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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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22−1. 爆走


 エルフの里を出てから1日ほど経ったろうか?

 案内人として雇った元奴隷狩りの乗ってきた荷馬車に積まれている檻の中で、皆が同じように汚れた布を目深に被り姿を隠している。


 檻の中では読書する者、干し肉をモグモグしている者、元奴隷狩りに絡んでいる者、引っ付き虫になっている者、引っ付かれながら、尻が痛い…と思っている私


 傍目から見たら奴隷…?と、疑問を持たれそうなほど優雅に過ごす檻の中の面々、流石に人目につきそうな場所に出たら、もうちょっと奴隷らしくしようと思ってると、何やら不穏な気配を感じる。


これは…魔獣?


「リリーちゃん」


 そう声を掛けると私の腕にしがみ付いて、ニャンニャンしていたリリーちゃんの瞳が鋭くなる。

 グレンも干し肉を食べる手を止めて顔を顰めて


「メタルベアーだ…」


 そうボソリとグレンが呟くと私とリリーちゃん以外が、バッ!!とグレンの方を向く


「何ですって!?」


元奴隷狩りの1人が驚愕したように聞き返す。


「メタルベアーだよ人間はそう呼んでるんだろ?

あいつ強いから嫌い…」


 ドラゴンのグレンが強いと言うほどの魔獣、メタルベアーとはまた想像しやすい名前してるなと、呑気に考えていると


「おい馬車を止めろ!!!!」


 慌てて別の奴隷狩りが馭者の2人を止めようとするが、振り返った馭者にリリーちゃんは無常な言葉を投げつける


「無駄ですよ、もう察知されている」


「どうしましょうタキナ様!!」


馭者の隣にいたオルハントが慌てた様子で振り返る。


「私が対処しますので、馬車を決して止めないように、そのまま走り抜けましょう」


 止まろうがどの道、メタルベアーと衝突するのであれば道すがらヤッちまおうではないか!

エンテイを倒した事でだいぶ自分の力にも自信が付いた。


「タキナ様が自らやらずとも、リリーが相手をしますのに…」


「良いんですよ、リリーちゃんは私の秘蔵っ子なので

出し惜しみしたいんです」


 そう言うとリリーちゃんは、タキナ様ぁぁぁぁぁぁ♡と言って抱きついてくる。

 周りは、こんな非常時に何を見せられているんだ状態である。

 しかし切り替えの早いリリーちゃん


「タキナ様の神々しい姿、しかと目に焼き付けよ人ども!!」


 控えよろー!!と言わんばかりの動作で、急にドヤるリリーちゃん


 馬車の中は「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」と、歓喜の声が上がる。


ヤメテ…お願いだからヤメテ…


 戦闘狂にならないよう、気を引き締めなければ…と、思うが毎度呑まれるんですけどね…

 

 内心で白目を剥きそうになるが、急に迫ってくるメタルベアーの気配に慌てて檻から出て上に乗ると、真っ直ぐこちらに向かって大木が飛んでくる。


「「ギャァァァァ!!!」」


叫ぶ馭者2人に


「止めるな!!!」


 そう叫ぶと同時にその大木向かって勢いよく跳躍して、その大木を来た方向に両足で蹴り返し、その反動でまた檻の上に戻るが金属製の檻に少し足を取られ、慌てて檻を掴む


 正面を向くと同時に、ドゴォーンと言う音共に魔獣の悲鳴と土煙が上がった。

 どうやら、蹴り返した大木がヒットした様だ


「そろそろ、開けた場所に出ますー」


 ロメーヌの言葉通り程なくして、少々開けた場所に鉄の鎧を着た様なクマが起きあがろうと踠いているのが見えた。

 

 ここで一つ、試してみたかった力を試す。

 

 意識を集中して頭の中でイメージする

するとメタルベアーの真下の地面が赤く光り、そして轟音と共に爆発を起こす。


「アハハハ!良い感じ!!!」


 テンションあがっちゃうなーイメージ通りじゃない?

イィー感じぃーアハハハ!!


 馬車が開けた場所に出て、血を流してもがくクマを横目に通り過ぎる

 

 金属鎧の防御のおかげだろうか?

 まだ生きてるなんて、なかなか頑丈じゃないか、もっともっと遊びたいけど


「残念、私もう行かなきゃ…さよならタフなクマさん」


 悲しい顔をしてメタルベアーを見れば、手負の虎ならぬクマがこちら目掛けて走り出す。

 

逃げない!凄い!素晴らしい!!


あぁ…もっと戦いたい!!


 何時もの様にドス黒い戦いへの執着心が溢れ出す。

ダメ…ダメだタキナ戻さなきゃ、フタをしなきゃ…奥歯を噛み締めて前を見据える。


「そのガッツに免じて、苦しまないよう逝かせてあげましょう」


 黒い鎖を四方から出しクマを地面に拘束するが、胴体、肢体の鎖を引き千切ろうと暴れる力がこちらにも伝わってくる。

 この怪力はドラゴンに迫るかもしれない。


 ニヤリと笑いながら、鎖の拘束を更に強めると悲鳴を上げるメタルベアー、大丈夫、すぐ終わらせる。


 クマの腹の下が赤く光ると、先ほどと同じように轟音と共に爆発する。

肉片が飛び散ってはスプラッタだと思い、加減はしたがクマの血が四方に飛び散った。


 ダラリと広がる様に地面に倒れ込むメタルベアーを見て、勝利に歓喜している暇はない。

 何せ森の外には先日の狼魔獣の気配、森の外で待ち伏せか?


 8頭いるだろうか?

もう一つ試してみたい攻撃があるんだよねー、折角だし練習台になっていただこう。


 ニヤリと笑うと右手を天に伸ばし、上空に合図するように手を振り下ろすと、8本の稲妻が青い空から地上に落ちる。


 気配を感じた場所にピンポイントで落としたつもりだが、気配は消えたが結果はいかに?

そろそろ、森の出口が近い。


 慌てて檻の中に戻り、いつの間にか取れていたフードを目深に被り直す。


「すっ…すげぇ…」

「これが神って種族…」


 奴隷狩りが唖然としている中


「タキナ様!!あぁ…神々しい!」

「流石タキナ様!里に帰ったら父上に話そっと」


リリーちゃんとグレンだけが目を輝かせている。


「それはどうも」


 そう言って微笑んだ。

 森の出口が近いのか少しずつ明るくなっていく


「ほらほら、森の出口が近いんですから奴隷らしくして下さい!

何やら外に気配も感じますし」


 そう言うと皆、慌てて床に座わり、馭者達も慌ててフードを目深に被ると正面を向く


よそ見運転禁止!!


「森の出口に冒険者らしき姿が見えますが、このまま突っ切ります」


 オルハントの言葉に頷く間も無く、一気に視界が開けて明るくなると同時に、漂う焦げ臭い匂い。

 視線を横に向ければ棒立ち状態の人の姿が3人が目に入る。

そして焼けこげた狼、どうやら狙い通りだったらしいが、一歩間違えばあの3人に当ててたかもと思うと、己の軽率な行為にゾッとした。


 やはり目視は必要だ…罪の無い者の命を奪う度胸は流石にない…

これまで色々と力を試してみてはいるが、やはり、何でも思い通りに行く訳では無いようだ。

 

 どう言うわけか攻撃系はすんなり上手く行くのだが、飛行や髪の色を変えるなど、繊細な力の使い方とも言うべきか?

そう言った方はさっぱり上達しない


 髪の色を変えようと昨日トライしてみたが、黒と金の斑のとんでも無い髪色になり絶叫しかけて、手に汗をかきながらやっと黒に戻したのだ。

当分はやりたくない…そんな事を思い返していると


「正面から誰か来るな冒険者だな…」

「止められない限り突っ切るぞ」


 馭者2人の声を聞いて、フードを更に深く被る。

そう、そのまま一気にミッドラスに行っちゃって下さい


 それにしても、冒険者か…


居るのかなー、人間にも強い者が…ドラゴンよりも弱いのは分かっているが、剣術もできる様になったわけだし、手合わせ程度はしてみたいものだ。


 人間の強さが、どの程度なのかも知りたい。

そう思いながら、すれ違い様に冒険者を見やれば、向こうもこちらを見ていて目が合う。

 

剣術使うの楽しみだなー。





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