116.会議再開
皆の視線が痛い(二度目)、そりゃそうなりますよね…。
会議室に戻ってきたら、リリーちゃんが泣きはらした顔で戻ってきたんですから…私が泣かせたって思いますよね…。
思うよねぇぇぇ!!!違うんですぅぅぅぅぅぅ!!!いや、正確に言うと違くはないんですけどぉぉぉぉ!!!あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!と、心の中で頭を抱えて絶叫しながらも、何事もなかったような顔をしてリリーちゃんと共に席に着くと、皆が伺うようにチラチラとこちらを見ている。
「あぁー、えぇー、タキナ様も戻られたようなので会議を再開します…」
見る見るな!!!!何事もないように会議を進めなさいよぉ!!!と、内心で絶叫しつつ、ロウレスに笑顔を向ければ、ビクリと肩を揺らしたロウレスが咳払いをして前を見据える。
「それでは、先ほどの食糧の問題についてだが、直近の食糧は買い付けを行う方向で行きたいと思う。
金については貴族の方々の助力と、他国への借金をしてと言う形にはなるだろうが…。
やはり水源の確保と水路、その整備を行ってからではないと作物を育てることもままならない。
ハイランジアになんとか助力を請えないかと考えておりまして…」
再び、ロウレスの視線がこちらを向く。
なるほど…
「もちろん、私の方からハイランジアに口利きはしますが…人材派遣、土木工事費などお金はかなりかさむのでは?整備するまでの期間もそうですが、作物が育つまでにも時間がかかる。
うまくいくとも限らない。それまで食糧を買い続けるのは可能なのですか?」
ロウレスにそう問えば、隣に座っていたガレストが息交じりの声を出す。
「ご指摘の通り、先立つものがないのは事実…。
助力してくれる国があるはずもなく、我らは魔獣を狩ってでもなんとかしのぐほかないのです。
てっきり私めはハイランジアの王がタキナ様を寄こしたのは、この国をハイランジアの一部とするためと思っておりましたが…。どうやらその気はない様子…。先ほど、タキナ様の従者の娘が語った通り恥ずかしながらタキナ様のご威光を借り、なんとかやり過ごしていく他ないと考えておりました。
この場を借りて、お詫びいたします。」
その様子を見ていたロウレスや騎士たちは頭を下げるが、先ほど暴言を吐いた商人や一部の貴族たちは舌打ちデモしそうな勢いの顔つきだ。
やれやれ…なかなかすぐには一枚岩にはなれないという事か、オリエンテのようなカリスマ性のある人間がサージにいればよいのだろうが、今のところ抜きんでている者は見かけない。当面は民主主義性を取っていくしかないだろうな…。と考える。
「謝罪の必要はありませんので頭を上げてください。
あなた方の国なので、あなた方主体で進めてくださいとお伝えしていましたが、全く今後手を出さないつもりではありませんでしたし、できる限りの事はお手伝いします。」
そう伝えれば、ガレストが寛大なお言葉に感謝いたします。と、深々と頭を下げた。その様子を見て、頭を下げていなかった貴族の一部が驚いた様子を見せる。がしかし、その並びに座っていた商人のオグストがダンッ!とテーブルを叩く
「貴族がそうやすやすと頭を下げるのはいかがなものか!この小娘は家臣に戦わせただけで、本人は何もしていないではないか!何故皆はそうもへりくだるのか!!」
またこいつかー、と思って冷めた目で見ていると近くに居た初老の騎士が「それくらいにしておけ…命が惜しくば…」と怯えた様子で商人に声をかけている。よく見れば、サージに来た時に私が締めた騎士だ。フクザツナキモチ…と思いながら眺めていると、中庭の方が急に騒がしくなり悲鳴も聞こえる。
今度は一体なんだ…。思わず心の中でため息を吐いた。