37−1.勝どき
猛然と突っ込んでくるドデカサーベルウルフ、その姿は屍であるはずなのに何処か殺気を帯びている。
死して尚、強敵を求めるのか、はたまた己の屍を弄ばれている事に怒り狂っているのか…どちらにせよ、挑んでくるならば潰すのみだ。
ニヤリといつも通り邪悪な笑みを浮かべて、サーベルウルフへ向かって走り出す。
狼のような唸り声を上げたサーベルウルフの角が白く光る。
他の屍魔獣は魔力を行使する様子が全く見られなかったが、どうやらこの個体は特別個体のようだ。
なおの事お面白いと、さらに口角が上がる。
サーベルウルフが首を上から斜め下へ動かす動作をしたと思った瞬間、透明な、陽炎のような揺らぎの斬撃が瞬きの間に自分の目の前に迫るのを、黒刀でいなそうとするが、なかなかの重みに一瞬足が止まる。
飛び道具的な攻撃でこの重さか…
ダンの攻撃はずいぶん軽いと思ったが、この魔獣の力なのか?
それとも、魔石に込められた力が強いのか?
「クッ!!」
腕に力を込めて上へ向かって弾き飛ばす。
避ければ、後ろのミッドラス兵士達のところまで届きかねない。
そして予想通り、カウンター攻撃の後に本命のサーベルウルフ自らの攻撃だ。
そこは魔獣というべきか、私の身体など一飲みにしてしまいそうな大きな牙と口が頭上から迫るのを、ヒラリと交わして避けると同時に、その魔石を黒刀で一刀にしてやろうとするが、なんと器用なことか一瞬で察知したサーベルウフルが体を捻りかわしたのだ。
「アハハハッ!やるじゃないか!楽しい!!
もっと!もっとだ!
魔獣よ!存分に殺し合おうじゃないか!!」
思わず魔獣を褒めてしまう程には驚いた。
これで屍とは恐れ入る。
だがあまり時間はかけていられない、視界の端でゴーレム達の手から逃れた魔獣がミッドラスへ向かって数頭走り出す。
まぁ、リリーちゃん達がなんとかするだろうがっ!?よそ見すんなと言わんばかりの、サーベルウルフの見えない斬撃が連続で襲ってくる。
高さがあるところから来た攻撃を避ければ、斬撃が地面に落ちて地面が綺麗にカットされる。
コレはなかなかの切れ味、ニヤリと笑って次の攻撃も避けた瞬間にサーベルウフルの足元へ意識を集中させれば、その地面が赤く光り始める。
メタルベアーも吹っ飛んだ信頼と実績の爆破の陣!
さてどうだ?
と思うが、一瞬で飛び退くサーベルウルフ、狼は頭が良いと聞くがここまでとは…
「フフッ、アハハハハ!!!
最高っ!一方的な蹂躙などつまらない!!」
エンテイの時以来、いやそれ以上の高揚感が全身を駆け巡る。
あぁ…楽しい…最高の気分!
命の奪い合いこそ最高の瞬間!
黒い高揚感とも言うべき感情が湧き上がる。
邪悪な笑みをサーベルウルフに向ければ、ジリッと前脚がわずかに後へ下がる。
だが、戦意を失わないサーベルウルフが己を奮い立たせるように遠吠えをすれば、足の付け根の濁った魔石が赤く光だす。
どうやら向こうも本気を出してくれるらしい。
何事か?と言うよりも、まだまだ私を楽しませてくれるのか!と言う喜びが腹の底から湧き上がる。
「まだまだ楽しみたいところだが、決着をつけたいなら仕方ない」
そう呟けば、サーベルウルフを中心に平原の草が強風に煽られるように真横に倒れる。
風がサーベルウルフを覆っているのか、吹きだしているのか…
試しに氷の槍を一本自分の横から飛ばせば、その風の防壁に最も簡単に細切れにされる。
槍に力を込めれば、耐えれそうな気もするが…槍で一突きハイ終わり!なんて、そんなの面白くない。
そんな簡単な幕引きはつまらない。
こちらを見据えるサーベルウルフの姿は、中々どうして堂々としている。
ハハッ!と、声を出して走り出すも微動だにしないサーベルウルフ、やれるもんならやって見ろと言わんばかりだ。
サーベルウルフの足元、そして前後左右を囲うように爆破の赤い陣を幾つも灯らせれば、流石のサーベルウルフも上へと逃れる様に飛び退くと同時に陣が爆破する。
その爆煙に紛れるように、空中のサーベルウルフの頭上へと瞬間移動する。
「アハハッ!いらっしゃーい!
そしてさようなら」
不意を突かれたサーベルウルフも空中では飛び退くこともできないが、悪あがきと言わんばかりに角が再び白く光る。
この不意打ちすらも対応するとは、何処までも楽しませてくれる!
首を振る直前でサーベルウルフの角をガシリと素手で掴み、その首を刀で斬り捨てる。
スローモーションのように胴体が地面へと落ちると、サーベルウルフの首を持ったまま自分も地面へと降り立った。
はぁ〜楽しかったなーと満足気に笑い持っていたサーベルウルフの頭部を投げ捨てると、黒刀についた魔獣の血を振り捨てるように刀を払う。
次はどいつだ?と、魔獣達を見渡すが大方の魔獣がゴーレムにその魔石を噛み砕かれて地面に倒れている。
ゴーレムに任せとけば直ぐに方がつきそうだ。
なんだもう終わりか…つまんない…
そう思っていると、魔獣の後方から唸り声が聞こえてくる。
その唸り声を聞いて心が弾み、沈んだテンションが一気に上がる
「アハハ!!第二陣!!」
歩みの遅かった魔獣と言っていたが、この戦場を見て走り出したようだ。
見れば、100体ほどの魔獣がこちらに向かってきている。
第一陣に比べれば数は少ないが、ここにいる魔獣と合わせればゴーレムより数が勝るか?
一瞬で消し飛ばしてやろうか?それとも串刺しか?
クツクツと笑いながらそんな事を考えていると、城壁の方から何者かが叫んでいる
「あ〃ぁ?」
振邪魔すんな!と思いながら返れば、叫んでるのはダンのようだ。
「タキナさまぁー!!!
俺らにもちったぁー戦わせてくれませんかぁーーーー!!
タキナ様におんぶに抱っこじゃー国民に顔向けできねぇーーーー!!
っていうのは建前でぇーーーー
俺が戦いてぇーんだぁぁーーー!!!」
その言葉に一瞬呆気に取られるが、直ぐに吹きだす。
「プッ…アハハハハ!!」
魔獣を狩り、その素材で国を繁栄させている獣人達だけあって、簡単には怯まないようだ。
1人も死人を出さないように魔獣狩りを勝手出たと言うのに、言うじゃないか…
見えるかどうかは分からないが、ダンの言葉に答えるようにニヤリと笑い首で来いと合図すれば
「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
と、叫びながらダンが飛び出してくる。
それを見た兵士達が、え?行くの!?と言わんばかりにワンテンポ遅れ、慌てて馬を走らせる。
城壁の上の兵士達も半ば慌てた様子で弓や魔導士が構えているのが見てとれた。
最小限の兵士に抑えたとは言え、馬の蹴り上げる土煙と地響きと共にミッドラス軍1000人の一斉進軍は中々の迫力だ。
「クククッ…アハハハハ!!
大混戦になりそうだが、それはそれで楽しそうじゃないか!!!」
笑いながら、目の前に迫っていたサーベルウルフの首を黒刀で跳ね飛ばした。




