34−2.代表
ルークスを見送ると「さて、私たちも行きましょう」と、さっさと外に出て行くシルトフィア
ギリアムに礼を述べた後、シルトフィアの後を追う様に自分達も外に出る。
冷え切った外の空気が心地よい
これから会うのは一国の軍の責任者だ。
まぁ、目の前には首相がいらっしゃいますけども…軍の施設に向かう道すがら、私がこの世界に来た理由やミッドラスに来た目的をシルトフィアに伝えた。
「突拍子もない話しね
この事態の収集がついたら改めて考えることにするわ」
と、割と前向きなお言葉をいただいた。
社交辞令かもしれないけど…。
そんな事を話している間に、先ほどの場所とは比べ物にならいほどの立派な煉瓦作りの建物の前で立ち止まる。
軍の施設というだけあって、見上げるほど大きい。
呆気に取られていると、入り口の警備兵2人がシルトフィアを見るなり駆けて来て、すんなりと施設内に案内される。
廊下を歩く兵士達が、シルトフィアを見て慌てて廊下の端へと避けるも、その隣を歩く黒髪を晒したままの私を見て驚きで固まり、更にその後ろをついて歩くクロイを見て驚愕する。
とんでもない御一行様が来たとでも思っているんだろうな…
あっという間に軍の奥にある応接室に通される…と思っていたのだが、案内された場所は中庭のような開けた場所、地面が剥き出しで広場になっている。
私のアニメ知識で思うに、兵士の訓練場と行ったところだろうか…四方を見渡せば建物の外廊下や2階、3階の廊下からも、多くの兵士達が身を乗り出して私達を見下ろしている。
あぁ…これはもしや試される系ですかね…
目を瞑り、タタカイタクナイ…と心の中で涙を流す。
こんなところで戦闘狂になってしまったらと、想像しただけで逃げ出したくなる。
皆なの前では良い神様で有りたいと言うのに…
いや、まだ戦闘すると決まったわけじゃない!!
そう思っていたが、奥から現れた獣人型ゴーレムですか?
と言いたくなるような筋肉鎧な獣人兵士がその巨体と同じ大きさのハンマーを持って現れた時点で
あっ…お察し…
と、心の中で泣きながら呟く
「どういうつもりかしら、ダン?」
シルトフィアが苛立ったような声をあげる。
「シルトフィア代表、久しいな!
だが用があるのはアンアタじゃねーんだ
その横にいるちっこい黒髪の女だ」
そう言うと、ギロリと私を見るダン
その手がハンマーを強く握り締め直したのが見て取れた。
この目の前の大男は団長のドートルではない!?
ダンって誰!?
その疑問に答えるかのように、その大男の後ろから遅れてルークスと灰色の軍服の様な服を着た茶髪の男が出てくる。
その男もなかなかに屈強そうなガタイの持ち主だ。
「悪いな…シルトフィア代表、黒髪の女が来ると聞いたらダンが戦わせろと聞かなくてな…これでも必死に止めたんだ…だからあの話はバラさないでくれよ…」
しかし中身は屈強とは程遠い…のかもしれない。
シルトフィア代表を若干怯え混じりの目で見ている。
どんなヤバい恋愛遍歴の持ち主なんですかドートル!!気になる!!
「心配するところはそこなのね
まったく…部下も制御できないなんてみっともない真似を賓客の前で晒さないでくれるかしら」
苛立つシルトフィアの眉間に皺がよる。
美人が怒ると怖いと言うが、正に…キレたシルトフィアの顔は絶対零度、その顔にルークスとドートルの耳が叱られた犬のように倒れ、諦めたかの様に静かに目を瞑り一歩下がる。
もう、どうにでもなれと言うように見えなくもない。
「まぁまぁ…落ち着いてくださいシルトフィア代表
突然やって来た黒髪の女の言うことを聞けなど、すんなり受け入れて貰えないと私も思っておりましたし、手合わせをして納得いただけるなら喜んでお相手いたします」
いや、本当は全然嬉しくないですけどね!!!
戦闘狂化しちゃうんじゃないかってドキドキですけどね!!
何でこうなっちゃうんですかね!?
路地裏の時みたいに、サクッとかたをつけるしかない!!
「統率が取れない軍を晒してお恥ずかしい限りだわ…でも、タキナ様がそう仰るなら…
手っ取り早く話を進めるにはこれが1番早そうだし、お言葉に甘えさせていただくわ」
ドートルを睨みつけながら後ろへと下がっていくシルトフィア
それとは逆にクロイがこちらに歩み寄る
「タキナ様、私が奴の相手を致しますが…」
クロイの言葉に静かに首を振る
「いいえ、私が戦わねば彼らは納得しないでしょう
不本意ですが、強者に従うのがこの世界のルールであるなら利用させてもらいましょう」
そう言ってクロイに笑えば、諦めたように眉を下げるクロイ
「承知いたしました。
不要な気遣いとは思いますが、お気をつけください
動体視力だけならば獣人はドラゴノイドにも勝る者もおりますので…」
その言葉に、ありがとう。
と頷くと、クロイもシルトフィアの居る外廊下の方まで下がっていった。
「さて、時間も惜しいことですし早速始めましょうか?」
そう言って、夜風が吹き抜ける広場の中心に向かって歩みを進めると、ダンもニヤリと笑って中心へとやってくる
「ドラゴンを落としたって言う話が嘘じゃねーか、確かめさせてもらうぜ嬢ちゃん!」
「お好きにどうぞ、ハンデとして私は身体強化だけで魔法は使いません」
神の力でサクッと決着をつけたいが、強者を求める戦士を黙らせるにはやっぱり拳じゃないかと思う。
私の勝手な見解ですけど…
挑むようにダンを見上げれば
「ダハハハハハ!!!言うじゃねーか!!
ハンマー1発でミンチになっても文句言うんじゃねーぞ!嬢ちゃん!!」
一方その頃
ミッドラスの宿屋の屋上から辺りを見渡す者が2人
「ロメーヌさん、そちら側はどうですか何か気になる物は有りましたか?」
「うーん、あっ!!!!アレイナちゃん大変!!!」
「えっ!?何を見つけたんですか!?」
ロメーヌの言葉に直ぐ様、横に並んでロメーヌの視線の先を追うとそこに居たのは通りを歩く普通の獣人、人気のない通りをカゴいっぱいの魔石を持って1人で歩いている。
魔石を使った魔法具の職人か何かだろうか?別段珍しくもない光景だ。
怪しそうなところはどこにもないが?
「あの獣人!!すんごい2枚目!しかも首が太い!!
絶対絶倫よぉー!!」
「真面目にやってください
リリーさんを呼びますよ」
「怒っちゃいやーん、アレイナちゃん」
ふざけているとしか思えないロメーヌの態度に、ため息をついて再度辺りを見回す。
ミッドラスを目指す魔獣達、魔獣達の周りに先導しているような者の姿はなかった。
ならば、ミッドラス内にその元凶があるのでは?
と言うリリーさんの言葉を受けて、捜索部隊として辺りを見渡しているが…
元凶が物なのか人なのか何なのかわからない上、本当にその元凶か有るのかもわからない漠然とした中での当てのない捜索、本当にそんな物が見つかるのか…
「ねぇ、アレイナちゃん!!」
声を掛けてくるロメーヌに、また男かと思いつつも
何ですか?と振り返れば
「なっ…なんですか…」
爪を噛み、苦虫を噛み潰したようなロメーヌ顔に思わずたじろいでしまう。
「今ふと思い出したのぉ…
魔獣には変な魔石が付いてたって言ってたっわよねぇー
サンタナムには数えるほどしか行った事がないんだけどぉー、そう言えばその時に売ってたのよぉ…
子供向けの玩具の荷馬車に小さな魔石が入っててぇー、それと対になっている魔石に力を込めると玩具の荷馬車がその魔石に向かって進み始めるのぉ…」
「えっ…」
魔獣は死体だと言う話だ。
2人で顔を見合わせる
「「魔石を探さないと!」きゃ」




