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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美


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18−2. 里長





 「あなた方が私の話を受け入れてくださって感謝します

 まだ猶予はある

 ソリアスの夢を現実にしない為にも、私はこの後人間の国へ向かうつもりです。

 これ以上、憎しみを、悲しみを増やさないために、この世界を終わらせないためにも」


 やるべき事がまだ漠然としすぎている

 足りない…力があっても尚、何もかもが足りない…


「あなた方に聞きたいことがあるのです。

 この世界では黒は始まりの色だと聞きました。

エルフの里で口伝されている話を聞かせていただけませんか?」


 そう聞くと皆の視線が私の頭へと行く、この世界では珍しい黒髪ですからね。

まぁ、視線がいくのも仕方がない


「我らエルフの里に伝わる話でよければ、私からお話しいたしましょう」


 ソリアスと同い年くらいだろうか?

 手前にいた髭を生やした白髪のエルフ男性が、長い髭を撫でながら口を開く


「この世界の始まり

世界は深き闇より作られた

闇は黒、黒は闇

命ある者は皆、闇から生まれ

いずれは闇へと還る

この世界の根源であり原初の色」


 そう言って一息つく御老人


「エルフの里に伝わる世界の始まりの話でございます。

 あまり、詳しい事は我等にも分かりかねますが、タキナ様を見て一つ思い出したことがございます。

 80年ほど前でしょうか、獣人の者に言い伝えの話をした際、獣人達の口伝では黒の化身が出てくると聞いたことがございます。

 もしかしたら、種族によって伝わる話が少し違うのかも知れませぬ」


 黒の化身…


 それは、悪なのか善なのか、この世界にまるで伏線かのように黒の話があった。

 私の、この黒髪に紐づけるため広めたか?それとも偶然…いや、元々伝わって居た話に合致するように黒髪の私を選んだ?


 もし、創造主がそんな言い伝えじみたものを残すならなぜ、この世界の崩壊システムを詳しく残さなかったのか…

まぁ…自称召使は自分達で気づいて欲しかったとは言っていたけれど…


「そう…ですか…獣人達の詳し言い伝えも聞いてみる必要がありそうです…」


 全ての種族に話を聞きたい

 獣人の国は確かミッドラスだったか?

 ソリアスの予知夢では猶予は1年…もしくはそれより短い

 私達が予想しているよりも現状が深刻とは思えない

 ならば、事態を加速する何かが起こると言うことか?

 どちらにしろ、情報収集が必要のようだ。


「人間の国に行かれると仰られておりましたが、我らの里からは獣人の国、ミッドラスを通ったほうが人間の国に近い。

 彼らは商業が盛んな国で人間の出入りも多い国、話も色々と聞ける事でしょう。

 其方にお寄りになってからでも遠回りにはなりますまい」


 流石は人生の大先輩、私の思考を読んだかのように私の頭の中を整理してくださった。

 いや、私が鵜呑みにした。


 戦争にしろ何にしろ、全ての要は情報だ。

 あらゆる話が集まると言うならば好都合だろう

 考え込んでいると「タキナ様…」と消え入りそうな声をして今まで一言も発していなかった円卓に座る中で、50代位だろうか?最も若いであろうエルフの女性が声をかけてくる


「タキナ様…我らの同胞を救ってくださり深く感謝しております…厚かましいお願いと重々承知しております。

 ですが…どうか…人間の国に行くと言うならば、売られた我ら同胞をお救いいただけませんでしょうか…」


「フラン!!口を慎め、厚かまし過ぎるぞ!!

 奴隷商人共に連れ去られた者達は用心深さの欠如、何より人間ごときに敗れる力なの無さが原因だ!

 弱者は強者に喰われるもの、亡き者として扱え」


 若いエルフの隣にいた同い年くらいのエルフの男に怒鳴られると、萎縮して下唇を噛み締め俯く女性

里長にしてはいささか頼りない感じだ…


 他力本願上等ですよ、助けたいと言う気持ちがあると言う事を知れただけで十分


「確約はできませんし、今すぐどうこうする事もできません。

 ですが、この世界の奴隷というものを無くすつもりで居ます。

 多少時間はかかるかもしれませんが、何は全ての奴隷を解放します」


 でかい事を言ってしまった…。

 だがしかし、これも世界を清浄する為には必要なことだ。

 人が人を虐げる世界など見たくない

 私がこの世界の神になるのであれば許しはしない


 バッと効果音がつきそうなほど勢いよく顔を上げるエルフの女性、その顔には涙が浮かんでいた。


「ありがとうございますタキナ様…ありがとうございます…」


 両手で顔を覆い泣き出してしまう女性、最近よく人が泣く姿に遭遇するな…


「タキナ様、本当に奴隷を解放されるおつもりなのですか!?」


 驚いた様に先ほどまで怒鳴っていた男がこちらを見る

 この世界で主に奴隷を使役しているのは人間、そしてこの世界を滅びに向かわせているのも主に人間


戦争、差別、そして奴隷


 おそらくそれ以外にも数え切れないほどの憎しみや悲しみを、人間は生み出している事だろう。


「当然です。私はこの世界を清浄化する為にきました。

 人が人を虐げる世界など許しはしない…と言っても、すぐには難しいんですけどね」


 あははは…と乾いた笑いをして、居心地悪げに頬を掻いた。 


 啖呵を切ったものの、相変わらずどこから手を付けるべきか分かっていない。

 無責任な発言、本物の神のように神の力で簡単に成し遂げられはしない。


 私なりに一歩一歩解決するしかない。

期限付きだけれど…


「良いのですタキナ様、我らに希望が生まれた…それだけでありがたい事なのです」


 ようやく震えが治まったのか、ソリアスが顔を上げてはにかんだ様に笑う


 希望かっ…闇とまるで正反対の位置に居る言葉に思う


 闇と光それは表裏一体、私は世界を無に返す闇なのか、それとも導く光なのか?

 その答えが出るのはいつなのか、知っているなら教えてくれ自称召使


「私からもう一つ、お聞きしたいことがありまして…。

 ロメーヌの事についてなのですが、私の旅に同行して貰うか悩んでおります。

 ロメーヌは優秀な戦士な様ですし、里の守り的に連れていって良いか悩んでおりまして」


 情報収集役ではロメーヌは必要、まぁ…歩く18禁お姉さん問題は置いといてだ。

 しかし、魔獣が増えつつあるのであれば、里の守りを担っている戦士であるロメーヌを連れていけば、困ることも出てくるだろう。

 私の独断で連れて行く事を判断できない。


「ロメーヌの口からも旅に同行したいから、里を出たいと言う話を聞いております」


 困った様な顔をしたソリアスがため息をつく、そのため息は…どう言った意味合いなのでしょうソリアス殿?


「あの子は…ずいぶん前に愛する者と死別しているのです…普段は昔と変わらぬ振る舞いをして見せていますが、己の身を顧みない戦い方が増えたとライハから聞き及んでおります。

 此度の奴隷商人に連れ去られたのも、捉えられた仲間を救うために自ら奴隷商人の男について行ったと…」


 あのロメーヌに最愛の人がいた!?

 それも驚きだけれど、弱者は切り捨てるような思想の中で仲間を助けようとするロメーヌ、例え恋人に先立たれ自暴自棄になっていたからだとしても、この世界では貴重な人材


「タキナ様と同行する意図は私にも分かりかねます

 死場所を探しているのか…何かを変えたいと思っているのか…あの子は人の話を聞き出すのは上手いのに、あまり自分の事を話さないのです」


 悲しそうな顔をするソリアス、随分とロメーヌに目を掛けている様だ。

 エルフは皆、顔が似ているので判断できないが身内か何かなのだろうか?


「里の守りは他の里と協力できますので、タキナ様さえ宜しければあの子を連れて行ってはくれませんでしょうか?

 里にいれば魔獣と無茶な戦いをし続けるのが目に見えております。

 タキナ様といれば無理する間などございませんでしょう」


 今度は私が困った様に笑う番、思いもよらぬロメーヌの過去、のほほーんとしている様で、里長が心配するほどの闇を抱えているロメーヌ


 心の底から誰かを愛した事のない私には、到底理解できない苦しみを抱えているのだろう。

 私の気持ちは決まった

 里からの許可も出た

 本人の心の内を聞いたとて話してくれそうではないが、ロメーヌの話を聞いて最終判断する事にしよう。


 すっかり冷めてしまったお茶を一口飲むと、この部屋の香りと同じジャスミン茶の味がして


ほぉっと、息をついた。



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