34−1.代表
バンッ!!!と、扉が砕けるんじゃないか!?と思うほどの勢いで扉が開くと、そこに立っていたのはアイボリーのフォーマルスーツのようなタイトスカート姿の女性、この世界にもスーツみたいな服装があった事にも驚きつつ、そのスーツ姿で骨付きチキンを豪快に食いちぎっている金髪美人の獣人のお姉さん
えっ!?
何その登場の仕方!?
姐さんと呼びたくなるカッコ良さ!!
姐さん!!!
しかし、どなた!?
「話は聞かせてもらったわ、まさか国内に黒髪の女…黒の化身がいたとはね。
まぁ、そんな事は後ででいいわ!
そこの吊るされてる3人!ちょっと平原に偵察行ってきて」
食べ終わった骨で若い兵士3人組を指すと、あからさまにえぇ…と嫌そうな顔をする兵士達
「ナニカ…モンクアル?」
血走った目を見開いて地を這うような声を出す姐さんの言葉に、兵士3人が縮み上がる
「ヒィィィィィ!!!!!」
「スミマセンスミマセン!!」
「行きますから!!地の果てでも何処でも行きますからぁぁぁぁぁ!!」
慌てふためく3人を憐みの目で見つめた後に、ルークスが姐さんを見る。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいシルトフィア代表…」
ルークスがアワアワしながら、シルトフィアと呼ばれた姐さんの方を向いて宥める。
代表とは?
何者なのかと、シルトフィアを見ると視線に気づいたのかコチラを見ると手に持っていた骨を後ろに放り投げると
「これはお恥ずかしいところを、コホン
申し遅れました。
私はこの国の国民代表をしているシルトフィア、まぁハイランジアで言うところの首相よ
あそこの首相はお飾りだけど、黒の化身とは是非ともお近づきになりたいと思っていたのよー!個人的にも!」
そう言うと可愛らしいウィンクを飛ばしてくるが、何やら個人的にと言う言葉が引っかかる…ろくな理由じゃない気がする…
しかし、いきなりとんでもない大物が何故こんな所で骨付き肉を頬張っているのか!?
護衛とかそう言うのは!?
って、見るからに強そうだけど…
「こちらこそ、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんシルトフィア代表
私の名はタキナ、この世界唯一の神という種族、そしてコチラはドラゴノイドのクロイです」
クロイが軽く会釈する
「あら、良い男」
獲物を見つけたかのようなシルトフィアの視線を向けられクロイが身震いする。
私も一瞬でロメーヌと同じ気配を察知してしまった…気が合いそうだなロメーヌと…
「シルトフィア代表…会食はどうなさったんですか?
と言うか、いつからそこに…」
「あら、兵士が血相抱えて走ってきてドラゴノイドの女が会いに来てるなんて言うんだもの、可愛い甥っ子にドラゴノイドの彼女でもできたのかと思って付いてきたのよ
どこから居たのかと言われると、俺達は席を外したほうがよさそうか?って所だったかしら?」
「最初からじゃないですか…なんで助けてくれなかったんですか…」
「ドラゴン落とすような相手に挑むほど愚かじゃないわよ、それに殺さないって最初にタキナさん言ってたじゃない。
だからですけど?」
なんか文句あんの?的な、言い方のシルトフィアにルークスが口をつぐむ
この国の代表の甥っ子って、ルークスさん貴方!?
これはいかんと、慌てて全員の鎖を一瞬で消すと、うわっと言う声と共に皆が床に着地する。
腕をさすりながら立ち上がったギリアムがルークスを見る
「ルークスお前…代表の甥っ子だったのか初耳だぞ…よく隠し通せてたな」
その言葉に、他の兵士達もウンウン頷いている。
いや、て言うかこの国の首相の会食に割って入るってベリル君それはそれで、大問題では!?
しかし意外とそこは気にされてないんですね皆さん…
「申し訳ありません…自分で甥っ子だなんて言っても皆さん信じないでしょ、それによからぬ政治関係に巻き込まれるのもゴメンで「ハイハイハイ、そんな話はどうでも良いから即行動!今すぐ行動!さっさと行け!そこの3人!!」」
「「「ハイッ!!」」」
シルトフィアが手を叩きながら、ルークスの話を強制終了させ兵士3人組を追い立てると、3人組は脱兎の如く扉から走り出して闇に消えて行った。
「軍団長には私から話をつけるわ、夜明けとともに外の住民達を中へ避難させなさい。
タキナさん、ミッドラスの軍団長のドートルと魔獣の対応は相談してちょうだい。
貴方の話ぶりだと魔獣が一直線に我が国に向かっているようだけど、理由はご存じ?」
その言葉に首を振る。
「偵察に出てた者の話では、ミッドラスに引き寄せる何かがあるか、何者かに操られているか…という曖昧なものでしかありません」
「貴方を狙ってきているという線は?」
「貴様!」
その言葉にクロイが怒りを露わにするのを手で制する。
完全にクロイがリリーちゃんポジション!!?どうしたのクロイさん!?
そんな事を思いつつ、シルトフィアの目を見据える
「私はミッドラスに来るまでの間エルフの森にいました。
私を狙うというなら何故そこで魔獣達は出てこなかったのか?
わざわざ、森を出てから追ってくる理由はなんなんか?という話になります
魔獣が何処から来たのか、その足取りの捜査を強者にお願いしている所ですので、情報が上がってきましたらお伝えいたします。」
私の目を見たまま腕組みをしてニヤリと笑うシルトフィア代表
「いい目だわ、ますます気に入った。
貴方を狙ってるって言う線は薄そうね
それで、貴方ほどの実力者が言う強者っていうのは何者?
興味があるわ、ミッドラスの兵士にスカウトできないかしら?
人手不足なのよ」
「ありがとうございます。
しかし、スカウトは難しいと思いますよプライドが山よりも高い種族の方々ですから」
その言葉に、ルークスが狼狽える
「まっ…まさか、プライドが高い種族って…」
「はい、ドラゴンです」
満面の笑みで答えれば、シルトフィア代表がポカンとした顔になったと思ったら
「アハハハハハ!!
あのドラゴンを猟犬に使うなんて!
アハハハハハ!!流石はドラゴンを落とした黒の化身!
ドラゴンをアゴで使うとはとんでもないわねアハハハ!!」
大爆笑するシルトフィア代表を、ルークスとギリアムが、いや、笑えないだろと言わんばかりの顔で見ている
「随分あっさり信じてくださるんですね?」
クロイと似たような質問をシルトフィアにもする
魔獣の話もそうだが、ドラゴンをアゴで使ってますなんて普通はホラ話に思うのでは?
「はぁー、久しぶりにこんなに笑ったわー
タキナさん、いや…タキナ様
まぁ、半信半疑ではあったけど後ろのドラゴノイドの忠犬ぶりを見てたらね
ドラゴンには及ばなくとも、人種では最強のドラゴノイドが付き従ってるんだもの、それに…帝国が貴方を探し回ってるって時点でドラゴンを落としたとまでは行かずとも、強い魔導士なんじゃないかとは思っていたし…
何よりも、帝国が引き込もうとしているほどの実力者とお近づきになっておいて損はないじゃない」
なっ…なるほど…やっぱりクロイを連れてきて良かったー!!
帝国も思いもよらず助かったよ噂撒き散らしてくれて今回ばかりはありがとう!
そして、何処までも明け透けですね…シルトフィア代表…
「さて、時間が惜しいわ
ルークス、ドートルのところへ先に行って事情を伝えてちょうだい
そんなバカ話信じるかって口答えしたら、お前の恋愛遍歴全部ぶちまけてやるからな!って、シルトフィアが言ってたって伝えなさい」
「そんな…シルトフィア叔母さ「行け」
…ハイ…」
ルークスの尻尾と耳が萎れた花の如く倒れてトボトボと扉から出て行った。
本当に君は苦労人だね…頑張れルークス…




