とその縁までやってきて、片手を城壁に掛けると軽やかに飛び上がり、通路へと着地した。


 流石エルフ、軽やかだわー、腕力ではドラゴノイドが上なのだろうが身軽さでいけば圧倒的にエルフが上を行くようだ。


 膝に手を付いてゼェーハー言っているドラゴノイド3人には悪いが、兵士に見つからぬ前にここを降りねばならない。

 再度、行きますよ!と声をかけ、直ぐ様平原へと飛び降りる。


 人間のままであれば、間違いなく死んでたろうな…と思う高さから着地しても、ストン!と、猫が高所から降りたように軽やかに着地する。

 ドラゴノイド3人は大丈夫だろうか?と、少々不安になり上を見上げれば、迷いなく飛び降りた子供2人と、ロメーヌが、これまたスタッと地面へと着地する。

 ドラゴノイドの3人は意を決して、同時に飛び降りてきたが3人は少々バランスを崩したものの、無事に着地したが、ジーンという着地の際の衝撃に耐えているようで、痛みに悶絶していた。

 

 まぁ、無事ならばヨシ!!と、そのまま走り出して、城壁の直ぐそばにある岩場の影に隠していた馬達の元へ向かう。


 城壁を見上げれば、騒ぎになっている様子は無い。

 とりあえずはクリアーかな、と思いながら草を食んでいた5頭の馬のうちの1頭に乗れば、リリーちゃんが嬉しそうに私の腕を潜って前に乗り、クソっと言いながらグレンが私の後ろに乗って控えめに背中にしがみつく

えっ!?3人で乗るの!?どちらかアレイナかロメーヌの馬に乗せてもらわない??

2人とも可愛くて仕方ないけど、重量オーバーならないかな!?

馬さん大丈夫!?と、不安になるも特に動じている様子は無いので、大丈夫なのかもしれない。

 

 ロメーヌも馬に跨ると、城壁の方に単眼鏡を向けている。

 兵士の動向を確認してくれているらしい。

 こう言うところは、やっぱり頼りになるなーと感心する。


 そんな事を思っている間に、疲れ切った表情でヨレヨレしながら追い付いてきたドラゴノイド3人


「3人とも…大丈夫ですか?」


 そう声をかければ「だっ、大丈夫ですっ!!」と、アレイナが返答するもまだ足が痛むのか、なかなか馬に乗れないアレイナを、クロイが横から押してやりながら上に乗ると、エドからリュックを受け取っている。


「私とエドも大丈夫です。

ドラゴノイドともあろうものが、情けないところをお見せしました。」


そんなことありませんよ、と笑えばクロイが苦笑いをしてアレイナを見上げる。


「アレイナ…気をつけて行くんだぞ、薬学に夢中になりすぎてタキナ様に迷惑をかけないようにな」


「うっ…気をつけます…。

 兄様も、エドも道中お気をつけて」


「分かった気をつけて帰る。

では、タキナ様…妹をどうかよろしくお願い致します。」


その言葉に頷き


「2人とも気をつけて、里の皆さんにもよろしくお伝えください。」


 そう言って微笑むと、それでは行きましょうか!と、ハイランジアの方角に向けて馬を走らせる。

 夕陽がだいぶ沈み、平原が闇に包まれ始める。


 ミッドラスの城壁から離れた街道へと馬を進めていると、離れた場所から突然大きな声がかかる。


「タキナ様ぁぁぁぁあ!!!

困りますぅぅぅぅぅぅ!!

お戻りくださぁぁぁぁぁい!!!」


 この声は、ドートルか?

門が開いた音がして居ないことから、城壁から叫んでいるのだろうか?


見つかっちゃったかー


 悪戯が成功したかのような、そんな楽しげな感情が湧き上がり思わずアハハと笑いが溢れてしまうが、ドートルの声に振り向く事なく、シルトフィア代表にヨロシク!と言う気持ちも込めて、右手を挙げてバイバイと振れば


「そんなぁぁぁぁぁぁーーー」


ミッドラス軍、軍団長の哀れな叫びが薄暗い平原に響き渡った。



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