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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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28−1.予想外




 ミッドラスの議会堂、その石造りの廊下にカツカツカツと言う苛立ち混じりのハイヒールの音が響く


「クソッタレのジジイ共がっ!!!!何が小娘の意見だと!!!

私は今年で33のババアだわ!!嫌味か!!どつき回すぞジジイっ!!

だいたい私はミッドラスの国民に選ばれた代表だっての!

金と権力と七光で元老院の椅子に座って、自分の財布と身内を守ることしか頭にない時代遅れのポンコツジジイ共がっ!!

国民の安全そっちのけの意見ばっかり並べ立てやがって!!

黒髪の女、黒の化身だっけ?ドラゴンだけじゃなくて、あの元老院のド腐れジジイ共を葬ってくれないかしら」


「こっ…言葉がすぎます!!シルトフィア様!!

ここは廊下ですよ!!」


「うっさいわね!!聞かれたところで

私の口の悪さは地獄耳のクソジジイ共も

よーーーーく知ってるわよ」


 苛立ち紛れに振り向くと、美しい金色の長い髪と尻尾がバサリと音を立てる。

苛立ちを隠しもせず耳が斜めになり、口元からは犬歯が見え隠れする。


「ヒッ!!ひひひひっ秘書の僕にそのように威嚇されましても…」


 怯えながらズレたメガネを神経質に直し、もやしのようにヒョロヒョロの若い秘書官は、目線を合わせず怯えからかどんどん体を窄めて小さくなっていく


「もっと、シャキッとしなさいよ!!

私の秘書官でしょ!!」


「そっそんな事を言われましても…」


「ちっ」


 そう舌打ちすると、またカツカツカツと苛立ちながらヒールを響かせ、自室へ向かって歩き出すシルトフィア


「開戦までには、まだ時間がある。

向こうもまだ内政が安定してないと言う話だし、その間に何としてもハイランジアと話をつける。

獣人を奴隷にするようなクソ野郎と手を組むのは癪だけど、ミッドラスの兵力ではあまりに足りない…

国が滅びて獣人全員が奴隷になるよりましだわ!

この際仕方ないのよ…だってのに…あのクソジジイ共!!

どいつもこいつも!!!

クソ共がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ヒィィィッ!!」


 議会堂に落雷の如く響くシルトフィアの怒号を聞いて、各部署の秘書や事務員達は「またか」と思いつつ、己の部屋の扉の鍵をそっと閉めたのだった。








「はぁ…」


 数分で一体何回ため息をつかことか…リリーちゃんの何か思い詰めたような雰囲気、気になって仕方がないが何処まで干渉したら良いかもわからない。

 堂々巡りの考え、なんだろう…実は愛想尽かされてましたとか…


イヤイヤ…だがしかし…それとも何か…あぁ…気になることが多すぎる。


 黒の化身の事、その上あの頭痛に誰かの声…一体何が起きていると言うのか?

頭も足りなければ、トラブルに柔軟に対応できるような人間でなかった私に一体どうしたら良いと言うのか…


 自分の不甲斐なさに盛大なため息をつき、酒場を抜けて宿の階段を登り切ったところでルークスが部屋から慌てた様子で出て来るが、顔だけ部屋に戻し何かを話しているようだ。


 朝も早よから君は…今度は何だい?と思いつつ、素通りするのも何だか宜しくないかと思い


「おはようございますルークス、随分と早いですね。」


 そう声をかければ、首がもげるよ!と言わんばかりの勢いでこちらを振り返るルークス


「はっ!?

おはようございます!!

昨夜は本当に部屋をありがとうございました。

後で宿代はお支払いしますので!!」


本当に好青年!!


「いえ、たいした「おうぇぇぇぇぇぇ」……」


 私の声が遮られるほどの音量…なるほど…君が慌てていた理由を全て察した。


「あぁぁぁ!!ガイルがスミマセン!!

二日酔いで嘔吐してまして…今、下に水を取りに行こうかと思っていた所なんです。

ガイル!下で水を貰って来るから、スミマセン、お見苦しいところを…」


 そう言って一礼すると慌てて下に降りていくルークスを見送り、開けっぱなしの扉の中をチラリと見ればベッドに腰掛け、バケツを抱え真っ青な顔をしたガイルの姿が目に入る。


 大男も二日酔いには敵わないらしく、いささか小さく見える。


「大丈夫…ではなさそうですね…」


 そう声をかければ、ルークスの会話を聞いていたのか辛そうな顔しながらも、こちらを見上げるガイル


「あぁ…貴方が昨晩部屋を譲って…うっ…ぷ…」


 おえぇーと瞬時にバケツに顔を入れるガイル、随分と辛そうだな…。

そんなに飲んだのか…まぁ、そんな日もあるよね。

 今の私も正にそんな感じだしと、勝手にそんな事を思いながら部屋に入る。


「他人に背を触られるのは嫌かもしれませんが、背中をさすりますよ…少しは楽になりますから」


そう言いながら背後に回ると


「イヤそこまでぇ…おうぇぇぇぇぇ…」


 もはや兵士として知らぬ者に背後を取られるのが嫌だとか、触られるのが嫌だとか、君はそんな場合ではないと思う。


 

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