22−2. 爆走
「本当に出る幕無さすぎて悲しいですぅー
私じゃ、メタルベアーに瞬殺されちゃうけどぉー役立たずな私、悲しぃー
アレイナちゃんもそう思うでしょぉー」
「いえ…戦闘でタキナ様に敵う者などいないと言う事は、重々承知していますから」
「あぁーん、アレイナちゃんが冷たいー」
「喧しいですよ女狐エルフ!!」
「リリーさん酷ぉーい!!」
「お腹減った…」
「グレン君、さっき干し肉食べてたじゃないですか…」
グレンの発言に呆れ顔になるアレイナ
やんや言い始めて騒がしくなる檻の中、君達…もっと真面目に奴隷のフリして、ため息をつきながら新しく旅に加わったロメーヌと、もう1人の旅の仲間、アレイナを眺めながら、昨日の事を思い出す。
「今なんて!?」
私の上擦った声が部屋に響き渡る。
ラトリアが連れてきた里長のソリアスから「奴隷狩り達の身柄はタキナ様にお任せします」との言葉を頂けたので、ミッドラス行きに彼らを同行させる事は決定した。
ソリアスから、ドラゴノイドの長と共に部屋で今後の話をしようと里長達と対等した部屋で、私、ソリアス、ラトリア、ロメーヌ、クロイ、アレイナ、この6人で話し合いをしていたのだが、ロメーヌも連れて行くことに決めたと正式にソリアスに、伝えたところ、アレイナがおずおずと手を挙げて
「私も同行させていただけませんでしょうか」
と、突然言い出したのだ。
そりゃ聞き直したくもなる…クロイの方を見れば目を閉じて我関せずといった表情だ。
おいおい止めてくださいよお兄さん!!
あなたの妹がとんでもないこと言っていますよ!!
ドラゴンの長の息子に、エルフの優秀な戦士、その上今度はドラゴノイドの長の妹!?
冗談じゃない!これ以上責任が増えるのはごめんだ。
ただでさえ、成し遂げられるかわからない世界救済と言うどでかいミッションがあると言うのに…
「アレイナ…私はこれ以上、旅の仲間を増やすつもりは「お願いします!!足手纏いには決してなりません!!
荷物運びでも身の回りのお世話も致しますですから!!」」
前のめりになって叫ぶように訴えるアレイナの前に手を出して、まぁ、落ち着けと促す。
「気持ちは十分わかりましたが…まぁ…念の為、同行する理由を伺っても?」
頭ごなしにダメと言いたいところだが、理由を聞けば何か解決策があるかもしれないし、念の為…念の為だよ!理由を問う。
「それは…・
…私は薬師になりたいのです。
私の里ではただの雑草とされた草も、別の場所では薬草として扱われる
知らなければ不治の病となり、他の里では治る病も私の里では治らない…私はこの世界の国々に伝わる薬草の知識を学び、それを書物に残し、そしてその知識を広めたいと…そう思っています。」
そう言い終わると俯くアレイナ、俯く必要などないほどに壮大な理由だった。
しかも、この世界の医学の発展に繋がる様な理由…
しかし、一つ疑問がある
「アレイナ…その救われる命というのは、ドラゴノイドとエルフの事ですか?」
意地悪な聞き方かな…
「人間は…正直好きではありません…。
ですが、私が薬師になりたいと思った理由は、以前お話した人間の薬師がきっかけです。
人間の薬師が授けてくれた知識、そのお陰で父が救われた。
その人間が、私達ドラゴノイドを差別する事なく授けてくれた知識、私はその人間のように病に苦しむ者がいるなら、種族を問わず助けたい。
人間にも善人と悪人が居る。
それはよく知っているつもりです。」
困った様に笑うアレイナにつられる様に、私も困った笑みを浮かべてしまう。
そう…困った
自分でフラグを立てといてなんだが、「連れて行かない」とは言えない壮大な理由だ。
あぁ…どうするよコレ…現実逃避するように天井を仰ぎ見る。
「タキナ様、どうか我が妹の願いを聞き届けて頂けませんでしょうか
貴方様の事、皆からお聞きしました。
私自身も貴方様にお会いして、生意気ながら、貴方様なら妹を託せる。
そう確信しております。
どうか、妹を貴方様の旅に同行させてやって下さい」
そう言い終わると立ち上がり、深々と頭を下げるクロイ
それを見たアレイナも慌てて立ち上がり、クロイの隣に立つと頭を下げる。
このくだり…もう何回目だ…何故…どうしてそんなに簡単に私を信用するのか?
神になると、人を信用させる何かが出るのだろうか?
この世界に来てから絶えない深いため息をつく
「頭を上げてください2人とも…ロメーヌにもこの際なのでお伝えしますが、知っての通り私はこの世界の救済を目的としています。
あなた方は快く私を受け入れてくださっていますが、獣人や人間はそうは行かないと思っています。
むしろ、敵として見られ命を狙われる可能性もある。
現に帝国から目をつけられている…私に勝てないとなれば彼等が狙うのは、間違いなく私の身の回りの者、私の同行者となれば勿論守るつもりでいます。
ですが、四六時中目を離さない訳じゃない。
簡単に捕まるあなた方ではないのは承知していますが…命をかける覚悟はお有りですか?」
人間とはド汚く出来ている。
奴隷なんて制度がある時点で、地球、私の元いた世界の人間と変わりない。
どんな残虐なことも非道な事もやって退ける
それが人間だ
「私は戦士ですしぃー
元より命かける覚悟はとっくにできてまぁーす。
タキナ様には必要ないのは分かってますけどー、矢避けの盾くらいにはなるつもりでいますぅー」
いつもの調子と笑顔で答えるロメーヌ
軽い…ノリが軽いよロメーヌ…
自暴自棄なところがあると聞いていたのを思い出し、ロメーヌはむしろ自ら命を捨てに行く事がないよう、目を光らせなければならないだろう。
さて、アレイナは?
と、顔を向ければ俯いている
「私は…奴隷狩りから弟達すら護れなかった。
きっと私1人で旅に出た所で、同じ目にあっていた事でしょう。
同じ事なのですタキナ様、1人で行こうとタキナ様に同行しようと、身が危険なのは変わりない。
それでも、私は行きたいのです。
あっ…でもそのぉ…私が死んだ際は、私が書き留めた薬学の羊皮紙の束は拾って頂いて、誰か薬学の知識を学ぼうとしている者に託していただけたらとは…思っております…」
そう言って恥ずかしげにモジモジし始めるアレイナ、自分の命より薬学の知識が詰まった羊皮紙とは研究者の鑑だな…。
この世界に居るのかは知らないが、彼女は根っからの学者とでも言おうか…
こんな志ある者に連れて行けないなどと言えやしない。
他の神なら言ってのけるのだろうか、こんな事ではどんどん大所帯になっていってしまう。
あぁ、またリリーちゃんに何て説明しようか、きっとグレンも冷たい目をするに違いない。
この後の2人のリアクションが手に取るようにわかり、思わずこめかみを抑えた。




