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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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23−2.ミッドラス




 マスターから投げられた部屋の鍵を、ロメーヌがパシリとキャッチすると私の方を振り返る。


「一旦、部屋に荷物置いたらご飯でも食べましょー」


 そう言って鍵を一本、私に差し出す

部屋割りは言わずともがな


ロメーヌとアレイナ、私とリリーちゃんとグレンに決まりだろう。


 鍵を受け取りながらオルハントを見上げる

オルハントもロメーヌと負けず劣らずの身長で180はあるんじゃないだろうかと思う


「オルハントも一緒に食事をしませんか?

着いたばかりでオルハントも休んでいないでしょ?」


そう問えば、オルハントがコチラを振り返り申し訳なさそうな顔をする


「お気遣い痛み入ります…ですが、もう少し知人を探して一旦、拠点に戻りたいと思います。

 明日の朝、またコチラに顔を出します」


 ミッドラス入国と奴隷商人の話など流通ルートを聞くつもりだけだったが、情報収集にも協力的なオルハント、何が彼をそうさせているのかは分からないが、申し訳ないが甘えておこう。

 

許してオルハント!!


「そうですか、では朝食を一緒に摂りましょう。

ご馳走しますよ」


 そう言って笑えばオルハントも微笑む、見た目は盗賊の恰好だと言うのにやはり品がある。


「では、お言葉に甘えて、明日ご一緒させていただきます。」


 コチラを見ていたマスターが前のめりになり、ロメーヌに耳打ちする


「おい、ロメーヌ

あれ、本当に奴隷狩りのオルハントか?

それに、あのお嬢ちゃんは何者だ?」


こそこそ話してるつもりだろうが丸聞こえであるマスター


「本当に本当の奴隷狩りよぉー、オルハント達を返り討ちにした筆頭?が、あの子なのぉー

 気をつけないとマスターも簀巻きにされて、魔獣の前に吊るされちゃうんだからぁー」


 オイコラと言わんばかりにロメーヌを睨めば、てへっ♡と舌を出す。

 アレイナもそれを見て苦笑いをしている。


 そう言えばグレンがやけに大人しいと見てみれば、酒場の客が頬張っている骨付き肉をガン見して涎を垂らしている。

 ドラゴンの人型って燃費が悪いのだろうか…


 オルハントと別れ、グレンを引きづる様に酒場の2階に上がり部屋へと入れば、エルフの里の部屋よりシーツも部屋も綺麗とは言い難いが、ベッドで横になれるのはありがたい事この上ない。


「タキナ様、奴隷狩りの…あの男、これ以上近づけさせない方が良いかと思います」


 部屋に入るなり、リリーちゃんが後ろ手でドアを閉めると神妙な顔をする。


 グレンがベッドにダイブすると埃が舞い上がり、それに咽せながら


「何か理由があるのですか?」


 奴隷狩りであり、盗賊みたいな人間を信用するのはどうか?と言うのはわかるが、リリーちゃんから察するにそれだけでは無さそうだ


「私がこの世界に来る前に与えられた知識に、あの男の名前があります。

 敗戦国で地位ある立場のオルハントと言う名、帝国に敗れたローレン王国の国王の名です。」


 その言葉に思わず固まる


 国王…


 はっ?


「いやいや、リリーちゃん!

流石に敗戦国の国王は言い難いけど、処刑かされるか、逃れたとしても…

いくら何でも、名前くらい変えませんか?」


 そう…いくら何でも…ねぇ…

普通に名乗ってるならお貴族様や大商人の息子とか、そんな者なのでは…


「正確に申しますと、オルハントは婿入りした王で政治的な権力は持たず。

 ローレン王国、王族直系である妻が女王として国を納めていました。

 オルハントはハイランジアの国王の側室の子で有り、現ハイランジアの国王であるオリエンテの腹違いの兄でもあります。」


 なん…です…とっ!?

 急に週刊◯集みたいな、ゴシップ系の話が急にっ!!!!

そんな大物が何故!?


「もっと早くにお伝えするべきだったのですが…

流石に前国王が奴隷狩りに堕ちているところまでの知識はなく、同じ名前の別人なのだと思いお伝えせずにおりましたが、先程のテアンと言う男の名…ローレン王国で王宮付きの天文学者の名が獣人のテアンでしたので、この事をお伝えしなければと…もっと早くにお伝えすべきでした。

 申し訳ございません」


 そう言って泣きそうな顔をしながら頭を下げるリリーちゃん、何でもできるリリーちゃんにとっては、これは不甲斐ない自分のミスとでも思っているのだろう。


 慌ててリリーちゃんに駆け寄り、抱きしめるとヨシヨシと背中を撫ぜる。


「リリーちゃんは何も悪くありませんよ、伝えようか悩んだ事は何度かあったのでしょ?

 確証が持てるまで待ってくれた。

 これはミスでも何でもありませんよ、リリーちゃんの知識には何時も助けられていますが…。

 まさか、王宮で働いている人の名まで知っているなんて凄いですね…」


「いえ…本来は王宮に勤める者の名前までは把握していないのですが、王宮付きの学者はテアンと言う者が唯一でしたので…知識に加えられていた様です…」


 ギューっと抱きついてくるリリーちゃんが可愛くて、ちょっと笑いそうになりながら、オルハントのことを考える。


 オルハント…本当に国王だったとして、どうして生き延びられたのか?

 頼った親族に足蹴にされたと言っていたが、ハイランジアの王族の事だったのだろうか…


 何故、私の協力をしてくれるのか?

色々と気になる事はあるが本人に


「オルハントって敗戦国の国王って本当?」


 なんて、こと聞けるわけもなく…。

 本当だったとして本人が言うとも限らない。

 これは…言わないほうが良いだろう


「オルハントが協力してくれているのか、協力するフリをしているのか、それを判断する事はできませんが、私はもう少し様子を見たいと思います。」


 問題を先送りとは愚かな判断だと自分でも思うが、オルハントのあの目…謀ろうとする様なものには思えない。

 もし、嘘をついているなら大した役者だ


「エルフとドラゴノイドに、アイツが元王様って話はするんですか?」


 ベッドに寝転がったまま問うてくるグレンを、リリーちゃんが鋭く睨みつける。


「2人にも念の為、話をしておきましょう…」


 元王様かっ…


 何でそんな大物ばかり私の周りに現れると言うのかっ…グレンに掴み掛かりそうなリリーちゃんを引き留めつつ


あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

また、厄介ごとじゃーーーん!!!

何で私ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


と、脳内で絶叫した。





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