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邪神ですか?いいえ、神です!  作者: 弥生菊美
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1−1. よくある異世界転生

何百万煎じ目の異世界転生ものです。

年末に思い付いて書き起こしました。


 私は昔から人の評価を気にしてきた。


 自分の価値を決めるのは自分自身と言うけれど、そんなのは自分に自信のある人間の綺麗事、結局は他人からの評価で私の立場が決まる。


いつだってそうだ…


この世界では要領が良く、人当たりが良い人間が好かれる。

 

他人と違う事をして、波風立てず愛想良く生きて行く、それが最も社会を楽に生きていける方法だ。


まぁ、私の勝手な持論だけど…。





 そんな持論の持ち主である私は人当たりが良く、大抵の頼まれごとを引き受けてしまう。

その為、お人好しとも呼ばれているが、好きでお人好しをしているわけではない。

地域清掃や子供園の手伝い

そんな些細な事しかしていないが


「ありがとう」


その一言を言って貰えるだけで、私はここにいて良い

生きている意味があると、そう言ってもらえるような気がしていた。





 私は偽善者






 心の奥底に抱えているものはそんな綺麗なものじゃない。

他のボランティアの人達の崇高な思いと違って、私はいつだって感謝という言葉の見返りを求めていた。


みんなに嫌われたくない


(どうでも良い)


認められたい


(どうでも良い)


私と言う存在の意味が欲しい


(何もかもがどうでも良い)


自己肯定感の低い私は誰かに感謝してもらうため手を差し伸べるのだ。


(どいつもこいつも、私以外の全てが消えれば楽なのに)


 見返りなんかいらない。

そう言って手を差し伸べる慈愛に満ちたその美しい想いを持った人達の中で、私は1人偽善を隠して微笑みを向けるのだ。


 あぁ…分かっているのに

自分がどれだけ醜い心の持ち主で

どれほど歪んでいるのか


分かっているのに


救っても救われないクソッタレな世の中に


自分すら救えない自分自身に


私は今日も絶望し続けるのだ。






「タキナちゃん聞いてる?」


 そう訝しげに桜さんに声を掛けられて、ぼーっとしていた思考を引き戻す。


 しまった…今は子供園で行うクリスマス会の打ち合わせ中だった。

同じボランティア仲間の茂木さんと大田さんも、心配そうにこちらに視線を遣す。


 3人は同じボランティア仲間と言っても、3回りほど年上のボランティア活動だけならず人生においても大先輩の方々だ。


「す…すみません、ちょっとぼーっとしちゃって、大丈夫なんで話を続けて下さい」


 ズリ落ちてきた黒縁眼鏡を指で押し戻しす。


「なんか顔色悪いよタキナちゃん」


「最近仕事も忙しいんでしょ疲れが溜まってるんじゃないの?

あんまり無理しちゃダメよ」


 茂木さんと大田さんのお母さんが発動する。


 ちょと待っててお茶入れ直すから、お茶じゃなくてレモネードとか甘いものの方が良いんじゃない?

疲れにはビタミンCよ!ミカン持ってきたから食べて食べて、2人にあれこれ世話を焼いていただいたが


「早く帰って寝るのが1番!!」


 桜さんの鶴の一声で、私だけ先に帰宅させてもらう事になった。


不甲斐ない…


 桜さんからの帰宅命令を出されたその帰り道、身体のだるさが顕著に現れ始める。

風邪でも引いたんだろうか、3人の言葉に甘えて良かったかもしれない。


 今日の夕飯はコンビニで買って帰ろう。


 そんな事を思いつつ、信号が赤に変わったのを確認してスマホを取り出せば、黒い画面に痛んで跳ねた黒髪と、野暮ったい黒縁メガネの自分の顔が映り込む


 それを見て見ぬふりをして、電源ボタンを押し時間を確認すると16時6分、ちょっと夕飯には早いかな?

なんて考えていると、ドンッとぶつかられてよろけてしまう。

危うく車道に出るところだったが、なんとか踏みとどまる。


 何!?苛立って視線を向けると、塾帰りの子供達がふざけ合ってよそ見をして私にぶつかってきたようだ。


 このクソガキがっ!!

謝りもしない子供に腹が立つが、ここで子供に何か言っても警察を呼ばれるのは私の方だろう。


 怒りを堪えて早く信号かわれと念じる。

いくら善行を積んだとて良い事があるわけじゃない。


 所詮、私は心の伴わない偽善活動、薄っペラい自己肯定感を上げる為の行い。

真摯に取り組んでいる桜さん達とは掛ける思いが違い過ぎる。


 己の偽善者ぶりを再確認して深いため息が出る。

今日は夕飯にスィーツもプラスしよう…そんなことを考えていると、少し離れたところから悲鳴が上がる。


 えっ?何が?そう思って悲鳴の方を向くと、大型トラックがガードレールに激突しながらこっちに向かってくる。


えっ…


一瞬躊躇うが直ぐに思考が戻り、咄嗟に動けてしまう私すごい!


離れなきゃ!


そう思って体を反転させると、目の前には先ほどぶつかってきた子供が2人、あぁ…ホント私って…そう頭の中で思った瞬間、猛然と突っ込んでくるトラックを見て動けないでいる子供の襟首を掴み、渾身の力で同じく固まっていたサラリーマンに向かって投げ飛ばす。


 火事場の馬鹿力ってやつかな、1秒が一瞬がスローモーションに見える。


ホント私って最後まで……


 強い衝撃と共に世界がブラックアウトした。



一部修正しました

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