11−1. 最強と最恐
一度言ってみたかった口上を遮ったのは、何処のどいつですか?と、空を見上げれば
「何事だ!!!!!喧嘩か!?何を騒いでおる!!」
物凄い怒声を帯びた声と共に、どのドラゴンよりもガタイの良い年季の入った赤黒いドラゴンと
「喧嘩に加わらないでくださいよ父上」
年季の入ったドラゴンと同じくらいの大きさだが、グレンと同じ真紅の鱗を持つドラゴンが空から高度を下げてくる。
周りのドラゴンが慌てて頭を垂れる所を見るに、この2頭がグレンの祖父と父だろう。
ドラゴンの翼の風圧で辺りの小石が飛び散り、それを手で避けながら降り立つドラゴンを見上げる。
「ザイアス!?何だその様は!何があったのだ!答えよ!!」
捲し立てるように話すエンテイ、本当にお爺ちゃんですか?ってくらい威勢が良い
「あの人間にっ…ゴホッ…」
吐血しながらバツが悪そうにこちらを見るザイアス、内臓やってしまったかもしれない。
そんなつもりはなかったんですけどね…グレンは私とエンテイを交互に見てアワアワしている
「お祖父様!あのっ!「黙っていろグレン」」
グレンの声を父親が遮り、それを聞いて口を黙、萎縮するグレン
我が子に向かってよくもまぁ、そんな冷たい目で見れるものだ。
力が全てかっ…それが我が子であろうと…いや、我が子だからこそなのだろうか
ギロリとこちらを向くエンテイと、その息子である現在の長、この2頭とザイアスとの力の差はいかほどか…
「ほぉ…黒い毛に黒い瞳…小娘…そなた人間ではないな」
直ぐにわかるとは流石だドラゴン最強、グレンの祖父から見れば私も小娘な年齢なんですかね?
こんな時だけど若く見られて嬉しいです!ありがとうございます!!!
ドラゴンの眼光に睨みつけられながらも心の中で感謝を述べる。
「私はこの世界唯一の神、名はタキナと申します。
滅びに向かうこの世界を救済すべく参りました
以後お見知り置きをドラゴンの強者よ」
そう笑顔で言いつつ、私もエンテイへの牽制としてその瞳を睨みつける
顔は笑ってるが目は笑っていない。
「フハハ!ワシを恐れぬとは良い目だ!だが、神だと?種族の名か?
長く生きているが聞いたことがないな、まぁ、そんな事はどうでも良い!
我が弟子の中でも1、2を争うザイアスを叩きのめすとは良い腕だ。ここに来たのには何か理由があるのだろう?
話を聞いてやる…まぁ、ワシを倒せたらだがな」
あっ、話あっさり聞いてくれ…ないんかーい!
と、心の中で1人ツッコミを入れつつ
まぁ、予想通りの展開
「オウカ、ワシが殺されたとしてもあの小娘の話を聞いてやれ、良いな」
そう言われてオウカと呼ばれたグレンの父は目を見開く
「それほどですか…」
エンテイが些か不機嫌気に長い尾を一振りして、オウカに視線を移すとため息をつく、迫力あるドラゴンの王という感じから途端に親の顔になるエンテイ
「見てわからんとはお前もまだまだだな、戦いを避けてばかりおるからそうなるのだ。
お前は力の持ち腐れだまったく、まぁ、安心せい
簡単にやられるつもりは無いからな」
そう言って興奮したように前足で地面をひとかきすると、再度私を見据える。
ザイアスからの、間髪入れずにドラゴン最強のエンテイと戦闘となってしまうとは、なんたる事か…
先ほどのザイアスは、私に対して油断していたから不意打ちで近接戦を挑んだが、流石は最強、驕らないようだ。
しかし、ここまで構えられると戦闘慣れしてない私は不利では?
それにドラゴンは魔石持ち、魔法攻撃もある訳で…はてさてどうしたものか?と、悩む間もなく
「行くぞ小娘!」
周りのドラゴンが慌てて距離を取り、エンテイが私に向かって突撃してくる。
ぬえぇぇぇぇぇ!?いきなり!?しかも、突貫ですかぁぁぁぁ!?
ドスンドスンと地響きをさせながら迫ってくる。
その巨体で何故そんなに早く走れるのか!?
内心焦るが、突進をガードできる自信もないし、シールド破られて私が吹っ飛ばされるのが関の山
なればと私も先ほど同様、身体強化をしてエンテイに向かって走り出す。
すると、エンテイがニヤリと笑い走りながら赤い炎を吐き出す。
口を開く動作と同時にシールドを展開するも、あっという間に熱風に襲われ視界が赤に染まる。
炎をまともに食らったわけではないのにこの熱さ、強化していなかったら火傷じゃ済まないところだ。
その炎に乗じてシールドを地面に残し思い切り跳躍するが、流石はドラゴン動体視力が半端ない。
直ぐに視線が私を追うが、それよりも早く体を捻りエンテイの脳天目掛けて踵落としを入れる。
ガンッ!という無機質な音と共に透明な分厚い板に阻まれる。
ドラゴンもシールド使えるのか…
一撃で決めれなかった…
どうしよう…
でも、しかし、楽しい…
何時ものようにドス黒い感情が高揚感と共に湧き上がり始め、自分の口角が上がるのがわかる。
シールド越しにエンテイと目が合うと、エンテイの瞳孔が縦に細くなる。
その瞬間、私の周りに短刀程の氷の刃が囲む、炎を扱うドラゴンが氷とは厄介なっ…
けれど…ハハッ…最高っ!!!!
エンテイのシールドを足場に背後へ思い切り飛ぶ、私のいた場所に氷の刃が飛び、刃同士がぶつかり砕け散る。
遅い…こんな物か…と思いながら地面に着地すると同時に横から不意に、氷の槍が顔をめがけて飛んでくる
がっ、強化した素手でその氷の槍を掴むと握力に物を言わせてその氷を砕けば、エンテイの顔が悔しげに歪んだ。
ドラゴンの戦闘はそのガタイと魔力に物を言わせて、脳筋的な戦闘をしてくると思っていた。
だが実際はどうだ…実に小賢しい…まるで人のような細かい戦い方をするじゃないか
いい、すごくイイ!!
今までは、あっという間にケリが付いてしまう戦いばかり、それも戦闘とは言えない一方的な蹂躙だった。
けれどこの戦いは違う!さすがは世界最強のドラゴン!
最高だ!!私が求めてた戦闘とはこう言うものだ!
「フッ…アハハハッ!!楽しいじゃないか!!!
流石はドラゴン最強、侮っていたのは私の方だったようだ。
まだ本気ではないのだろエンテイ?
世界最強のドラゴン!!
さぁ、さぁー!!全力でかかって来い!
もっと私と殺し合おうじゃないか!!そして私を殺して見せろ!!」
両手を広げ、エンテイに向かって来いと煽る。
そう、まだだ!まだまだ足りない!!!
命の削り合いと言うにはまだ遠い!
エンテイはこちらを歯噛みした様子で見ている。
そっちが来ないならと、今度は私が氷の槍を自分の頭上にズラリと作り出し、右手を振れば氷の槍は勢いよくエンテイに向かって飛んでいくが、さて…奴のシールドの強度はいかほどか?
ニヤリと笑ってそれを眺める。
シールドに当たった槍は弾かれる事なく、そのシールドに刺さる。
貫通はしないか…フフッ…更に槍を作り出す。
「さぁ、今度は防げるかな?」
ニヤリと笑って、先程より槍の強度と威力を上げて放てばシールドを貫通したものの、吐き出された炎のブレスが貫通したその槍を溶かした。
炎の色が先ほどは赤だったのに今は青い
どうやらドラゴンは炎の温度調節もできるらしい
なんとまぁ、器用な事だ
やはり温存していたか、だが正面ばかりに気を取られているのはよろしくないぞエンテイ、ニヤリと笑いエンテイの足元から黒い鎖を静かに伸ばす。
しかし、一瞬で察知したエンテイは翼を打って上空へと舞い上がる
「アハハハハッ!!」
両手で自分の体を抱き込む…楽しい、湧き上がる黒い感情に呑まれていく、抗いたいのか抗いたくないのか自分でもわからない。
そう
今の私は
ただただ
殺し合い、全てを潰したい!!




