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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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41−1.脱出


  用事を済ませ、ガヤガヤと賑わう街中を足早にすり抜けて城壁へと向かう。

 後ろを振り向けば、後ろからフードを被った小さな2人がトコトコと付いてくる。


 リリーちゃんとグレンのそんな姿を見て微笑ましく思いつつ、人とぶつからぬように隙間を縫うように進むが、思ったよりもホセル家で長く時間を過ごしてしまったので、後ろの2人が遅れない程度に少しばかり早足になる。


 ホセルの思いもよらぬ特技が炸裂して、美化しすぎでしょ!!

と、ツッコミを入れてしまうほどの私のラフ絵が完成し、リリーちゃんから許可が下りてしまったのだ。

 売れなくても知らないからね!!私に罪はないですからね!!と、念を押したが…売れないというのは、それはそれで私も傷つくんですけどね…。

 と、心の中で盛大なため息をついた。


 気を取り直して、その後直ぐにオルハントのところに向かったのだが、タイミングが合わず会う事が叶わなかった。 

 しかし、エルフの里でオルハントと共にいた奴隷狩り仲間のゴイルが居たため、要件を書いた手紙と礼金の入った小さな袋を預けた。


 手紙を読んだオルハントが果たして協力してくれるか否かは、もはや彼に託すしかあるまい。

 残っていた仲間の話では、どうやら彼らは奴隷狩りから足を洗い、奴隷落ちした嘗ての同国の民達を1人でも多く助け出すつもりでいるらしい。

 今はその資金繰りや、助けた民をどこに住まわせるか、どう自立させるかと色々と考えているらしい。

思わぬところで、NPO法人的なものが出来上がっていて正直驚いた。


 とは言え、祖国の民だけの話だ。

 根本的な解決とは言えないが、ほんの少し、ほんの少しだけ、何かが変わり始めたんじゃないかと、少しだけ前向きな気持ちにはなれた。


 そんな事を考えているうちに、目的地の城壁が目の前にある5階建の廃墟のような建物へと辿り着く、街の中心から離れた城壁付近はどこも似た様な様子で、人が極端に少ない。


 周りを見渡し、人の目がない事を確認するとその廃墟へと入り屋上へ続く階段を登る。

ギシギシどころか、ガタつく階段にヒヤヒヤしながらも屋上へと出れば、すでにアレイナ、クロイ、エドが待っていた。


「皆さん早いですね」


待ち合わせの時刻までまだ少しあるが、3人の様子からして今し方きた様には思えなかった。


「我々は里に持ち帰る品を買い揃えるだけでしたので、すぐ用事が済みました。」


そう言って、足元の皮袋に視線を落とすクロイ


「私もすぐに用事が済んでしまいまして…

薬草の本を色々買いたかったのですが、あまりに金額が高くて…一冊しか買えませんでした。」


 ぐすん…と、鼻を啜るアレイナ

 

 本はいつの世も、どこの世界も高いのだろう。

 現代の日本とて、専門書のハードカバーともなれば万はくだらない。

 医学部に進んだ友人が、教科書はどれも1万越えで、安くとも5千円以上すると聞いた事がある。

 授業の科目の数だけ6年間、毎年書籍を買い揃えたら数十万は軽く超えるだろう。

 医学部に進むと、高いのは学費だけじゃないんだな…と、思ったのを思い出した。


 何よりこの世界では紙は貴重、一冊買っただけでもなかなかの金額だったろうに…

出資してあげたいのは山々だが、この先どれだけ路銀が嵩むかわからないからな…金に困る神って前代未聞なのでは!?

 お金の話は聞きにくくて先延ばしにしていたが、リリーちゃんと話し合おう…そう心に決めて、ロメーヌは?と見回すが姿はない。

 それに気づいたのか、アレイナが


「ロメーヌさんなら、まだ来られていません。

途中まで一緒だったのですが…その…時間まで暇だから、相手をしてくれる男性を探すと…」


「あのエルフ…」


 ゴニョゴニョと頬を染めるアレイナ、そして、あからさまに嫌悪感丸出しの顔をして苛立たしげなクロイ


 「そっ…そうでしたか…」

 

 それ以上は何も言うまい。

 まぁ、自由行動だしロメーヌの私生活にまで口を出すつもりはないが、安定の歩く18禁お姉さん…

やれやれ…と首を振り、近くの木箱の上に腰掛ける。


 城壁の方を見上げれば、城壁の上部の通路に兵士の姿はない。 


 まぁ、何かあればすぐに駆けつけられるよう見張ってはいるのだろうけど、この場所は城壁の見張りの兵士がいる場所からは離れている。

 いくら走るのが早いとはいえ、一瞬で飛び越えれば彼らとて間に合いはしないだろう。


 本来ならば暗い時間に出たいところだが、残念ながらそうは言っていられない。

 正直、既に宿にいない事がバレていないかヒヤヒヤしている。

 

 ロメーヌを待つ間、軽い食事を摂りつつこの後の行動を伝える。


「城壁の下にはリリーちゃんとグレンが昨晩用意してくれた馬が用意してありますが、クロイ達は森に戻るのでしたよね?

 森を彷徨いているかもしれない、屍魔獣の対処はドラゴン達に頼んでありますが、道中はくれぐれも気をつけて下さい。

 城壁から降りた後は、ゆっくり挨拶をしている時間はないかもしれませんから今のうちに、クロイ、エド、今回は本当にありがとうございました。

 2人が知らせに来てくれなければ、どうなっていた事か…本当にありがとうございました。」


「そんな!お辞め下さい。

タキナ様に感謝されるような事は何一つしておりません。

 我らではどうにもできない魔獣の対処を、情けなくもタキナ様に頼みに来たまで、むしろ感謝を述べるべきは我らの方です。

 本当に、ありがとうございました。」


 そう言って、頭を下げるクロイとエド、そしてアレイナ、お互いが


「いえいえ、こちらこそ」

「いえいえいえ、こちらこそ」


と言う謝罪合戦になっていたところで、誰かが下の階から上がってくる音が響いた。




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