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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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27−1.夜明け




「さて、これより簡単な調理を行います」


「調理?」


 エイルが耳をピクピク動かし首を傾げる。

獣人の子供の可愛さよ!!!!

 調理と言っても蜂蜜入り紅茶と、お湯でレトルトを温めるだけなんですけどねー。


 リリーちゃんに出してもらったカセットコンロの火をつけて、ミネラルウォータを入れたヤカンを火にかける。

初めて見る道具にエイルは食い入るように見つめている。

 沸いたお湯を木のマグカップにそれぞれ入れて、ティーバッグを入れて紅茶を作り、そこに蜂蜜を垂らしてよくかき混ぜて完成


「さっ、どうぞ

熱いから気をつけて下さい。」


 そう言ってエイル達に手渡す。

クンクンと犬のように匂いを嗅ぐエイルに笑ってしまいそうになりながら、私も紅茶を一口飲む


 はぁー、やっぱり甘いものは身に染みるわ〜と、しみじみ思っていると、私が口にしたことで3人も恐る恐る紅茶を啜る。


「甘い!!!美味しい!!!」


 そう言って飲みながら、エイルの尻尾が左右にぶんぶんと元気よく振られる。

獣人の子供かっ!!!可愛い!!!


「甘いものなんて久しぶりだ」


 ホセルも口にあったのか熱いと言うのに、お構いなしにグビグビいっている。


「はぁー、こんなに美味しいお茶初めて飲みましたよ

本当にありがとうございます。」


 そう言って頭を下げるルイに、構わないと手で制す。


「気にしないでください、私も久しぶりに甘い紅茶が飲みたかったんです。」


そう言って笑えば


「おかわり!!」


と、エイルの元気の良い声が響く


「こらエイル!!あんたって子は!」


 そう叱るルイに笑いながら「構いませんよ」と言ってエイルのマグカップを受け取り、お湯をそそいで新たにティーバッグを入れる。


「いい飲みっぷりですね、エイル」


 残りのお湯を鍋に入れて新たに水を足して火をかけ、紅茶に蜂蜜を追加してエイルに手渡した。


 正直、ルイの症状が落ち着いてホッとしたのは私の方でもある。

治癒の力は怪我を治し体力が戻る効果があるようだが、私は医者ではないし、まして真に万能な神でもない。

 一時的に体力を回復して、適切な治療と薬を飲み続けられるように薬草をアレイナに見繕ってもらおう。


 エイル達のようなスラムに住む困窮者を何とかしなければならないし、医学の発展も人の繁栄には欠かせないものであろう。

これらも、今後の課題かな…そんな事を思ってるうちに、いつの間にかグツグツと煮たっていた湯にお粥とレトルトカレーを3袋入れて火にかける。


 夕飯の味がアレだったので私もちょっとねー、ついでに頂いちゃおうかななんてー、と心の中で言い訳をする。


 数分後、アチチと言いながら木の皿に、レトルトのたまご粥を入れてルイに渡す。


「少し薄味かもしれませんが、私の世界では弱った体の時はよくこれを食べるんです。」


 夕飯に食べた居酒屋メニューにも米のような物があったので、こちらにもあるかも知れないがどうだろうか?


「何から何まで本当にありがとうございます…いただきます。」


 手渡したスプーンでお粥を一口食べると、ルイが目を見開く


「美味しい!!こんな美味しい病人食なら毎日食べれますよ」


 そう言いながら、先ほどまで死にかけてた人とは思えぬ勢いでお粥をパクパク食べ進めるルイ

その姿に、ホセルが涙ぐんでいる。


「俺も!俺も!アーン」


 母の目の前に駆け寄り雛鳥のように口を開くエイルに、ホセルとルイがまったくと言いながらも微笑んでいる。


 一家団欒の幸せそうな時間、ささやかかも知れないがこれを一つ守れた事は神様として、1ミクロンくらいは成長できたと思いたいな…。

 なんて、内心で自重気味に笑ってしまう。

残りのレトルトカレーも木皿に開けると


「いい匂い!!」


 エイルがすかさずテーブルへと戻ってくる。

行ったり来たり忙しそうだ。

お主は可愛いのぉー


「これは少しスパイシー…辛い成分が入っているので、試しに少し食べて食べれそうか確認してくれますか?」


 食パンの袋を開けて、半分に千切ってホセルとエイルに手渡す。


 本当は白米が最高なんですけどね。

手軽さを選んだが故にパンです。


「パンが柔らかい!こんなに白いパン食った事ない。」


 エイルはカレーよりパンのが気になるらしいが、ホセルがパンの先をカレーに浸して口に運ぶと、こちらも驚いたように目を開く


「美味い!!確かに辛味はあるが、これがまた美味い!

初めて食べる味だ、なんだか複雑な味だが最高にうまい!」


 それを聞いて、エイルも直ぐに真似してカレーをボタボタこぼしながらもパンを口に運ぶと、無言んでそのままカレー皿を自分の手前へと引きづり、そのまま口をつけて食べ始める。


「エイル!!お前、ほんとの犬みたいに食うんじゃねぇ!」


「ふがふがふ」


 口いっぱいに頬張っているので、全く何を言ってるかわからない。


 笑いながら新しい木皿にホセルの分のカレーと、私の分のカレーを入れてパンを浸してカレーを食べる。


くぅーーー!!美味しい!!


 やっぱ日本のカレーは最高だ。

美味しすぎて泣きそうになりながらカレーを頬張っていると、ふいに布が持ち上がり、そこに現れたのは私の白銀の天使リリーちゃん

 リリーちゃんお疲れ様、リリーちゃんも食べる?と声をかけようと手を挙げたところで、目が合った瞬間私の腹にタックルをかますリリーちゃん。

危うくカレーが胃からさよならする所だった。


「うぐっ…リリーちゃんお疲れ様です。

何かあったんですか?」


 お腹に頭を付けたまま微動だにしない。

 何も言わないリリーちゃんを不思議に思い問いかけると、フルフルと被りを振る。


 リリーちゃんには残してきた男どもからの情報収集を頼んだのだが…リリーちゃんに限って何か反撃をされるとも思えないし、不審に思いカレーを一旦テーブルに戻し、リリーちゃんの頭を撫ぜる。


「大丈夫ですかリリーちゃん?

何か辛いことでも、嫌なことでもされたんですか?」


「いえっ…申し訳ありません…

少し…1人は寂しいと思っただけです…」


 思いもよらぬリリーちゃんの言葉に「1人にしてごめんなさい…」そう言って、リリーちゃんを抱きしめると、リリーちゃんもギューっと縋り付いてくる。

 ヨシヨシと宥めていると


「その子は、娘かい?」


 ルイがエイルの頭を撫でながら問うてくる。


 いつの間にかエイルがルイのベッドに移動し、腰掛けてカレーを頬張っている。


「血の繋がりはありませんが、大切な私の相棒で家族で頼れる子です」


 そう言って笑うと、そうかい…と、ルイも微笑む


 しばらくして、やっと落ち着いたリリーちゃんとカレーを半分こしながら食べていると


「アンタ…いや、タキナ様と言ったか、もしかしてなんだが…貴方が冒険者の間で噂になってる黒髪の女なのか…」


 ホセルに唐突に問われて一瞬驚くが、そう言えば家の外で顔を見せたのだと思い出す。


 警戒心を強めるリリーちゃんに「大丈夫ですよ」と言って宥め、自分のフードを外す。


はぁー、スッキリー


「黒い髪だっ…」


 エイルが驚いた顔をして、ポツリと声を漏らす。


「えぇ、そうです。

帝国が探している黒髪とは私の事ですよ、帝国に情報提供をしたら家族を養えるくらいの報奨金をもらえるかも知れませんよ?」


 おどけてそう言えば、ホセルが顔の前で手を振る。


「ははっ、ないない。

ルイの命の恩人を売るなんて、いくら汚れた手をした俺でもできやしないよ

それに、口封じで帝国の人間に殺される可能性だってある」


「そうですよ!

タキナ様を売ろうなんてしたら、私が許しませんよ!!」


 そう言って、売る気がないと言っているにも関わらずルイがホセルを睨みつける。


 どうやら、ホセルは尻に敷かれているらしい。

妻が強い方が家庭が明るくなり安泰だと思う。

 私が短い人生で見てきた限りだけど


「ドラゴン倒したって本当なの?」


 エイルが目を輝かせて前のめりになる。

純粋な少年には申し訳ないが、君が思い描くようなかっこいい戦闘とは程遠いのだよ…


 戦闘狂と哀れな子ドラゴン、とかタイトルがつきそうな感じの戦闘だったのですよ


「えぇーっと、それは本当の話ですが…ドラゴンはドラゴンでも子供のドラゴンで小さかったので…」


 実はドラゴン最強も落としましたけどね。

 

言えない…言いたくないっ…


「タキナ様は謙遜されていますが、この世界で唯一の神であり、強く、そして慈悲深いお方なのです。

タキナ様の武勇伝を聞きたいのならば、タキナ様の僕であるリリーが語って差し上げましょう。」


 いつもの調子を取り戻したリリーちゃんが、エイルにドヤ顔をすると「聞きたい!」と手を挙げるエイル、リリーちゃんとエイルが部屋の隅に移動すると、顔を突き合わせてタキナ様武勇伝を話し始める。


 リリーちゃん…程々にね…


 そう思いながらルイとホセルに向き直ると、ルイが口を開く


「神ってのは何か分からないけど…タキナ様を見ていると、黒の化身の話を思い出しますよ

獣人に伝わる話なんですが、子供の頃よく母に聞かせられました。」


 そういえば、エルフの里で獣人には別の言い伝えがあると話していたような?

思いもよらぬ所で情報収集!


「そのお話ってどんな話なんでしょうか?

よければ聞かせてくれませんか」




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