7−3. 和解
っと、そうだった大事な事を忘れていた。
「グレン、皆さんに誠心誠意ちゃんと謝罪をして下さいね。
謝って済む問題ではないですが、誠意は大切ですよ。」
クッキーの食べカスを口に付けたグレンに微笑むと、ビクッと石のように一瞬で固まるグレン
ギギギっと首をこちらに向けながらも視線は泳ぎまくりだ。
「本当に言うんですか…僕…ドラゴンですけど…」
ドラゴンのプライドと言うやつだろうか、確かに自分より格下に謝罪をするのは彼にとってさぞや屈辱的だろうが、正直言って私から見ればグレンが謝罪したところで力関係は変わりようがないほど歴然だ。
まだ子供のグレンに対してドラゴノイドもエルフも手も足も出ないのだから、まぁ確かに…彼のプライドは傷ついてしまうが、立ち位置は変わらないと言うのは間違いないだろう。
しかし、彼等を遊びに付き合わせて殺しかけているのだから、謝罪をしたところで罪を消せるわけではないが、あのドラゴンが謝罪した!
と言う事実があれば、少しは贖罪になるかもしれない。
「ドラゴンだろが何だろうがですよ」
再度にっこり微笑みかける。
周りはシン…と静まり返っている。
「でも格下の種「ヤレ」」
「ハイ!!」
最後は目を見開いて全力の圧をかけると、滑舌の良いハイが静まり返った森に響き渡る。
素直でよろしい。
隣のグレンがめちゃめちゃ嫌そうな顔をしており、グレンが薪ごしの彼らに向きなおると
「アソビデ コロソウトシテ ゴメンナサイ モウシマセン」
リリーちゃんに負けず劣らずな棒読み、そして、顔!!
謝罪する人の顔じゃない!!
何一つ心のこもらない謝罪だと言うのに皆は
「そんな…」
「あっ…あの気位の高いドラゴンが我らに謝罪を」
「本当にドラゴンなのか?」
動揺した様子でグレンをチラチラと見ながら話している。
分かっていたつもりではいたが、それほどの事なのか…
「こんな事、お祖父様に知られたら里を追い出される…」
両手で顔を覆い隠し落ち込むグレン
えっ…
そんな大事なのー!?
バカもんが!くらいの雷で済まないの!?
グレンにとってプライドが邪魔する程度かと思いきや、そう言うレベルだったの?
私はもしや、グレンにとんでもない仕打ちをしてしまったかもしれない…。
ドラゴンのプライド高すぎるでしょ!!!!
くっ…こうなったらドラゴンの長も引きづり落として謝罪でもさせるか…そうしたらグレンのこと言えなくなるよね…いや…だがその前に勝てるか!?
どっちにしろ、グレンのことを考えれば行くしかないのかドラゴンの里に…
何だって、最初の村にもたどり着けない冒険者がいきなり世界最強種のドラゴンの里に行かなきゃならないのか、まぁ、私のせいなんですけども!!
どうしよう…グレンには勝てたけど神様Lv .10くらいなのに
ドラゴンLv .999に挑む様なものでしょ!?
意気揚々と私は神です!
ドラゴンよ!さぁ、話し合いましょう!
からの、炎のひと吹きで消し炭にはなりたくない…
いや、いっそのこと、灰にされて私の神様生ゲームオーバーにされた方が良いのではないか!?
あぁー、でも自称召使ならコンティニュー可能そうで怖い!
はぁ…
私はこの世界に来てからため息が増えた気がする。
人の身だったら今頃、胃に穴が空いて吐血してたに違いない。
とっ…取り敢えずはグレンが里追放の危機という犠牲を払ってしまったのだ。
和解くらいは成功させなければ、今だにざわついているエルフ達を見据える。
「エルフやドラゴノイドの皆さんはグレンの謝罪を受け取って下さいますか?
大変辛い経験をされたのに、その謝罪を受け入れるということは自分達のされた事を呑み込み、耐え、相手に許しを与える事に他なりません。
ですが、グレンは誇り高きドラゴンというプライドを捨てて己の罪を認め、あなた方に謝罪の言葉を述べました。
どうか、贖罪としてそれも汲み取っていただけたらと思います。」
そう言って私も皆に頭を下げると、エルフの皆さんがまたも慌て始める。
アレイナが慌ててこちらに身を乗り出す。
「おっ、おやめ下さい我らに頭を下げるなど、この世界では力あるものが絶対です。
それはどの種族も変わらないと思います。
ですが貴方様は捨て置くこともできた我らを救うだけではなく、弟達の治療や温かい言葉までかけて下さいました。
その上ドラゴンから謝罪を受け、今後は手を出さないとまで仰られて…これ以上何を望みましょうか…我らには十分すぎるほどです。」
そう言ってポタリと涙をこぼしたアレイナに「姉様泣かないで」と言って弟達が心配するのを見て、ロメーヌがアレイナの涙を布で拭ってやっている。
「私もぉー、アレイナちゃんの話に全部同意ですぅー付け加えると美味しいお茶にぃ、お菓子までぇー
本当にぃありがとうございますぅー
神様のご慈悲ってこいうい事なのねぇー」
他のエルフの皆さんも同意見なようで何度も頷いている。
どういう事?
リリーちゃんを見るが、こちらの視線に気づいていないのか「そうであろう!」みないな感じでドヤっている。
まぁ、兎にも角にも被害者の方々にとっては十分過ぎる状態なのだと言うことは理解したけれど、この世界の弱肉強食っぷりが凄過ぎる。
負け犬根性というか何と言うか、力ある者に迫害されるのが当たり前と言う考えなようだ。
ドラゴノイドは人種の中でも強いはずなのに、相手がドラゴンとなれば納得はできなくとも、それを受け入れそう言うものだから、というのが窺い知れる。
元の世界の場合では金と権力に置き換えられるが、どこまでも似た様なものだ…。
「謝罪を受け入れてくれてありがとうございます。
貴方達の広い心に感謝いたします。」
彼等の謝罪の受け入れた理由を思うと笑顔にはなれない…けれど無理やり笑ったため少々曇った笑顔に見えてしまっただろうか
気持ちを切り替え、今度はグレンに顔を向ける
「グレン、誠意という面ではいささか欠けていましたが、己のプライドを曲げてまで罪を認め謝罪をすることのできる貴方は素晴らしいと思いますよ。
己の罪を認めるというのは大変に難しい事ですが、貴方は己の感情を御することのできるドラゴンです。
それは間違いなく今後、貴方の精神を大きく成長させるでしょう。」
そう言ってグレンの頭を撫でる
それっぽいこと言ってみたが
無理やり謝罪させたくせに偉そうに言いやがって!どうしてくれるんだよ!
とか言ってグレンに暴れられても致し方ないレベル…心の中では唇を噛み締めて正座しながら震えている私です。
こんな偉そうなこと言ってるけど、1番成長が必要なのは私です!!!スミマセン!!
「ひっく…うぅぅっ…」
ボロボロとグレンが涙を流し始める。
どどどどどどどどうして!?グレン!!?
「グレン!?どうしたのですか?そうですよね
こんなの気休めな言葉ですよね
辛いこととは思わず謝罪させてしまったことは本当にごめんなさいグレン」
流石の私も動揺が表に出てしまう。
何せ、命乞いしていた時とは違ってガチ泣きのグレン
「ヒグッ…違いますぅ…こんな風に誰かに認めてもらった事とか、ズビッ…褒めて頭撫ででもらった事とかないからぁぁぁ、だから…だから…うわぁぁぁーん」
そう言うと私のお腹に頭突きのように突っ込んできて、わんわん泣き始めるグレン
どうやらグレンはグレンで色々と抱えているようだ。
出会って数時間しか経っていないというのに、彼が胸の内を語ってくれるなら力になってあげたいと思うくらいには、歳の離れた弟のように愛着が沸いてしまっている。
ヨシヨシと困った顔でグレンの頭を撫でてやれば、背後からギリッと言う何処から発しましたか?リリーさん?
と、問いたくなるような音に聞こえないふりをして
「リリーちゃんも大活躍でしたから、あとでリリーちゃんにも沢山感謝させて下さいね」
ねっ??だから鎮まってと言う気持ちを込めて声をかけると
「そんな!タキナ様の1番!!の僕であるリリーは当然のことをしたまでです。
ですが、何もしてないそのクソトカゲだけが頭撫でてもらうのは癪なので、リリーの頭も撫でて下さい」
1番をめっちゃ強調しましたねリリーちゃん…
私の脇に回り込み正座をして頭をズズイっと差し出してくる。
地べたに正座は痛いでしょうよリリーちゃん、しかし脳天を突き出したまま待っているのでリリーちゃんの頭も撫でる。
何だこの可愛い生き物2人は、こんなに懐かれて私は幸せもんですよ
もうここでハッピーエンドで終わりませんか?
なんか、薪の向こう側の皆さんも涙ぐんでて今更ながら張り詰めていた糸が切れたのか、家に帰れる
家族に会える、命があってよかったって肩抱き合ってて大円団感ありますし
これにて完
とはならない。




