2−2.最早邪神
では早速、実践行ってみましょう!
と翌々日、リリー先生のスパルタ実践術で魔獣の出る森に放り込まれ数分で象のように大きな茶色い熊に出くわした。
でかいでかいでかい!!!しかも目が赤く光ってるし!!
牙を剥いて向かってくる熊に慌てて構え、氷の槍をイメージして作り出し、熊に向かって槍を飛ばしてぶつけるが、そんな事はお構いなしと突っ込んでくる。
ちょっと!神の力は!?威力調整どうやってやるの!?
「タキナ様は力を出すことを恐れている様ですね。
恐る恐るやる必要はありませんよ」
すんでの所で熊の突進を避ける。
そんなこと言っても動物殺した経験なんてないし!力使うって言われても!!!
ヒィィィィィー!!!
泣きそうになるのをなんとか堪えて、先ほどよりも殺気?を持ったつもりで槍を作って飛ばす。
今度の槍は熊の身体を掠めた
「やった!」
攻撃が入った!!
とは言えかすり傷程度、再度槍を出現させて先ほどのように飛ばすが最も簡単に薙ぎ払われる。
このままだと殺されると言う焦る気持ちでジリジリと後ろに下がる。
逃げたいんですけど!!
私とは真逆に余裕げな熊は薙ぎ払った爪からスラッシュ攻撃を繰り出す。
それを真横に飛んで転がるようにかわす。
命のやり取りなのだ…熊もそう簡単に倒れる訳がない
熊から距離を取る為に攻撃を続ける
怖い…殺される…
だと言うのに、何故だか妙に気分が高湯してくる。
この気持ちはなんだろう…何故かよく分からないけど楽しくなって来たような?自然と口角が上がっていくのがわかる。
熊との攻防が続く
死にたく無い!
楽しい…
怖い!
楽しい
死ぬのは怖い…
けれど楽しい!
まるで内側から何かに塗り替えられて行くような、ドス黒い残虐性に満ちた感情が湧き上がる。
頭では呑まれてはいけないと考えているのに、そのドス黒い感情に抗いたくないと思ってしまう。
あぁ…この高揚感に呑まれてしまいたい!けれど手放してはならないと歯を食いしばる。
乱れる思考の中で真正面から向かってくる熊、必死に繰り出した私の槍が今度は熊の肩を深く抉り血が流れ落ちる。
熊の苦しそうな顔…
ダメなのに手放してはダメなのに
でも…もう…
「フフッ………アハハハハハハハ!!
さぁ!!どぉーした?本気でかかってこい!
私を殺して見せろ!さもなくば地に這いつくばって無様に死ぬのは貴様だぞ!!」
そう叫ぶと同時に熊が先程とは比べ物にならない位の咆哮を上げて突進してくる。
それを品性のかけらもないニヤつき顔で熊を見据えながら強くイメージすると、熊の頭上から無数の黒い槍が雨のように降り注ぎ獲物を地面に串刺しにする。
串刺しにされた熊が力無く呻き声をあげ、そして絶命した。
熊の身体から滝の様に流れ落ちる血、初めて己の手で生き物を殺したと言うのに私の中にあるのは恐怖ではなく、弱者を力でねじ伏せた高揚感
あぁー、なんて愉快!!
まるで自分が最強にでもなったかのような感覚、とてつもなく気分が良い。
両手で体を抱き込み高揚感に身悶える。
「クッ…アハハハハ!!最高の気分だ!!
アハハハハハ…ハッ…は…はは…はぁ!?」
辺りに立ち込める血の匂い
先程までそれを見て興奮していたというのに、急速に冷まされる高揚感、それと同時に襲われる焦燥感
あっ…あれ?私、今どうなってました??
自覚はあるし記憶もある
間違いなく自分自身がしでかした事…
「タキナ様、ハイになってらっしゃいましたね。
目がいっちゃっていました」
「んぐっ!!!」
とんでも無いぶっ壊れ方をしていた私を見たにも関わらず、割とあっけらかんとしているリリーちゃんの肝の座り具合に些か救われる。
「神の力は精神と直結しているそうなので、神ではなく人が使うと奥底にある内面が引き出されるのかもしれませんね。
タキナ様は元が人ですから、そのせいかと思います。」
なんという事でしょう…。
ハイになって偽善者と言う化けの皮が剥がれた上、絵に描いたような人間の醜悪さと残虐性を詰め込んだ私の本性現ると言う事ですか!?
ここまでヤバい人だったなんて私自身が驚きですよ!
これは世界再生するどころの話では無いのでは?
もはや、神は神でも邪神なのでは?
誰ですか、善良な心で自己を犠牲にして他者を救ったって言う人は?
「完全に人選ミスですよぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!」
天に向かって大声で吠えたが、虚しく空に消えていった。




