24−1.不如意
そびえ立つ難攻不落の石壁の城壁、ここに来るのも随分と久方ぶりだ。
コールズはその城壁を見上げると馬から降り、それに倣う様にゾアンとカリナも馬から降り、ミッドラスに入る為め城門の関所に並ぶ
ミッドラスは商業国家、荷馬車や他の冒険者、大荷物を担いだ商人達で長い列をなしている。
夕刻が近いため、森で狩りをしていた物達も、慌てて戻ってきているのだろう。
「随分と並んでますね」
ゾアンの言葉に頷きつつ、城壁を再度見上げれば前回来た時より見張の兵の数が多いようだ。
ここに来る途中で通ったが、森から出てくる魔獣を見張るための櫓も数が増えた様に思う。
やはり、ここも魔獣対策に兵を取られている様だ。
黒髪の女が乗っていたであろう荷馬車の跡を追ってここまで来たが、よりにもよってミッドラスとは…これから帝国と戦争をすると言われているが、まさか、ミッドラスが既にあの黒髪を抱え込んでいるのか?
俺が悩んだ所でどうにかなる話ではないが、国や軍の連中が聞いたら頭の痛い話であるのは間違い無いだろう。
俺だったら手を出すのを躊躇う。
カリナから渡された干し肉を齧りつつ、気づけば日が落ち辺りが薄暗くなり始めた頃、やっと順番が回ってきた。
早く酒場にでも行って一杯引っ掛けて一息つきたい。
獣人の兵士に言われるがまま、冒険者の身分証を見せると獣人の兵士の顔が歪む
「お前ら、帝国にあるギルドの冒険者か」
「そうだが、何か問題が?」
普段ならさっさと通されるのだが、どうしたと言うのか?
振り返り、ゾアンとカリナを見るが、2人も心当たりがないと言った顔だ。
「悪いが、帝国の冒険者は入国できない規則になった。
理由は…わかるだろ」
身分証を突き返す兵士からそれを受け取りつつ、何を馬鹿な事と怒りが込み上げる。
「戦争の話か…だがあれは、国であって俺たち冒険者は何の関係もない!」
怒りを抑えるも、些か語気が強くなる
「残念ながら、我が国の上層部はそう思っていないという事だ」
獣人の兵士はシッシと手で払うように、さっさと戻れと追い返す。
怒りが込み上げて来るが、此処で暴れれば無傷で国へと帰れなくなる。
彼らの言う事は道理ではあるが、頭では理解できるが腑に落ちない。
「行くぞっ」
ゾアンとカリナの顔も見ずに、関所を出て平原へと戻る。
野営をするには森からできる限り離れる必要がある。
日が落ちて冷えた空気を胸一杯に吸い込んで頭を冷やす。
ミッドラスの入国審査が厳しくなっている話は聞いていたが、冒険者にまで及んでいるとは思わなかった。
ある意味、収穫だ…これもギルドへ報告せねばならない。
戦争を始めるのはいつだって国のお偉いさん、国民や冒険者はそれに振り回され野垂れ死ぬ
冒険者は世界を股にかけて魔獣を狩り、その目で、その足で一歩ずつ未知の土地を減らしてゆく、その自由を奪われる悔しさ、冒険者と言いつつ自分達が各国で出入りして入手した情報を、ギルド長が国に挙げていることは皆が知っている。
結局ギルドも帝国の手先であることは間違いない。
いっそ、誰の持ち物でもない未開の土地にギルドを作れば、こんな悔しい思いをする事もないだろうか…
「はぁ…早く家に帰りたい…」
そう、呟いた言葉は夜風に消えた。




