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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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24−2.不如意



 賑わう酒場の一番端っこに、異様なローブの集団がテーブルを囲う。

もはや、何かのカルト集団に見えなくもないが、その会話は…


「味…殆どしませんね…アレイナ…」


 一口食べて思わず呟く、これでもだいぶオブラートに包んだ言い方だ。


 考えてみればこの世界に来てから初めて店に入って食べた料理、目の前に置かれているのは目玉焼きと、チャーハンのような米に似た穀物を炒めた物、ロメーヌとグレンは骨付き肉をモリモリ食べているが、私とアレイナの手が止まる。

リリーちゃんは飲み物だけだ。


「里の食事が既に恋しいです…」


 アレイナもポツリと呟く、そんなアレイナの言葉に思い浮かべてしまう故郷の食事、肉じゃがに、豚カツ、寿司…私も急に日本食が恋しくなって来る…


「この酒場の食事は美味しい方ですよぉー」


 ロメーヌの言葉にアレイナが、ショック!と言わん顔でロメーヌを見つめる。


「私は食事をしなくても良い体ですが、アレイナ…心中お察しいたします」


「そんなっ…タキナ様…」


 絶望した顔で今度は私の顔を見るアレイナ、食を楽しむと言うよりエネルギー摂取のつもりで食べるしかあるまい。

頑張れアレイナ!!私は食べなくても良い体だが、折角の異世界飯を味わってみたくて注文したのだが…不味い…


 酒の肴に合うのは味付けが濃い料理の筈だが、何とも言えぬ微妙な薄味と口にしたことのないスパイス?の様な風味、お残しは私の主義に反するので、意を決して食べ進める。

 それを見たアレイナも「うぅっ…」と呻きながらも食事を再開した。


「さっき、部屋で聞いた元偉い人の奴隷狩りさんの話ですけどぉー

それは様子見として、今後の方針はどうしましょう?

 私はこの後、夜の酒場を梯子して話をいろいろ聞くつもりですけどぉー

タキナ様はどうされるんですかぁー?」


 肉を綺麗に食べきり、骨をポイっと皿に投げ入れるロメーヌ


「私もこれから出かけたい所ですが、私の身なりでは夜は絡まれそうなので、日中をメインに行動したいと思っています」


 そう言いながら店の真ん中で始まった乱闘を眺める。


「何だとこの野郎!!!」


 と怒鳴りながら獣人の男が、冒険者らしき人間の頭を片手で持ち上げ、持ち上げられた方の人間の足は宙ぶらりん、ワタワタと脚をばたつかせるが、抵抗虚しく店のドアを突き破り外にゴミの様に放り投げられたのを見送る。


 ミッドラスの獣人は皆、屈強な戦士と言わんばかりのゴツい方が多いのだ。

 こんなヒョロヒョロしたローブを被った私など、良いカモと言わんばかりに絡まれるのは目に見えている。

こんな街中で戦闘狂化する自分の姿を想像するだけでも悪寒が走る…本当に邪神で狩られてしまう。

討伐クエストはゴメンである


「確かにぃー、タキナ様にボコボコにされる獣人達の山が目に浮かびますぅー

私は夜でぇータキナ様達は昼担当でぇーアレイナちゃんはどうするのぉ?」


 そんな事ないですよ!!と言いたいが、言い切れない自分が悲しい…

そう思いつつもアレイナに目を向ければ


「私も昼間に行動するつもりです。

 情報収集もお手伝いしますが、この国の薬学についても学びたいので、薬師の元を訪ねようかと思っています」


 アレイナの旅の目的でもあるのだから、当然日中


「昼と夜なら活動する人の種類も違うでしょうから、その方が効率が良いかもしれませんね。

 あっ、忘れる所でした!ロメーヌこれは先ほどの宿の代金です」


そう言ってロメーヌに銅貨10枚を渡す


「自分の分くらい払いますよぉー?」


 流石しっかり者のロメーヌさん、首を傾げて半分しか受け取らない。


「全額受け取ってください。

情報収集は私が頼んだ事でもあるんですから、旅の仲間の路銀くらい出させてください。

足りなくなったら遠慮なくそう言いますから」


 そう言って笑えば、タキナ様って真面目すぎて心配になりますぅー。


 そう言って口を尖らせて銅貨10枚を受け取るロメーヌ、この世界では異質な存在なのは分かってる。

実際、異世界から来たのだから当然と言えば当然だ。



「んふふ、イイ男と久しぶりのお楽しみぃー」


 ロメーヌがウキウキしながら酒を煽る

これからがあらゆる意味でロメーヌの本領発揮なのだろう…


「ロメーヌは大人ですから大丈夫だと思いますが、久しぶりだからと言って羽目を外しすぎないように、気をつけてくださいね」


 君には亡くなった想い人が居たのではないのか…それはそれ、これはコレなのだろうかとジト目で見れば


「大丈夫ですよぉータキナ様!

お土産にイイ男!じゃない、良い情報!

持って帰ってきますねぇー」


 ぶれない女だぜロメーヌしかし、子供の教育に悪い…と思いつつ2人を見れば、リリーちゃんは汚物でも見るような目でロメーヌを見ているし、

グレンは一切話を聞いていないのか無心で肉どころか、骨ごとバリバリ食べている。


顎強っ!!


 ロメーヌは子供の教育に悪い!!と、ドラゴンの里で散々気を揉んでいたが、要らぬ心配だったのか?

むしろアレイナが頬を染めて、ロメーヌさん明け透けすぎますと注意している。

流石、双子のお姉さん!しかし、この位で顔を赤くしているとは初ですな、この中で1番まともなのはアレイナだけかも知れない。


 今後は頼みますよ、唯一の常識人!

そう思いつつ、明日の行動をどうするかと考える。


 正直言って私は具体的な行動計画がないのだ…闇雲に歩いたところで話が聞ける訳でもないが、やっと辿り着いた最初の国なのだから情報収集だけではなく、この世界の人々の生活も見てみたいとも思う。


 駄目だ…やはり明日は半ば観光になってしまいそうな気がする。

ダメじゃん私…もしかして、もしかしなくても、私って…戦闘以外では点で役立たずな人材になりつつあるのではなかろうか…思わず脳内で頭を抱える。


神なのに戦闘以外は無能って、それってどうなの!?


日本にも桃太郎のモデルになった軍神、吉備津彦神は居るけれど…戦闘狂とか戦闘以外サッパリなんて、話聞いた事ないし…

よその世界で神の名を汚すような逸話は残したく無いものである…


 そんな私の心の葛藤はいざ知らず。

賑やかな旅の仲間の面々を見つめていると


「ちょっと!なんか扉壊れてるんですけど!?」


「店に入りやすくていいじゃねーか」


「ミリアもガイルも入り口で止まってたら迷惑ですから」


「ルークス真面目すぎー」


 酒場の入り口の声が気になり、何となく振り返る。


 仕事終わりなのだろうか?獣人の兵士3人組が店に入ってくる。

1人は女性の兵士のようで細身の身体に可愛らしい桜色の髪、その可愛い髪色に見合う可愛らしい顔立ち、それで兵士とはギャップ萌ですなと、心のオタクが頷く


 その隣に立つのは獣人の中でも間違いなくデカい!屈強!もはや壁!と言わんばかりの獣人兵士、ガタイの良い獣人向けの店なのに、入り口の高さがギリギリだった、耳まで入れたら2m超えてるのでは?


 遅れる様にして入って来たルークスと呼ばれたもう1人の灰色の髪、いや銀色か?の兵士は、前の男がデカすぎて華奢に見えてしまうが、それでもその辺の人間よりは体格が良い様に見える。


 しかし、桜色の髪の子よりも幾ばくが身長が高いくらいなので、獣人の中では華奢なのかもしれないと勝手に分析をしていると、私の視線に気づいたのか、ルークスと呼ばれていた男がこちらを振り返り、銀色の瞳と目が合う。


 スミマセン…不躾にマジマジと見すぎてしまったと思い

ススス…と徐々に視線を外して、アレイナに抱きつき、セクハラをし始めたロメーヌに視線を戻す。


 獣人とか第六感的な感は鋭いんだろうか…どうか怪しまれませんように!!と心の中で手を合わせつつ、頬を染めて恥ずかしがるアレイナの背後から手を回し、良いではないかぁ〜と言いながらアレイナの胸を揉み始めたロメーヌ


ロメーヌ貴様ぁ…子供の前で!!イラッとしながら


「ロメーヌ、お触り禁止です」


 と、笑顔で圧を掛ければ素早く手を離し、両手をあげ降参するロメーヌ、しかしその顔は「てへぇー♡」と言わんばかりである。

やはり、歩く18禁は油断も隙もない。


 アレイナが私の隣に椅子を引き摺り移動してくる


「あぁーん、アレイナちゃん行かないでぇーごめんなさぁーい」


「絶対思ってませんよね!!」


 そう言いながら己の胸を両手で隠すように抑え、アレイナがロメーヌを睨む

グレンがロメーヌの残した骨に手を伸ばしながら、何かを思い出したようにふと顔を上げてロメーヌを見る。


「エルフ、お前みたいな奴を痴女って言うのか?」


 小首を傾げて問う様は可愛らしいのだが、純粋な眼差しで聞く内容ではなく、思わぬグレンの発言に飲みかけたワインを吹き出しそうになる。


「痴女っ!?ちょっ!!グレン君酷いですよぉー!!」


「ぶふっ…グレン…何処でそんな言葉を…くっふふ…」


 笑っちゃ悪いと思いつつも、思わず笑いが漏れてしまう。

 隣でアレイナも口を抑えて肩を震わせている

リリーちゃんはその通りだろ、と言わんばかりの顔だ。


「タキナ様もアレイナちゃんもひどぉーい!

もぉー!!!ワインおかわりぃー!!!」


 やけ酒だぁー!!と、自分自身も可笑しくなったのか笑いながら騒ぐロメーヌ、何やかんや言いつつ良い旅の仲間になれそうだと少し安心した。


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