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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美
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1−2.よくある異世界転生



 ゆらゆらと意識が揺れるような不思議な感覚、何だろう夢に微睡むような…


「さぁ、起きてください」


 遠く…いや、そう遠くもない場所から声が聞こえる。


 私はいつの間に寝てしまったのだろうか、重たい瞼を開けて体を起こそうと手をつけば床のような感触


んっ?


私は確か…横断歩道の前で…


そこで頭がハッキリと覚醒する。


 そうだ!トラックに突っ込まれて!!?

慌てて周りを見渡すが歩道でもなければ病院でもない。

 

 どこまでも続く薄暗い場所、よく見れば白く光る数多の粒…そう…例えるなら宇宙にいるかのような…


「私って死んだの?」


 そう呟いた独り言に、優しい声が答える。


「そうです。

貴方の人生は終わりを迎えました。

ですが、あなたが死者の国へ行く前にここへ招いたのです。

あぁ、もちろん貴方の国の死者の番人には話を通してありますからご安心ください」


 そう言って微笑みを浮かべる真っ白なローブに包まれた人物、優しい声だが男とも女とも言えない中性的な声だ。


「えぇ…っと、貴方は神様ですか?私は何故ここに呼ばれたんでしょうか?」


 そう問いかけると白いローブの人物は、私と目線を合わせるようにしゃがみ込む

顔が鼻までフードで隠れているため顔が見えないが、口元でなんとか感情を読み取ろうとする。


「私は神では有りませんが似た様なもの?でしょうか?

あなた方の世界の神の定義に私が当てはまるのかは分かりませんが、強いていうなら創造主の召使というところでしょうか?

あっ、でもそれもやっぱり神ってこと?」


 質問を質問で返さないでほしいし、何よりもそんな次元の話が私にわかるわけがない…


「まぁ、そんな事は置いといて!

貴方をここに招いた理由ですが、それは貴方にお願いした事があるからです。

貴方の世界、というか日本で流行っている異世界転生ってやつです」


 微笑みを湛えたまま創造主の召使(神様?)が日本のサブカルをご存知とは、いやまて、異世界転生と仰しゃいましたか?

私もアニメとか見る方ですけれども、あれはファンタジーですよね????


「異世界転生!?ますます何故私なんでしょうか?確かに人助けして死んだ後に異世界転生的なのは王道ですけども、異世界転生!?

しかもさっきお願いしたいことって仰しゃいましたよね!?

勇者になれとかですか!?無理無理!!このまま安らかに眠らせてください」


 そう言って仰向けに横たわって手を組んで目を瞑る


「まってまってまって!!潔く死を受け入れるな若者!!ちゃんと説明するから現実逃避しないで!」


 慌てる創造主の召使(神様)めんどくさい、以降は「自称召使」は慌てて、私の肩を掴んで上半身を無理やり起こした。


本当は起きたくない。

むしろ夢であって欲しい。

事故ったことも何もかも…。


 安らかに逝かせてくれそうもないので、取り敢えず話だけは聞く事にしようと自称召使の顔を見上げる。


「私は貴方の行いを見てきました。

 細やかではありましたが、いつだって貴方は誰かに手を差し伸べてきた。

そして最後は文字通り自己を犠牲にしてまで他者を救った。

それは、簡単にできることでは有りません。

貴方の生き方は我々の理想とする人の生き方です。

 人は理性を持ち、そして考え、他者を思いやり、己の利益では無く誰かの為に生きる事のできる生物、しかしながら、どういう訳か貴方の世界のみならず他の世界の人々も、己の利益のみを追求し、弱き者を食い物にする。

人に似せて創造した者達も似た様な者ばかり、貴方の様な人がいない訳じゃない。

 ですが圧倒的に少ない。

正直言って私たちは絶望しているのです。

 そ・こ・で・私達は考えました。

 善良な心を持った者に大いなる力を与えて他の者を導かせようと!

そこで、白羽の矢が立ったのが貴方です!

善良なる心の持ち主である貴方には、ある世界に行って世界再生を行なって頂きたいのです。

もちろん、そのままでとは言いません、異世界転生の話でもあるでしょ?ちゃんと転生特典として魔法とか色々つけちゃいます!」


 さぁーどーだ!

とババーンと両手を広げる自称召使い


 はぁ?それって勇者よりも難易度高く有りませんか?世界再生?それは神様のお仕事なのでは?


 最早、何言ってんだこいつ?状態、こんな話を聞かされて誰が「はい!分かりました!私、頑張って世界再生しちゃいます!」って、言うとお思いで!?


 どんな善良な心を持ち合わせた人間でも、お断りする内容だと思いますが?

無理だ無理ゲーだ。


「それって私じゃなくて神様のお仕事だと思うのですが」


死んだ魚の目をしているであろう私が投げやりに答えると


「そうです。貴方にはあなたの世界で言うところの神様になって頂きたいのです」


「はぁ?」


 神様になって頂く?カミサマニナッテイタダク?そんなとんでもない話し有り得ますか?ちょっと脳みそが限界です。

 さっきまで良くある異世界転生的な軽い感じだったのに、勇者になれとか、良い行いをしたから新しい人生あげますね。


 とかじゃなく神!?


まてまてまて!神様いるけど地球は戦争や搾取が起きてるよ?

えぇ…なんか矛盾が…なぜ??


「貴方に行って頂く世界には神という概念がないのです。

 英雄などは存在しますが宗教的な信仰対象はありません、その世界には人智を越える存在がいないので貴方には人の域を超えた力で持って、その世界を変えていってほしいのです。

 その世界は人を含めた生き物の負の感情が高まると、魔獣が活性化し増えて行きます。

 その様なシステムにしたのはその原理に気づいて、負の感情が高まらないようにどの種族も手を取り合って仲良く生きましょうね!って事だったのですが、魔獣が増えようがお構いなし!

 むしろ殺気だって戦争したり負けた国の国民を奴隷にしたり、他種族への差別意識や裏切りやらで負の感情は増える一方なんです。

 そんな世界にも唯一神ができて、まっとうな考えの持った神が実際に人々に関わって行けば、人々の意識も変わるのではないかと思いまして!いわば実験みたいなものですね。」

 

 ニコニコととんでもないスケールの話をしてくれる。

 神様になって世界再生?設定モリモリですねー


「失敗して世界滅亡しちゃったら私はどうなるんですか?」


 深いため息をついて問うと


「失敗ですか?そうですね…その時は貴方のご意向を伺いましょう

我々と同じ側に来たいというなら受け入れますし、先ほどのように安らかに逝かせてほしいのなら、死者の国に送り届けます。

 新たな人生が欲しいと言うのならそれも可能です。

別の世界の人間としてになっちゃいますけど、我々の実験を手伝ってくれるのですから最大限、貴方の願いを叶えましょう。」


「因みにこの実験の手伝いを断った場合は…?」


「善良で賢い貴方はそんな事をしないと願います。

私とて善行を積んできた人を脅したくはありません」


 人と言うのは云々言っといて自称召使も大概人間臭いのでは??大して頭も良くないカリスマ性もない一介の人間が神??かと言って、断れば安らかに逝かせてくれそうにもない。

 

 何故死んだ後も、こんな貧乏籤を引いたような思いをしなければならないのか?

そもそも、自己肯定感マイナスの私を崇めてくれる人がいるとは思えないし、私は自称召使が言うほど善良でもない。

むしろ歪んだ性根の持ち主だ。

 なのに…ホント私って…盛大なため息とともに


「分かりました…ですが私1人では到底無理です。

 何から始めれば良いか開目検討も付きませんし、戦争とかしている世界に腕に覚えのない私じゃ即死にます。

誰かサポートをしてくださる方が必要です。」


 そう言った瞬間に両手を取られて、ありがとう!ありがとう!そう言ってブンブン腕を振られる。


腕がもげる!!


「先ほども言ったように異世界転生特典を盛り盛りでつけちゃいます!

魔法、武術、体術などの全てを人間が神と呼ぶレベルに!

何せ貴方には神になって頂くんですからね!

もちろんサポート役も用意していますよ!

大抵の事は何でも知ってますし、貴方の身も守れる能力の持ち主です。

さぁ、おいで!」


 そう言って自称召使が片腕を掲げると、何処からともなく白銀の梟がその腕に舞い降りた。

まって…サポート役は人型じゃなく梟!?


「この子が貴方のサポート役です。

まぁ、あとは説明するより実地あるのみ!貴方の思うままに進めてください。

 ひとまずは負の感情を減らして魔獣を沈静化させる。

そのくらいになったらまたお会いしましょう!

ではでは!行ってらっしゃい!」


 満面の笑顔で手を振る自称召使


「えぇ!?承諾からの展開早い!それと成功条件アバウトすぎません!?

しかも、そのセリフ!夢の国のキャスト的なぁぁぁぁぁぁ」


 足元の床がふっと消え、私の叫び声と共に真っ逆さまに落ちて行き、本日2度目のブラックアウト





「さぁ、壮大な実験の始まりです。

人の行く末を決めるのは貴方次第、私は期待しているのです人の可能性に…」



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