33−2.即再会
人々が寝床に着き始める頃、城壁を守る兵士の詰め所にローブを着た2人が木製の古い扉をノックする。
「誰だ?要件ならそこで言え」
扉すら開ける気がないのか、やる気のない声が響いた。
カードででも遊んでいるのか「おい待て!そのカードは卑怯だろ!!」と、笑い声に混じり複数の声が部屋の中で響く
「夜分遅くにすみません。
私、タキナと申します。
こちらに、ルークスさんはいらっしゃいますでしょうか?
火急の要件で参りました。」
こっちは精神荒削りにされる程、この事態に対処しようと奔走していると言うのにコイツらぁ!!!!
と、追い詰められた精神故に扉を蹴破りそうになるが、深呼吸をして何とか耐える。
それにしても…ルークスとガイルに絶対に遭遇したくないなどと思ていたのに、まさかこんな事で早速頼る事になろうとは…
魔獣襲来に備えてミッドアラスの領土で私が力を使うなら、要らぬ不況を買わぬようにする必要があろう。と言う事になったのだが、ロメーヌが話した兵士達では話にならないので、仕方なくツテを頼ったのだが、果たしてこんな話をルークスは信じてくれるのだろうか…。
「あぁ?ルークスさんに用?」
内容が不審だったのか、女の声であることが不審に思ったのか、獣人の兵士が扉を開くと私の背後に立っているクロイを一瞥した後、目線を落として私を見るも、ローブを目深に被っているのが不審だったのか顔を顰める。
カード遊びに興じていた奥の3人も、こちらを見ると警戒するように立ち上がる。
「何者だ、お前ら」
「後ろの奴はドラゴノイドかっ…」
クロイはローブを被っていなかったため、頭の角であっという間に種族がバレる。
まぁ、舐められないためにドラゴノイドの男性を連れて来たんですけどね。
「おい、お前もローブを取って顔を見せろ」
そう言って手を伸ばしてきた獣人兵士の腕をクロイが掴む
「汚い手でこの方に気安く触るな」
「あぁっ?イッ!?イデデデデデ!!離せクソがっ!!!」
クロイが兵士の腕をミシミシという音がするほど、握りしめる。
兵士が必死に振り払おうと踠くがびくともしない。
アレイナであの腕力だもんね…となれば男性のドラゴノイドの腕力ならば腕くらい軽く握りつぶし…ってそんなこと考えている場合じゃない!!
「クロイ!!ストップ!止めてください!!兵士の腕が潰れちゃいますから!!」
慌ててクロイを見上げれば、些か不満そうな顔をしつつも「承知いたしました」と引き下がる
「何なんだよ!!」
「まぁ、落ち着けって」
腕を握り潰されそうになた兵士が涙目で腕を摩り、その兵士を後ろから来た兵士が背中を摩り宥める。
見たとろこ詰め所に居た4人の兵士の中では1番年長者のようだ。
それにしても、詰所という割に4人とは少ないな…。
「まさか、こんなところでドラゴノイドに会うとはな、こっちのお嬢さんもドラゴノイドか?
まさか、ルークスにドラゴノイドの知り合いがいたとは驚きだ。
おい!ベリル!ひとっ走りルークス呼んできてやれ、今日は来客があると言ってたが相当嫌がってたからな、まだ戻ってこねーってことは飲みで捕まってるんだろ、救出して来てやれ」
「隊長いいんですか?コイツらと本当に知り合いかどうかわからないじゃないですか、コッチのチビはフード被ったままで不気味だし…」
ベリルと呼ばれた若い兵士が、疑いの眼差しで私を見てくるが、ベリルの言い分はごもっともだと私も思う。
「いいから行ってこい」
隊長と呼ばれた男が再度そう言うとベリルは渋々と言った顔をすると、私達の横をすり抜けて街の方へと走っていったが、あっという間に見えなくなる。
流石獣人!めちゃ速い!!
「何故こうもすんなり我らの言い分を信用する?」
私が感心している間に、クロイが隊長に低い声で問うと、隊長はフンと鼻で笑うと
「俺は長年門番を任されて来たからな、悪党かどうか分からねーほど目は曇っちゃいないさ、立ち話も何だ中に入んな」
中に入ると酒の匂いが充満していて思わず顔を顰めそうになる。
仕事中に飲酒とは…さぞや美味い酒でしょうね!!
そんな事を思いつつも、部屋を見渡すと窓一つない石造りが剥き出しの壁に、上の階へ続く階段だろうか?
獣人2人が通れそうな階段が上の階へと続いている。
ここはどうやら、詰め所と言うより城壁を守る兵士の休憩室なのかもしれない。
指揮官クラスの兵士はいなさそうだなと、小さくため息を吐く、それにしても気不味い…黙り込んでしまった大人5人の沈黙が部屋に流れる。
時より伺うようにコチラを見てくる獣人の兵士の視線、それを睨みつけるクロイ、ルークスが来る前に彼らに話を伝えるべきか悩んでいると
「戻りました!!」
と、息を切らせて入ってきたベリルと、その背後にはルークス
早っ!!?出ていって10分も経っていませんが!?
「思ったより早かったな、そんなに逃げたかったのかルークス?」
笑いながら問う隊長の言葉に、ルークスが苦笑いする。
「そんな事はありませんよ、ギリアム隊長!
そろそろ帰りたいなとは思ってましたけどね」
はははっと、苦笑いするルークスがコチラを見る
「ドラゴノイドの2人と聞いて、てっきりアレイナさんとグレン君かと思っていたのですが…
もしや、タキナ様ですか?」
その言葉に頷くと
「お忙しいのに申し訳ありませんルークス、早速あなたを頼らせていただきました。」
扉を閉めながら入ってくるルークスが、お世話になったんですから遠慮しないで下さいとと微笑むルークスに、本当に好青年!!!
心の中で、叫んでいると
「俺達は席を外したほうが良さそうかい?」
ギリアムがやれやれと言わんばかりの顔でコチラを見ている。
「いえ、いらっしゃったままで構いません。
これは、ミッドラス全体に関わる話です
聞く者が多いほうが良いでしょう」
その言葉に、兵士達が眉を顰める
「現在、魔獣の群れがミッドラスへ侵攻しています。
偵察に出た者の話では、明日の昼頃に到着するとの事、今すぐに平原に住んでいる農民の避難をさせて下さい」
「プッ!!ダハハハハハ!!何を急にくっくくく…お嬢ちゃんそんな話をダハハハ」
ギリアムが大笑が部屋に響き渡る。
他の兵士達も声を殺して笑っているのが丸わかりである
ルークスだけが困惑してます。と言わんばかりの顔をしている
予想通りというか、何というか…
「タキナ様には御恩がありますが、急にそのような話をされても…流石にそれをハイ分かりました!とは…」
まぁ、こうなるのでは無いかと思っていたけれど…
盛大なため息を吐くと
「ならば仕方ありません、簡単に理解…いえ、無理やり分かって頂くしかありませんね
先に謝っておきますねルークス、少し痛いですけど殺しはしませんので安心してください」
その言葉を聞いた瞬間、兵士達が素早く己の腰の剣に手を掛け、ルークスもまた身構えた。




