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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美
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68.白いサーベルウルフ2


 倒れた大木のせいで辺りに砂煙が舞う。

その煙を手で払いながら、ソウジュが頭から流れている血を片手で拭い「痛ってぇー」と、呟きながらもコチラに歩み寄る。


しっかりとした足取りを見るに、見た目ほどダメージが入っていないようだ。


「何がどうなってるソウジュ、手を抜き過ぎた結果だと思いたいんだが?」


勤めて冷静な声でそう問えば、ソウジュがハハッと乾いた声で笑う。


「確かに攻撃に関しては全力は出してない。

けど、割と本気の防御体制とったのに吹っ飛ばされたし、見ての通り奴は本気なんて出してない。」


「ソウジュの割と本気が、僕の本気に相当すると思うんだが……。

その時点であの白いのに俺は劣っていることになる……。」


「それはどうだか?言い訳したくないが、まだこの人間の体の使い方がよく分かってない。

小さいし小回りが利く分、もっと良い戦い方があるはずだ。

そういうの考えるのが得意だろレイテ」


 体についた砂埃をはらい。

止まらない額の血を拭うのを諦めたソウジュが口元にまで流れた自身の血をペロリと舐める。

それを、嫌そうな顔をして見やれば、ニヤリと笑うソウジュ


「オウカ様が俺たちを組ませた理由、お前だって分かってるんだろ?

頼んだぞ!」


「頼まれたくないがっ……」


 そんなことを言っている場合でもない。

大型個体のいる方を見れば、ソウジュの仕留めたであろう並のサーベルウルフ1頭と大型個体2頭が地面に転がっている。残るのは並2、大型1、そして白が1……。相変わらずコチラを見ているだけのサーベルウルフ、まるで逃げたきゃにげろと言わんばかりだ。大型は並の個体より知能が高いが、随分と煽り方を心得てるじゃないか、犬如きがっ……。


 血の滲む自身の手を握りしめる。

脳筋馬鹿になるのは性には合わないが、ドラゴンとして舐められたままでいられるわけもない。


「はぁーーーー。

殺るぞソウジュ…、あのクソ犬の首切り落としてオウカ様に持ち帰る。」


「そう来なくっちゃ!

お前はドラゴンぽくないって言ったのやっぱ取り消すわ!

その殺意とプライドの高さは間違いなくドラゴンだ!」


 楽しげな声を出すソウジュが準備体操を始めると、サーベルウルフも此方の殺気を察知したのか白い個体を守るように大型個体がゆっくりと前に出る。


「それで?レイテ、まずはどうする?」


「大前提として、白い個体の斬撃は受けるな、絶対にかわせ、受けてたらこっちの体力が持たなくなる。

分かってるとは思うが手を抜くなよ、出し惜しみはなしだ。

まずは邪魔な雑魚から片付ける。」


「ハハッ!頼もしいなレイテ!

んじゃ、いっちょ殺ってやりますか!」


 2人並んで、勢いよく走り出す。

その姿を見た並のサーベルウルフが早速突っ込んでくるが、ソウジュとほぼ同時に右手を前に出せば魔法陣が浮かび上がる。考えることまで一緒とは、笑えるなっ!

そんな事が頭をよぎりながら、魔法陣から勢いよく赤い炎の槍が連射される。

流石に2つの魔法陣から出た槍も数が多ければ、サーベルウルフには容易に当たる。

魔力の無駄遣いではあるが、今は出し惜しんでる場合ではない。

ギャイン!と、悲鳴をあげて倒れた焦げ臭い2頭のサーベルウルフの横を走り抜ける。


手前に出ている大型サーベルウルフが頭を動かす。


「来るぞっ!」


 ソウジュの言葉と同時に左右に飛び退くが、その足は止めない。

避けた瞬間に、2人の走っていた辺りをサーベルウルフの斬撃が地面を切り裂いた。

走るソウジュが無事なのを視界の端で確認する。


 奴等が次の攻撃に移る前に勢いよく地面を蹴って上空へと飛び上がる。

人の身体でもそこそこの跳躍力はあるようだ。

飛び上がったレイテに一瞬行動が出遅れたサーベルウルフ、その大型個体の真下に狙いを定める。

浮かび上がった魔法陣にサーベルウルフが素早く背後へと飛び退こうとした瞬間、真横から撃ち込んだソウジュの青い炎の槍が大型個体の頭を掠めるが流石は知能の高い大型個体、不意打ちの攻撃すらかわしてみせた。


「チッ!今のもかわすのかよ、こんな強かったっけ?大型?」


 愚痴ったソウジュの言葉の直後に、上空から雨のように赤い炎の槍が降り注ぎ、大型個体の身体に次々と刺さっていく、流石の白い個体も背後へと大きく飛び退いた。

炎に身体を巻かれ、痛みと熱で暴れ狂う大型個体のせいで周りの木々に火が付いて徐々に燃え広がっていく。


地面に着地したレイテが、ソウジュの方に歩み寄る。


「お前、以外と力技じゃん、頭脳派じゃなかったっけ?」


「うるさい。

出し惜しんでる場合じゃないって言っただろ」


ズゥーンと音を立てて、やっと炎に巻かれていた大型個体が地面へと倒れた。


「さて、こっからが本番」


 ソウジュの言葉に頷きながら、白い個体を見れば赤い鋭い目が此方を射抜く

その獲物を見据えたような目に、一瞬ぞわりと鱗が逆立つような感覚に襲われる。

同族に怯えるならまだしも、犬如きに怯えるなどあってたまるか


「絶対殺す」


「レイテ君ったら意外と過激♡」


「やめろ気持ち悪い」


 茶化すソウジュに言い捨てると、着ていたローブのボタンを取り外し地面に捨てる。

熱い……ドラゴンの時ならこれくらいの熱は気にもならないだろうが、周りを取り囲むように広がった炎でまるで闘技場のようだ。


「そいじゃ、3回戦目行きますかね」


そう言って、ソウジュがニヤリと笑うとローブのボタンを引きちぎるように脱ぎ背後へと投げ捨てた。



















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