40−1.頼み事
とある場所のとある塔、その地下には石造りの部屋がる。
その場所は地下にあるせいで、壁づたいにピチョンピチョンという音を立てながら水が滴り落ちている。
湿っぽいこの部屋を照らすのは、壁にかけられた光る石と、部屋に似つかわしくないほど立派な黒い重厚な丸いテーブルの上に置かれた黒のランプ、その灯に照らし出されているのは黒いローブを着た1人の男と、グレーのローブを着た男が4人、その5人は丸テーブルを囲うように着席しており、深く被ったローブのせいで表情を窺い知ることはできない。
「まさか、魔獣が全滅とはな…それで、ミッドラスで行動していた者達はどうした?」
黒いローブの男が口を開くと、低いしがれた声が部屋に響いた。
それを聞いた向かいのグレーのローブの男が、紙を一枚取り出してテーブルへと出す。
「我らとしても予想外の出来事でした…。
暗躍していた者達は、ミッドラスの元老院の1人のスタノバの自宅に身を隠す。
その連絡以降、連絡は取れぬままだそうです。」
そう話せば、別のグレーローブの男が話だす。
「ふん、全滅したとて人工魔石の実地調査はできたのだ。
こちらで観測もできている。
そ奴らはもはや不要ではないのかね?捕まっては面倒だぞ」
「簡単に言ってくれる。
この魔石の研究は国家機密だぞ、この国の最重要機密と言ってもいい。
帝国やハイランジアの犬どもがこの国でも彷徨いている。
おいそれと、秘密を共有する者を増やすわけにはいかんのだよ」
「ふむ…そうだったな、この研究の第一人者をも葬ったことを忘れておった。」
「おやおや、言い方には気をつけていただきたい。
あれは、不慮の事故だったろう。
素晴らしい研究だったからこそ、彼の偉業を、研究を我々が引き継いだんじゃないか」
次々と口を開くグレーのローブの男達の話を黙って聞いていた黒のローブの男が、言葉を吐き出そうと口を開くと、その吸い込んだ息で察した者達がその口を閉じてぴたりと会話を止めた。
「スタノバに伝えよ、黒髪の女の情報を集めよと
そして、我同胞をミッドラスより無事に逃がせ、さもなくば金どころかその命も失うだろうとな」
そう言うと、話は終わりだと言わんばかりに席を立つと、他のグレーのロブの男達が慌てて立ち上がる。
黒いローブの男は、布ずれの音も足音すら立てずにそっと地下室の扉の中へと去り、バタンと閉められた音が地下室にこだました。
「タキナ様!!まさか、またお会いできるとは!!
本当にあの時はありがとうございました!」
「タキナ様!!魔獣の戦いの話聞かせて!!」
帰宅した瞬間、ホセルとエイルの第一声に面食らいつつ
「いえいえ、ルイの元気な顔も見れて安心しました。
エイル、その話はきっとリリーちゃんが詳しく話してくれますよ」
そう言って笑えば、リリーちゃんが
「タキナ様の勇姿!とくと聞かせて差し上げましょう!!」
そう言って席を立つと部屋の隅に移動して座るリリーちゃん、その跡を追う様にエイルがやったぁー!と、声をあげてついていく。
グレンはどうするのかと思いきや、何か考えるように空を見つめた後、何か思い至ったようで
「おい!クソチビ!絶対お前、ドラゴンは役立たずって言うつもりだろ!!」
と、言いながら同じく隅に向かうグレン
何やら言い争ってる様だが、流石にエイルの前では大人ぶりたいのか掴み合いはしないようだ。
その3人の姿に大人達が笑っていると、ルイが本当にありがたい事です。とポツリと口を開く
「私がこうして生きていられるのもタキナ様とアレイナさんのおかげです。
本当に、本当にありがとうございました。」
深々と頭を下げるルイとホセルに、慌てて頭を上げてくださいと伝える。
何せ、今日は少しばかり面倒な話を持って来てしまったのだ。
借りのある者からすれば、嫌とは言いずらいだろうし…神としてフェアーではない事に良心が痛みつつも
「今日はホセルにお願いがあって来たんです。
仕事の依頼、に近いでしょうか?」
そう話せば、はて?何でしょうか?と言う顔をする2人
「まずは、ミッドラスを襲った魔獣達について、どこまで噂は広まっているんでしょうか?」
そう問えば、ホセルがすぐに口を開く
「そうですね…俺がさっき広場で聞いた話では、ミッドラスを潰そうとした連中がいて、そいつらがミッドラスに魔獣を呼び込んでたって話を聞きましたよ、まだ捕まってないって事も、だから門が開かないんだと兵士からも聞きました。
商人達や近隣の村の連中が外に出せって門番に詰め寄ってて、ちょっとした暴動みたいなことも起きてましたよ。」
「成程、包み隠さず公表されているんですね」
さすがはシルトフィア代表と言うところか…
「実は頼みたい事というのは、そのミッドラスに魔獣を呼び込んだ者達が捕まった際に、どういう者達だったか詳細を教えて欲しいのです。
市民の噂レベルで構いませんので、その後のミッドラスの対応など連絡して欲しいのですが、お願いできないでしょうか?」




