31−2.行き先
魔獣から追われるように森から飛び出し、ロイが左右を確認すれば6人全員揃っていることに安堵する。
急がせるまでもなく、馬も危険を察知して全速力で走る。
はるか先の方で土煙が上がっているのは荷馬車の一団、慣らされた道なりに行けばミッドラスだが帝国に戻るのには、道なき道の平原を斜めに進むしかない。
馬では逃げ切れたとしても荷馬車では車輪が土に取られ追い付かれるのが関の山、かと言って魔獣達を足止めする方法もない。
だが、徐々に一団が斜めに向かい始め道から逸れていく
「おいおいおい!!正気か!?」
思わず、ロイが声に出せばアルマが単眼鏡を覗くと
「ヨゼス達が爆薬を並べてるぞ!」
その言葉に、爆破して魔獣共を吹き飛ばすつもりかと納得する。
大抵の魔獣は爆破されると、慌てて引き返して逃げていくものだが…果たしてこの異様な魔獣共にそれが通用するのか疑問が残る。
冒険者の勘だろうか?だが、それ以外に逃げ切る方法などない。
この状態で魔獣を引き連れてミッドラスに行こうものなら諸共攻撃されて終どころか、帝国の差金と思われる。
一か八かに掛けるしかない。
一団が平原に逸れたように、自分達もそれに向かって馬を走らせる。
振り返れば魔獣が追ってくるが、どうにも引っ掛かる。
サーベルウルフもフレイムボアもこんなに足が遅かっただろうか?
本来であれば、とっくに追いついて居そうだが…逃げ切れるのであれば、今は幸いか…馬を走らせ、ヨゼス達が等間隔に置いた樽の間を走り抜ける
振り返れば…やはり、足が遅いどころか失速している魔獣達
なんなんだ、この違和感
「ロイ!スタット!アルマ!無事か!!」
ヨゼス達の馬に追いつき並走する
「あぁ、全員傷ひとつないさ」
爆薬付近に魔獣達が到達すると、火魔法の使える冒険者が爆薬に向かって魔法を放つと、連鎖的に樽が爆破されていく
先頭を走って居た魔獣達の肉片が炎と共に宙に舞い、爆破された一帯が土埃と炎で黒い煙が辺り覆う。
「やったか」
そうは思うが、胸騒ぎが収まらず馬を止める気は起きない。
遠ざかりながらも皆で単眼鏡を覗き確認すると、その煙の中から魔獣達が現れ仲間の屍を踏みつけて突進してくる。
「嘘だろ…引かないだと…」
ヨゼスが驚愕したように発するが、ロイはやはりか…と思わずには居られなかった。
「どうするんだよ!!!アイツら!!!」
「落ち着けルイス」
ルイスが半泣きになりながら叫び散らすのを、イルトが嗜める。
元はと言えば、お前のせいだろと言いたいのは山々だが…
「どうする、ヨゼス…」
ロイがヨゼスを見やれば、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
無理もない。
これ以上手がないのだ。
「おい見ろ!魔獣が諦めたぞ!」
スタットの声に驚いて再度、単眼鏡を覗き込めば魔獣達が失速し歩き始める。
そして、ぞろぞろとコチラではなく街道へと向かう。
急に諦めたのも異様、森に戻るのではなく人のように街道を進むのも異様、何もかもが異様
「何なんだあの魔獣…」
「どこへ向かう気なんだ」
マルフィスとイルトがポツリと漏らす。
それを聞いたヨゼスが答える。
「この街道に沿って進むなら…ミッドラスだ…」
「おいおい…やっぱり黒髪の女が関わってんじゃないのか??」
ヨゼスの答えに、オーストンが嘆くように声を上げる。
黒髪の女…ヨゼス自身もオーストンに短絡的な考えだと言ったはものの、この異常事態に結び付けたくもなる。
コールズ達の身も心配だ。
爆破で削った魔獣の数はおそらく10頭程。
100…もしくはそれ以上の数の魔獣がミッドラスへと向かう。
この群れがミッドラスで追い返され散り散りになった時、帝国領に来ないとも限らない。
それに、この魔獣共の仲間がまだ森にいるかもしれないのだ。
「馬車を急がせろ!!俺達も国に戻るぞ!!」
ヨゼスの叫び声が平原に響きわたった。




