12−1.酒盛り
辺りはすっかり陽も落ち薪がパチパチと弾ける音が洞窟に響く、外から時折吹き込む夜風が少々肌寒いが、薪の向こう側は何と暑苦しいことか…
「ガハハハハハハッ!!!ここまでコテンパンにやられると逆に潔いわ!!!ガハハハハハハ!!
人の姿で酒を飲むなぞ何百年ぶりだ?
なぁ?オウカ?」
エンテイとザイアスの治療が終わり、ゆっくりと話をするにもデカい図体が雁首揃えていると話しにくいので、人型になってもらったわけなのだが、図らずもロメーヌの言う通りになってしまい
解せぬ…
そして、人型になったドラゴンはこれまたロメーヌの予想通り美男子揃い
げっ…解せぬ…
エンテイは筋肉質でガタイが良く、金の瞳のシルバーグレイのイケおじ…
グレンの父親のオウカもグレンと同じ真っ赤な髪に親子なだけあって、顔立ちも似ているが目元が涼やかなイケメンで、ガタイはエンテイほどでは無いが細マッチョ系である。
違う意味でロメーヌ連れてこなくて良かったわ…斜め後ろには仏頂面の赤紫色の髪をしたザイアス、見た目的には二十歳くらいだろうか、意外と若かったのね。
絵に描いたような体育会系のガタイの良いイケメンのザイアス、その他にもエンテイと同じくらいの年齢のバーカウンターに、ブランデーが似合いそうなイケおじ2人に、オウカよりも一回りほど年上の二枚目な感じのイケメンが1人
そう、みんなイケメン!!!
何なんだ…ドラゴンは顔面偏差値が高過ぎないか?
そう言えば、私はこの世界に来てから一度も鏡を見ていない…川で顔を洗う時に見る水面に映る自分の顔をみたくらいか、若干若返っている気がするが、顔のパーツは、まぁ…変わってない。
どうせならリリーちゃんくらいの美少女にして欲しかったものだ。
ドラゴンの里には人が生活できるようなスペースがあるわけではない。
故に、火口に繋がる横穴で火を起こして地べたに座り、ドラゴンの里のお偉いさん方と酒を酌み交わしている。
ちなみに酒はリリーちゃんにお願いした。
コイツらに飲ませるんですかぁ?
と、ものすんごく嫌そうな顔をしながらも、日本酒とツマミに漬物数種類、乾燥ホタテにスルメも出してくれた。
何だかんだ言いつつ押さえてるなリリーちゃん
「私は父上と人の姿で酒を飲んだ事はありませんよ」
バシバシと背中を叩かれながら、酒がこぼれないよう瞬時に地面にお猪口を置くオウカ
「そうだったかー?ガハハハハ!!
いやぁー、この酒は日本酒と言ったか?
実に美味い!!このスルメ?とやら、噛めば噛むほど味が滲み出て美味いではないか!日本酒とよく合う!」
そう言うと一気にグラスに残っていた日本酒を飲み干す。
流石ドラゴン、酒に強いな…お猪口が小いと駄々をこねたのでエンテイだけグラスである。
「私の世界の酒とつまみ、お気に召した様で何よりですよエンテイ」
私も、お猪口の日本酒に口をつける。
かぁーーー!!久しぶりの酒うんまぁー!!と、声に出そうなのを押さえつつ平静を装う。
私の横を見れば、いつも以上に私にベッタリなリリーちゃんにキュン死させらそうになりつつ、その顔をよく見れば私の横でジト目をしてドラゴン達を眺めつつリンゴジュースを啜っている。
お願いだからドラゴン達を狩らないでくださいね…反対側を見れば、グレンが私の横で同じくリンゴジュースをチビチビ飲んでおり、ドラゴン達側には行きたくないらしい。
オウカのグレンへの対応を見ればそれも納得、とても我が子への対応とは思えない辛辣すぎる対応…
なかなかに、根深そうな問題だ
「それにしても、タキナ様は戦闘中は話し方と言い随分と雰囲気が変わりますなー
このエンテイ、高みからタキナ様に見下された時は死を覚悟しましたぞ!ガハハハハハ!!」
その言葉に思わず酒を吹き出しそうになるが、何とか堪える
いやぁー!そうなんですよー!
神の力使うと私の内面が引っ張り出されて、残虐性丸出しの戦闘狂のハイテンションぶっ壊れ女になっちゃうんですよ!
アハハハー!
なんて言えないので
「お恥ずかしいことに、戦闘になるとついつい気が大きくなってしまいまして、あの様なことに…ハハッ…」
乾いた笑いで誤魔化す。
いや、誤魔化されてくれ!
参った参ったーと言わんばかりに頭を掻く
「分かりますぞ!!!戦闘はたぎりますからなーガハハハ!!タキナ様とは是非また戦いたい!
次こそは攻撃の一つも当てたい所!
いやぁ〜、自分より強者がいると言うのは実に良い!
ワシもまだまだ強くならねばな!ザイアス!明日からより一層、手合わせに力を入れるぞ!!」
エンテイが振り返ってザイアスを見やると、仏頂面が一転すごく嬉しそうな顔になる。
ザイアスのエンテイへの憧れ値はとんでも無く高い様だ。
尻尾があったらブンブン振っているに違いない。
それくらいキラキラした瞳でエンテイを見ている
「ハイ!エンテイ様!!このザイアスはエンテイ様のように強くなれるよう喜んでお相手いたします!」
そう言いながら嬉しそうにエンテイにお酌をするザイアス
「グレン!お前もタキナ様の横で縮こまっていないで、明日からお前も手合わせするぞ!
いくら弱くても毎日戦っていれば少しは強くなれるだろ!」
グラスを持つ手をグレンに向けて、中身をバシャリとこぼしながらグレンに怒鳴る。
エンテイに急に話しかけられたグレンは、ビクリと肩を揺らすと直ぐに俯き小さな返事を返す。
「だぁぁー!声が小さいぞグレン!!」
さらに怒鳴るエンテイから隠れるように、私の背後に隠れるグレン
この里に来てからグレンは萎縮しっぱなしだ。
ここが家とは…確かにこの年齢であんな平原まで出掛けたくなるのも頷ける
体育界系過ぎるのは考えものだが、ドラゴンの慣わしにおいそれと口出しをして良いものか…
聞いてるのかグレン!と騒ぐエンテイを、オウカが煩いですよ父上と諌めている。
背後を振り返れば涙ぐんでいるグレンと目が合う。
グレンを安心させたくて微笑めば、私の背中にオデコをつけて啜り泣くグレン
くっ…グレンよ可愛ことするじゃないですか、私の母性がくすぐられますよ!!
そんな事を思っていたら、リリーちゃんの持つガラスのコップがビシッとヒビの入る音を立てた。




