35−1.手合わせ
広場の中心で不適な笑みを湛えた2人が佇む、ダンを見据えて余裕ぶってはいるが内心は…
オウチ カエリタイ…と、涙を流す。
ダンがジャリっと音を立てながら足幅を広げる。
「一つ聞きたいんだがよ嬢ちゃん、嬢ちゃんは何のためにミッドラスを救う?
金と地位のためか?」
その言葉に、ハイキタいつものヤツ!と、内心でツッコミを入れる。
これからも永遠に問われ続けるんだろうなと思う。
「この世界に来てから、何度も聞かれた質問ですが私の答えは変わらない。
人を助けるのに理由など必要がない。
私の世界では困っている人に手を差し伸べる
命に関わるのならなおの事、己の命の危機など問いはしない。
何よりも救うのが神の役目ですから」
その言葉に、ダンが鼻で笑う
「ハッ!身内でもねーのに助けるとは、頭お花畑の綺麗事にしか聞こえねーな」
「そうですねー、私もそう思いますよ」
聞いた俺がバカだった。と言わんばかりに再度鼻で笑うとハンマーを構えたダン
それを見て、こちらも身体強化をすると金色の紋様が皮膚に浮かび上がる。
一瞬で笑みが消え目を見開き驚いたダンだったが、次の瞬間獲物を狩るように瞳孔が細くなったかと思うと、ドンッと言う音と土煙と共に姿が見えなくなった。
飛び上がったか…巨体に見合わず素早く身軽とは…面白じゃないか、正面を見つめていると視界に影がかかる。
わかりやすい攻撃だと思いながら上を見上げれば、上空から落下しつつハンマーを振り下ろしてくるダンの姿が目に映る。
その姿を見てニヤリと笑い左手を頭上に伸ばし、振り下ろされたハンマーを片手で止めれば強い衝撃が手のひらに加わり、クレーターのように地面が窪む
ダンの重量級攻撃、そのあまりの威力に爆風のような風が辺りを襲い獣人達が「うわぁ!!」と、叫んでいる声が四方八方から聞こえる。
「おいおい、マジかよ
今のを片手で止められちまうってのは、流石に想定外だぜ嬢ちゃんよ」
ハンマーを振り下ろしたままの状態で話すダンだが、そう言う割には動揺してる様には見えない。
「それは失礼を、ですがドラゴンの一撃に比べればこれくらい軽いものですので」
そう言って振り向き、微笑みかければ引き攣るダンの顔
さて、ここで1発ぶん殴って終わりにしてしまおうか?
と、考えている間に手のひらから重みが消えた瞬間、真横からハンマが襲ってくる
いやはや、獣人の瞬発力は恐るべし!
それを仰反るように避ければ、胸の上スレスレをハンマーが通り過ぎるのを見送り、そのままバク転をして後ろへと下がる。
すると、背後に何者かの気配を感じそれを横跳びで避ければ振り下ろされたのはハンマー、しかしそこに居たのはダンではなく、姿形ちどころか武器まで同じダンの土人形、いや、ゴーレムだろうか?
「フッ、アハハハ!!」
それを見て思わず吹き出してしまう。
避けるのを狙っていたのか、そこに振り下ろされてくる本物のダンのハンマー攻撃を片手でいなして、前のめりになったダンの腹に軽い蹴りを入れれば簡単に吹っ飛ぶダンが、土煙をあげて広場に転がりゴーレムがそれを止めて助け起こす。
「プッ、アハハハハハハ!!!
やるじゃないか!まさか、ゴーレムが出てくるとは!」
口の端から血を流し、こちらを睨みつけながらハンマーを杖代わりに立ち上がるダン
あの軽い蹴りで結構なダメージ入っちゃうんだなー、相当力加減しないと殺しちゃいそう。
けど…クククッ…楽しいな〜
いつもの様に湧き上がる黒い感情と高揚感に、今日は抑えなければと蓋をしようとするが、隙間からこぼれ落ちる様に侵食してくる
「さっさとかかって来い。
貴様が言い出したんだ。
私の力を見たいとな、準備運動にもならんぞ」
ほらどうした?そう言ってニヤリと笑えば、獣人らしく牙を剥き出し唸り声を上げたダンがこちらに向かって走り出す。
それを飛び越えるように、ゴーレムが先に飛びかかってくる。
時間差か、面白い!!とゴーレムのハンマーを手で受けようとした瞬間、砂に戻り一瞬で視界が砂に奪われる。
アハハハハ!!なるほど!!
ドラゴンよりも弱くとも、楽しめるじゃないか!!
下から振り上げてくるハンマーが見えずとも気配でわかる
ハンマーが振り上げられる前に、ハンマーの頭部分を片足で止めて踏みつけるように地面に落せば、ハンマーが地面にめり込む
砂が全て落ちて開けた視界には、ハンマーが片足で抑えられてしまい信じられない…。と、言わんばかりの驚愕したダンの顔が目の前にあった。
それを、邪悪な笑みで
「残念♡」
と、可愛らしく告げるとダンの胸ぐらを片手で掴み、振り回すように一回転して勢いを付けて3階の外廊下に向かってぶん投げた。
流石は動体視力の良い獣人達、3階の外廊に居た兵士達が悲鳴を上げながらそれを避ける。
3階の外廊下の柱に激突したダンは、ドォン!!ガァン!!ガラガラ!!と、ものすごい音と粉煙を上げて柱を壊し、そのまま壁を突き破って室内まで行ってしまったようだ。
ガラガラと石壁の残骸が下に落ちてくる。
「アハハハハハハ!!ハハッ……ハッ!?」




