5ー1.僕(しもべ)の本性
朝焼けで薄暗かった空はすっかり日が上り、ドラゴンから逃げるため馬車は土煙を上げて太陽が照らす平原をひたすら走る。
あらかたの人間を焼き尽くし、最後のお楽しみと言わんばかりに、直接敵な攻撃を仕掛けて来ず馬車の後ろを付かず離れず追ってくるドラゴンは、もっと早く走れと面白がる様に時より炎を吐く、ドラゴン完全に楽しんでいる…
この状況にアレイナは心の中で頭を掻きむしりながら、いい加減にしてくれ!!
と、ドラゴンに叫びたい気持ちでいっぱいだった。
ドラゴンの気が変われば即座に焼かれるであろう、いつ殺されるともわからない緊張感が続く、横に外れて森に逃げ込めば撒けるかもしれないがこの森はドラゴンの住む山からは遠い。
おそらく容赦なく森を焼き払うだろう。
できれば他のドラゴン達が縄張りにしている森に逃げ込みたいが、それまではこの逃げ場のない平原をひた走るしかないのだ。
後方に迫るドラゴンをアレイナは睨みつけて、いよいよ…ともなれば、持てる魔力を全て使って自分が足止めをするしかない…
一瞬くらいなら多分…できるはず…
荷馬車の中を見れば子供達はうずくまり啜り泣いている
それを女性のエルフ達が宥めているが、盗賊に捕まり檻に放り込まれ、奴隷商に売られるかもしれない。
そんな恐怖の次はドラゴン…一体私達が何をしたというのか…
そんな事を考えてると、馬の手綱を握っていたエルフが急に馬車の方向を変えて森へ向かいだす。
急に曲がったため、荷馬車の中の者達が転がり側面に叩きつけられた。
「痛っ…」
痛みに呻きながら起き上がると同時に、屋根に何かが乗る気配がした。
セクシーエルフが鋭い視線を屋根に向けて弓を構え、周りのエルフ達は直ぐさま事態を把握して子供達を庇うように身を伏せる。
「どうして急に森へ!?森が焼かれてしまいます!」
アレイナも叩きつけられた体の痛みに顔を歪めつつも起き上がり、頭上を警戒をしながら馭者に叫ぶ
「突然目の前に現れた黒髪の女が森へ向かへと指さしたんだ!!
咄嗟に体が動いてしまったんだよ!気づいたら方向を変えていた!!」
男も焦ったように叫ぶ
黒髪の女?
そう思うと同時にドォーンっと響く音に驚いて後ろを振り返れば、魔法をもろともせず屈強な男が投げた斧すら鋼鉄のように弾き返したその鱗に槍が刺り、そのドラゴンが地面に落ちている
んなっ!?
小さい個体とは言え世界の最強種、そのドラゴンが地面に!?
100年ほど前、人間の国やエルフの里を焼いて回ったドラゴンが、人間の精鋭軍と大魔導士達により討伐された事があったが、それ以来かもしれない。
その際、軍と大魔導士の半数以上が死んだと聞くが、一体何が…と、遠ざかる馬車から目を凝らせば、ドラゴンの視線の先に佇む異様な雰囲気を持つ黒髪の少女?
人間よりも優れた視力だが、ここまで離れると容姿は確認できない。
一体何者なのか…
「屋根にご乗車のお客様はぁー、ドラゴンを落とした女の子のお仲間さんなのかしらぁー?」
セクシーエルフが未だ弓を引いたまま唐突に上に問いかけた。




