16−2.再会
まてまて…ここまで感謝されるとは思っていなかった。
確かに身内が無事に帰ってきて感謝されるのは分かるのだが、この世界は本当に助けを求める他者を救うと言う概念が、全くと言っていいほど無い様に思う。
先日、アレイナ達と話した時も似たような事を言っていた。
他者に施しを与える事すらない。
弱い者は淘汰されて当然、弱肉強食の世界、動物であれば当たり前の行為なのだろうが、知性のある人として如何なものか?
いや、今はそれよりも
「顔を上げてくださいラトリア!ロメーヌ!ライハも、皆さんも止めてください!」
オロオロしながらエルフ達に顔を上げる様に伝えるが、ライハが口を開く
「これはエルフの最上級の敬意です。
同胞ですら連れ去られた仲間を森を出て、危険を冒してまで救いに行く事など滅多にございません。
少人数なら尚の事…しかし、他種族であり何の関わりのない我らを、タキナ様はドラゴンから救ってくださり食事まで恵んでくださった。
我らはタキナ様の深い御慈悲に感謝の念を禁じ得ません、どうか感謝の意をお受け取りください。」
きっと本当の神様ならば、コレくらいの感謝を堂々と受け取るのだろうが、何度も言うが私は元は人間だ。
こんな私にそんな恭しく頭を下げれられても、どんな態度をして良いかわからなくなる。
堂々と、神らしくできる日など来るのだろうか?
「あなた方の敬意は十分に受け取りました。
ですかっ……」
そう言い終わらぬうちに、少し離れた場所からこちらを伺う気配を感じる。
急に言葉を切った私を不審に思ったのか、ラトリアとライハが顔をあげ、リリーちゃんとグレンも気配を感じたようで直ぐ様、そちらに顔を向け警戒体制をとる。
「魔獣の様ですね」
リリーちゃんが声を発すると、エルフ達も其方を振り返り剣や弓を構える。
さて、どうしたものか?私が殺るのは構わないが、エルフ達の前で戦闘狂になるのは少々…いや、かなり遠慮したい。
やばい神だと思われるのは避けて通りたい。
考えているうちに気配が後方からも近づく、おそらくココを囲うように方位を狭めてきているのだろう。
森から唸り声を上げながら、角を生やしたの灰色の狼が姿を現す。
見た目は狼なのだがその身体は2mは有るだろうか?
白い角に銀の瞳がギラギラと異様な雰囲気を醸し出す。
「こんな所にまで魔獣が…」
焦った様に声を上げるライハ、そうこうしているうちに四方から狼が姿を現す。
全部で6頭、見た目通り狼らしく群れで狩りをするようだ。
「囲まれているっ…」
怯えたように女戦士のエルフが慌てて背後を振り返り弓を構える。
「おい、エルフ
ここに、わざわざ出迎えにきたのはタキナ様を迎えるためか?
それとも、僕を警戒しての事か?」
グレンがラトリアとライハに気だるげに話しかける
急に話しかけられ驚いた様子を見せつつも、ラトリアが口を開く
「君を警戒してと言うのも正しい
私が幼い頃、エルフの里はドラゴンにより焼き払われている
いくら人の姿をしてるとはいえ、里の者は怯えるだろう
君が他のドラゴンとは違う気性だとライハから話は聞いているが、信用はできない。」
なるほど…その懸念は最もだろう
グレンはドラゴン、里に入って暴れないか心配するのも当然だ。
他の種族からは会ったが最後のような扱いで、その上、グレンはライハ達を焼き殺さんと追いかけていたのだから、おいそれと里に入れたくないだろう。
一緒に旅に出て早々、グレンはエルフの里の外で待て!とはあまりに無慈悲で言えるわけもない。
ジリジリと迫ってくる狼達を横目に、まずはグレンがどう返すか見守ろう。
いざとなれば、一瞬で仕留めて戦闘狂になるのを回避すれば良いかと、グレンに目を向ける。
「わかった。
だったら、僕がこの魔獣共を始末してお前達を助けてやる
それを持って、僕がお前達にした事への詫びとする。
里を襲ったドラゴンの罪までは贖えないけど、ドラゴンは本来、力なき者を助けない。
お前達もよくわかってるだろ?
それを曲げるんだ文句ないよな」
相手に許しを乞う割には、なんて上から目線なのグレン君!!!
しかし、私が言わずともドラゴンのプライドを曲げるなんて、なんだかグレンが急速に成長を見せている。
すごいよグレン!!
タキナは感動して涙が出そうだよ!!
グレンの言葉を聞いたラトリアが目を見開く、本当にドラゴンなのか?
と、言っているようだ。
「それは…いえ、分かりました。
グレン殿、貴方のその気高い意志に敬意を表します。
私からも里の皆を説得致しましょう」
「なら決まりだな!
タキナ様、コイツらは僕が片付けます」
ニヤリと笑うその顔が、なにやら私に似てきていませんか?
と言いたくなったが、その言葉を飲み込んで
「お願いしますねグレン」
そう言って、私たちはグレンを残して後ろに下がる
リリーちゃんも舌打ちを一つして後ろへと下がる
と言っても、囲まれているので後ろにも狼がいるわけなのだが、はてさて、グレンはこの囲まれた状況からどうやって戦うのか、興味が湧いてくる。
他のエルフ達も弓や剣を構えつつも、グレンの行動を遮らないように、ジリジリと皆が背中合わせになるように中心に集まる。
「人の姿で力を使うのは初めてだけど、オマエらにはちょうど良いハンデだろ」
フフンと鼻で笑うと、両手を天へと向ける
するとグレンを手を中心に直径1m程の赤い魔法陣が現れた。
こっ…コレは!!
魔法の使えるファンタジーな世界の王道!!!
この世界に来てから初めて魔法陣を見たわ!!
食いいるようにその魔法陣を見てしまうがしかし、エンテイと戦っていた時は魔法陣なんて出なかった。
何か理由があるのだろうか?
「一瞬で終わりにしてやる獣ども」
そうグレンが言い放った瞬間、狼達の足元にも同じ魔法陣が現れたと思ったら、一瞬で1本の青い槍が地面から突き出し、狼の顎から頭を貫き
全ての狼がドサリと地面に倒れた。
あっけに取られていると、何やら焦げ付いた匂いが鼻をつく、もしかしなくてもあの槍は青い炎を凝集したもの?
えっ、グレン君メッチャ強のでは…?
「タキナ様!終わりました!如何ですか僕の魔法?」
さっきまでキリッとした凛々しい感じのグレンだったのに、見間違えでしたかね?
リリーちゃんの様に褒めてモード全開
可愛いやつめ!!!!!
あまりに、あっさり勝負がついてしまい
あっけに取られているエルフ達を尻目に
「グレン!凄いじゃないですか!
人の姿でもグレンは十分強いんですね!」
そう言ってグレンの頭をグリグリ撫でると、えへへっと嬉しそうに笑う。
可愛いやつめ!!!
私もグレンに釣られて嬉しくなってしまう
しかし、グレンを殺さん勢いで睨みつけているリリーちゃんの気配を察知したので、程々にしておこう。
「てっきり、ドラゴンの姿で戦われるものだとばかり思っておりました…
人の姿でもドラゴンはやはり強いのですね…」
あまりに一瞬の出来事で、他のエルフがあっけに取られている中、ライハが動揺を隠せない様子でグレンを見る。
エルフ達が怯えていた魔獣を一瞬で倒したのだ。
これは、エルフ達の警戒心を高めてしまう逆効果だったのではなかろうかと、ドヤ顔をしているグレンを見る
「タキナ様と旅をするなら、人の姿のままでも力を使えるようにならないと不便だからな」
違うよグレン君、褒められているんだけど、違うんだよグレン君!
怖がられてるの!
「グレン君はやっぱり強いのねぇー
旅の間は私が1番最弱になっちゃいそぉー」
ロメーヌがのほほーんとした話し方をしつつも、仕留めた狼が息絶えているか確認している。
思うに、ロメーヌはあんなマイペースな感じだが割と隙がない様に思う。
感心していると
「「はぁ?」」
ロメーヌの言葉にリリーちゃんとグレンがハモリ、そして私の方を振り返る。
そんな2人の瞳は怒った獣のソレ、落ち着こう!少年少女達!
話せば分かる!!
まだ連れて行くとは言ってないだろ!!
ロメーーーーーーーヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!




