8−1.帰宅準備
この世界は深き闇より作られた
闇は黒、黒は闇
闇から生まれ、命ある者いずれは闇へと還る。
この世界の根源を表す色、どの種族にも黒い毛を持つ者はいない。
魔物ですらも…
タキナの黒髪をチラリと見て、幼い双子の弟達へとすぐに視線を戻す。
闇から生まれたと言う話は、信仰と言うほどではないがこの世界の言い伝えだ。
昔、ドラゴノイドの里に訪れた薬師の人間も似たような話をしていた。
エルフの里にも世界は闇から生まれたと伝えられていると聞く…どの種族にも似た様な話が伝わっているのだろう
人間の間では王族しか黒い衣装は身につけられないそうだ。
エルフもドラゴノイドも、祭りごとの際にしか黒の布を使用しない。
それほど黒は特別な意味を持つ
だと言うのに…突然現れた少女の髪と瞳は黒く、この世界唯一無二の神だという。
この世界を産みだしたのがこの少女?もしくは、同じ神だとでも言うのだろうか?彼女の僕は、神とは見返りを求めず世界を、私達を救ってくださると言う。
神という存在の理解がまだ足りない。
だけれど何故だろう…そばに居るだけで縋って泣きたくなるこの気持ちは…
一体何なのだろうか
荷馬車の準備ができるまで辺りを警戒する。
タキナ様はゆっくりしていて下さいと言われたが、どうにも落ち着かず元が小心者のモブなもので仕方ない。
前回の御涙頂戴の大円団も束の間、現実はまだまだ続くよどこまでも!
ゆっくり彼等と話をしたかったのだが、早く里に帰りたいと不安がっていたので、それもそうだよね…と、彼等を家に帰すのを最優先とする事にした。
荷馬車の車輪の調子が悪いとかで修理に時間を要するらしいが、リリーちゃん指導の元エルフの男達により修理が行われている。
リリーちゃんの何でも知っている。は、こんな所までも網羅していたとは…
その間にロメーヌが飼っている鷹に似た鳥を呼び寄せて、連れ去られた皆が無事であることを手紙で知らせてくれた。
ドラゴノイドの里にも伝えるよう書き添えたとの事なので、私が人攫いと思われずにすみそうだ。
「ドラゴンになってー!」
「ぼくも見たい!!」
あんなに命がけの逃走劇をしていたにも関わらず、殺されかけたドラゴンにまとわりつく子供達、メンタル強いな子供達よ!!
PTSDとか言うのになるんじゃないかと心配していたけど、そんな気配が微塵もない。
さすが魔獣が当たり前にいる世界、異世界の子供強い…
この後の行動計画として、私とリリーちゃんはグレンの住むドラゴンの里へ向かうつもりだが、ドラゴノイドとエルフが住むのはその途中の森だと言うので、護衛も兼ねて途中まで一緒に行くことにした。
移動しながらなら今度こそ話も聞けるだろう
「ふざけるな!まとわりつくなガキども!」
「じゃぁーおんぶしてー」
「じゃぁーってなんだよ!!このガキー!待てこらー!!」
そう言ってグレンが子供を追いかけ回すが、その顔は年相応でとても楽しそうだ。
何やら吹っ切れている感すらある。
追いかけられてる子供達も、キャーキャー言いながら荷馬車の周りを走り回る。
「こら走り回らないの!」
アレイナお姉さんがまるで保育士さんだ。
束の間の平和ってやつかな…自分で言っといて不穏だが…
そんな姿を眺めているとふと隣に立つロメーヌの視線が私に刺さる。
綺麗&セクシィ〜なお姉さんに見つめられたら、女の私でも気恥ずかしい。
「どうかされましたか?」
引き攣りそうな顔を何とか堪えてロメーヌに笑顔を向けた。




