89.会議は踊る、されど進まず
「ロメーヌ……そのくらいにしておきましょう。
これはサージの問題です。この国の方々が決めたのなら、それに従いましょう。
それと……砲台の件は大丈夫ですから、むしろ今後のサンタナムの事を考えるのならば、私の力で対処できるのか、むしろそのその砲弾を一発くらってみたいものです。」
そう言ってアレイナとロメ―ヌに笑いかければ、アレイナの眉が下がりロメーヌも困り顔になる。
「タッ…タキナ様…またそのような事を…」
「はぁ……私としたことがぁー、タキナ様はその無謀さに見合うだけの実力がある事を忘れてたわぁー。
この国の住人じゃないのにちょっと口を出しすぎちゃったしぃー、私としたことがぁーん!」
「ふふっ、でも私の事を心配してくれてありがとうございました。
アレイナ、ロメーヌ」
「私も!!タキナ様を心配しておりました!!」
ルークスがバッと手をあげて、ド真面目な顔で前のめりになる。
「ほんとかなぁ~?」と、意地悪く言えば、ルークスが情けない声で「えぇ~信じて下さいぃ~」と言いながら耳が倒れている。
リリーちゃんは、ヤレヤレと言わんばかりの顔で前に向き直り、グレンは全く興味がないようで「臭い…早く出たい…」と、小さく愚痴っていた。
「ゴホンッ!タキナ様のお仲間は皆、タキナ様を信頼されているのですね。
とても良い仲間をお持ちのようだ。」
「タキナ様、あいつ偉そうです。タキナ様の方が偉いのに」
ロウレスの発言にグレンが眉を寄せて指を指す。その指を掴んで降ろしつつ、ロウレスに向き直る。
「失礼しました。私の方は異論ありません。
ですが…先ほどの危惧されていると言う国王陛下直属部隊について本当に皆さんで対処可能なのでしょうか?」
「正直、魔導部隊と鉢合わせした場合どこまで耐えきれるかわかりません。
我々には報告はありませんでしたが、噂ではサンタナムから購入した魔力強化の魔石を購入したと聞いてします。」
その言葉に、思い出されるのはオウカからの報告だ。サンタナムに雇われていた魔獣狩りの部隊は異様に強く、時折魔石のようなものを武器に付け替えていた。と…。おそらく魔石で武器が強化される物なのだろう、魔力版乾電池式武器みたいなものだ。と、サブカル国家出身者としてピンときた次第だが、また出たよサンタナム…。魔術ならアレイナとグレンにお願いしようと思ったが、以前アレイナはサンタナムのアイテムにより強化された人間との戦闘で負けている。そう考えると、アレイナでは危険すぎる。そしてグレンは子供だ…となると……。
「リリーちゃん、お願いがあります。」
「タキナ様のお願いであれば、すべてお受けいたします。」
「リリーちゃん、ちょっとは考えて…頭の良いリリーちゃんなら話の流れ的に、私のお願いはわかっているとは思いますが…」
「勿論です。その魔導士部隊の対応をリリーに頼みたいという事ですよね?
ぼんくらドラゴンコンビでは心配が残るのは当然の事です。
あぁ…神であるタキナ様を支えられるほどの者がリリーしかいないなんて、おいたわしやタキナ様…」よよよ、と言ってはいるが目は完全にグレンに向かって雑魚と言っている。
「おい!ドラゴンコンビって僕も入ってるのか!!?
弱いドラゴノイドなんかと一緒にするなクソチビ!!ドラゴンの方がすごく強いんだ!!」
「はん!弱い者いじめしか能のない雑魚ドラゴンが何を偉そうに、ドラゴノイドに毛が生えた強さしかないのでは?」
「なんだとぉー!!元の姿に戻れば、サンタ…ノム?の奴らなんか一瞬で灰も残らず消し飛ばしてやる!!」
「サンタナムだボンクラドラゴン!」
「やんのかぁー?」
「あ“ぁぁぁ??」
「こらこらこら!!!!
よそ様の会議室で喧嘩しないでください!!」
「ドラゴノイドだって強いんです…人種の中では強いはずなんです…うぅっ…ドラゴノイドも強い……うぅぅ…」
「泣かないでぇーアレイナちゃん、そんなこと言ったらエルフと獣人なんて虫みたいなものよねぇー」
「えっ!?僕ですか!?たっ…確かに…。神の種族であるタキナ様とドラゴンに比べたら、もう受け入れざるを得ないです。」
「神…族?ドラゴン!?」
「えっ…ドラゴン…」
「ドラゴンて言ったか?」
「あの子供、まさかドラゴンの子供だとでも!?」
「そう言えば、黒髪の女はドラゴンを従えてるって噂を聞いたが…」
「どうするロウレス、もうタキナ様御一行に全部丸投げしたほうが早いのではないか?」
「やめてくれトガレ…心が揺らいでるんだ…。」
そう言って、ロウレスは頭を抱え込むように呻きながら机に突っ伏したのだった。
諸事情により次回の更新は来年の2月となります。
申し訳ございません。
戻って参りますので、何卒来年もよろしくお願いいたします。
それでは皆様、良いお年を!