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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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35−2.手合わせ



 やってしまった………結局やってしまったぁぁぁぁぁぁ!!!

脳内で頭を抱えて広場を転げ回る。


 怖がられる!!絶対に怖がられる!!

恐怖増やしてどうすんだ私!!!

しかも、建物も壊しちゃったし、これ…弁償コース?


 見回さずともわかる。

周りの静まり返ったこの空気…ウグッ…どどどどどどどうしましょうか????

平常心!平常心だぁー!と、被った砂を払いながら自分に言い聞かせてドートルの方を振り返る。

案の定と言うべきが、ダンの突き破った3階を見上げたままルークスと共に固まっている。

すっ、すみません…と思いつつドートルに声をかける。


「ドートル軍団長、他にも手合わせを希望する方がいらっしゃれば納得いくまでお相手しますよ?」


平常心を装い笑顔で問い掛ければ、ギギギっと油切れの機械の如くゆっくりコチラに首を向けるドートル


「いえ、おりません…

ダンはミッドラスで右に出る者がいない程の強戦士ですので、アレが敵わないのであれば貴方に勝てるものはこの国にいないのも同義…ダンに代わり奴の非礼と部下を止められなかった己の失態をお詫びいたします。」


そう言うと、腰を折り頭を下げるドートル

完全に、ドラゴンの里と同じ流れ…この世界では強者と聞いたら挑みたくなる性なんですかね!?

手っ取り早く掌握できて楽ではあるんですけど…なんと言うか神としては複雑なキモチ…


「ドラゴン落としたって話し本当だったのか…」

「間違いない!黒の化身だ」

「巨体の副団長を片手で…」


時が動き出したかのように、ザワザワとし始める兵士達

3階からは副団長!!!と、悲鳴のような兵士の声が響いている

死んで…ないですよね…後で治療しますから許して!!

そんな事を思っているとクロイが駆け寄ってくる

クロイに怖がられていないか不安が過るが、直ぐに払拭される


「お見事です!!流石はタキナ様!!

魔力を使わずしてここまでのお力とは!ドラゴンも容易く落とされるはずだ!

目の前でお力を拝見して、私は感動しております!

これが神の力!」


目を輝かせて興奮した様子のクロイに、落ち着いてくださいクロイと声をかけるが耳に入っていない

あれっ…クロイってもっとクールなイメージがあったんですが…リリーちゃん化して行ってない?


「強いのは分かってたつもりだったけど、目の前で見せられるとやっぱりとんでも無いわねー

タキナ様に逆らうなんてバカのする事だわ、帝国が引き込もうとする理由も納得よ」


シルトフィアが3階を見上げながらコチラに歩み寄ってくる


「さっ、ドートル!

さっさとタキナ様を応接室に案内してちょうだい!

もう、日付はとっくに超えてるわ

夜明けには行動開始したいの、私は議会堂に行って老人共を叩き起こしてくるわ

面倒だけど、軍が動くなら元老院に話を通さないと」


そう言うと盛大なため息をついて、鬱陶しそうに綺麗な金髪をかきあげるシルトフィア


「本当に魔獣が来るか確証がないのに、元老院がすんなり話しを聞くとは思えないが…」


ドートルが渋い顔をして、シルトフィアを見る

何処の世界も、政治に携わる老人は面倒な人間が多いようだ…


「いざとなったらタキナ様にお越しいただいて、元老院のジジィの1人をさっきのダンみたいにぶん投げてもらって、議会堂のオブジェにして貰えばすんなり話も聞くわよ」


そう言って、可愛らしくウィンクするシルトフィア

その言葉に、えぇ…という顔をする私とルークスとドートル

そんな武力的反政府勢力の片棒を担ぎたくはございませんが…

そんな私の気持ちなぞ露知らず

あとは頼んだわよ!と元来た通路を戻っていく


「さっ!お開きお開き!!

さっさと持ち場にもどんなさい!」


シルトフィアがシッシと手を振って、見物客の兵士達を散らしながら去っていった。


「嵐のようなお方ですね…」


私が思わずポツリと漏らせば、ドートルが深いため息をつく


「昔からアレはあんな感じで…ただ仕事はできますし、何よりもやると言った事は必ず成し遂げる女ですよ」


そう話すドートルの眼差しは憧れの存在を見る様な、そんな目をしていた

あぁ…もしかして、ドートルさん!

もしかします!?

勝手に人の気持ちを深読みしてしまうが、今はそんな場合ではない。

シルトフィアがお膳立てしてくれたのだから無駄にはできない


「では、ドートルさんお話し合いをたしましょう」


そう言って見上げれば、表情を引き締めたドートルが承知いたしました!

こちらへと、建物の中へと歩みを進めるドートルの後に続いた

他の皆んなは大丈夫だろうか?

特にリリーちゃんとグレン、2人を組ませちゃったけど…殴り合いの喧嘩をしていないか心配だ。

そんな事を思いながら中庭の吹き抜けの夜空を見上げた。






ここは、ミッドラスの城壁の外

ミッドラスから5キロほど離れた場所、月明かりが照らす暗い平原の岩陰に2人の小さな影がヒソヒソと何事か話しながらうずくまっている


「本当にそんなヘナチョコがドラゴンの里まで届くんですか?

しくじったら、お前をバラしてサンタナムに売りますよ」


「うるさいぞクソチビ!!!父上からもらった道具にケチつけるな!!

あと、お前なんかにやられない!!」


声を押し殺しながらキレるグレンの掌に載っているのは、小さな魔法陣の描かれた羊皮紙、それに魔力を込めれば細い糸が複数出てきたと思うと、編み込まれるように小さな赤い鳥が出来上がっていく

ピョコピョコと羊皮紙の上で跳ねる赤い鳥に、タキナからの伝言を吹き込み空へと離せば、鳥でありながら夜空に翼を広げ小鳥とは思えぬスピードで、一直線にドラゴンの里の方へと飛んでいくのを見送り立ち上がる


「これで、父上への連絡は完了だ」


「では、次の仕事です」


 そんな事を話していると、ミッドラスの城門の開く音が響き渡る

夜の平原はよく音が通るようだ。

その方向に目を向ければ、3頭の馬に乗った獣人の兵士が街道沿いを走っていく


「流石はタキナ様、さっそく獣人を説き伏せたようですね」


「僕らなんて相手にもされなかったのに、タキナ様はやっぱり凄「クソトカゲと痴女エルフをタキナ様と同列にするな」」


「「…………」」


数秒の無言の後、同時に互いの右ストレートが繰り出され拳同士がぶつかり合うが、拳のままギリギリと力を込めて押し合う。


「クソチビが!いちいち突っかかってきやがって!!

タキナ様が居ないから、じょうちょふあんてい?とか言うやつか?」


「誰が情緒不安定だ!!クソトカゲ!!

タキナ様のペアがドラゴノイドのクソ野郎なのが悔しいなんて思ってませんよ!!」


「思ってんじゃん!!」

「うるさぁーーい!!」


拳が離れた瞬間、殴り合いの応酬が始まり夜の平原に響き渡る殴り合いの音が城壁の上に居た獣人兵士の耳にも届く


「おい、なんか変な音聞こえないか?」


「あぁ?あー?時間内に場内に入れなかった商人だか冒険者が揉めてんじゃねーのか?」


「確かに…そうかもな」


その呟きが夜のしじまに消えて行った。



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