第27話 占星勇士(アストロ・ブレイバー)と占札勇士(アルカナ・ブレイバー)
ヒンメル・フォン・シュヴァルツマン
MBTI:ENFP
主人公とヒロインら同様、昆虫の力と魂を宿した異世界に迷い込む少年で、自らをイグル王国のヒンメル王子と名乗る。
アニメや漫画、ゲームなどの娯楽に影響されたのか、芝居がかった口調で接する。
サイクロプスによって鍛えられたという、かの伝説の竜殺しの剣アスカロンを武器に、王国内でもそこそこ実力を発揮しているが、言葉が通じない上に変人なので、冒険者らから避けられているらしい。
右腕に包帯を巻いているが怪我はしておらず、ただのカッコつけである。
ク、サターニアに刻まれた右腕の蛇の紋章が俺の意志に反して、破壊を求めているッ!!!
に、逃げろ、お前たち!
俺から離れないと、ただでは済まないぞ!
ミッシャ・アイゼンシュタイン
MBTI:INFJ
王族の血を引くヒンメルの従者を務める、温和で理知的な青年。
ヒンメルが幼少の頃から彼を見守ってきており、彼からは実の兄弟と扱われるほど、信頼は厚い。
世話人をする傍らで冒険や読書をし、様々な知識を身につけ、賢者と称されるまでになった。
目上の者としてヒンメルに説教する際には、例えや比喩を交えて、わかりやすく説明する。
趣味は適度に頭を使い、暇潰しにもなるトランプ遊びで、特に好きなのがポーカーやセブンブリッジ。
ただ毎回ヒンメルを完膚なきまでに負かしてしまうため、反射神経の要求されるスピードなどで機嫌を取っている。
貧民街出身で王や貴族の振る舞いには、思うところがあるようだが……という、少年の妄想が生んだ架空の人物。
少年から祐はミッシャと呼ばれ、妄想の産物の彼と同一視されているようだ。
サターニア
MBTI:ENTJ
サタンの娘で、ヒンメルに破壊と殺戮の宿命を象徴する蛇の紋章を刻んだ、宿敵の女悪魔。
強大な戦闘能力を有し、洗練された氷獄の魔術で王国軍を退けた。
自尊心が高く勝ち気な性格で、不快な言動には倍返しにしてやり返す、親譲りの執念深さを併せ持つ。
ヒンメルを追い詰めるべく、彼の従者であるミッシャを誑かす狡猾さと戦略眼もあり、油断ならない。
趣味は人間や人間界の観察で、どうすればより確実に人間を騙せるか考えている。
表向きは友好的だが、腹の底ではミッシャを見下している。
しかしミッシャの信念や哲学に触れていくにつれ、彼女の中でミッシャの存在が次第に大きくなり……という、少年の妄想が生んだ架空の人物。
少年から直美はサターニアと呼ばれ、妄想の産物の彼女と同一視されているようだ。
ソーヤ
MBTI:ESTJ
ミッシャとサターニアの腰巾着をしている、粗暴で口の悪い小悪党の悪魔。
配下の悪魔や見下す人間には攻撃的な態度を取るが、格上の悪魔には下手に出る姑息で卑怯な性格。
意味もなく虫を踏み潰すのが日課。
全身に傷があるが、異邦人と共に異世界に舞い降りたシールタトゥーを貼っているだけで、戦いで負傷した傷跡ではない。
自らを大きく見せようとすればするほど、みみっちくてせこい部分が強調される悪魔……という、少年の妄想が生んだ架空の人物。
少年から悪魔ハリーはソーヤと呼ばれ、妄想の産物の彼と同一視されているようだ。
王国に以前現れたという魔毒竜が、卵を産み落としていたとの噂が流れた。
民に深い爪痕を残した怪物の復活を危惧し、自発的に揃った冒険者らは、まるで一つの生き物であるかのように、王国近くの草原へと集結する。
今の光景を上空から眺めたら、鰯の群れみたいに見えるだろう。
卵の話は悪魔を討伐するという、本来の目的を隠す嘘だ。
これだけの冒険者がいれば、迂闊には手が出せまい。
しかし悪魔がいるならば、極上の餌場であるのも事実。
おびきよせる条件は整った。
(……悪魔たちがどう出るか。これで全ての悪魔が釣られるのはありえないだろう)
青年は早くも2人で計画した作戦を実行し、成功した後の未来を描く。
悪魔を確実に叩く方法があればいいが、現状は王国外でへと誘い、策を弄するのが得策。
思考を深める青年の隣で
「チカラ ナクナッタ……」
どこかやつれたハリーが、力なく呟いた。
自慢の逆立つ金髪にも艶がなく、魂を奪われた悪影響が顕著に現れているようだ。
「まぁ、君に責任があるよ」
「オレサマの力がなくなったら、お前も困るだろ! オレサマと兄貴、どっちの味方だ、オラ!」
「理知的で配慮できる彼の味方に決まってるだろう。これに懲りたら、少しは周りに優しくしたらどうだ?」
毅然とした対応で接すると、ハリーは不貞腐れたように、地面の草を念入りに踏みつける。
苛立つのはともかく、人に八つ当たるのは勘弁してほしい。
「本当に真面目な野郎だな、面白くねェぜ……」
「それはそうとハリー、手筈は整っているのかい?」
「ああ、言われた通りにした。報酬が出たら美味い飯おごれよ」
「ああ、約束する。力に善悪はない。君の力は王国の為に必ず役に立つよ」
悪魔にフォローを入れると、腰に手を当て
「そうだろうな、オレサマは役に立つだろう」
と、豪快に笑い飛ばす。
単純だなと心の中で呆れつつも
(ま、調子に乗らせてもいいな。実際、人間にはできないことをやって貰えるのはありがたいし)
胸は悪魔への感謝で満たされていた。
即座に手が出る、短気で行動派の悪魔。
確証や論拠、推測がなければ動くのを躊躇う、まず頭で考え実行に移す慎重派の人間。
対照的だが、だからこそ互いの至らない部分を補完をしやすい。
「Glad to hear you are safe. Let's do our best to slay the dragon(無事で何より。竜退治、全力を尽くしましょう)」
理解不能な英語が周囲で飛び交うも、初めは僕ではない誰かに向けたものだろうと、仲間たちと交流した。
しかし背中を指先で突かれ、やっと相手が自分だと知り振り返った。
「あ、貴方はあの時の」
するとモルマスの戦闘で折れかけた僕へ、魔法をかけた長髪の男性が、ぎこちなく微笑む。
吊り上げた口角が震え、普段から笑い慣れていないのが、手に取るようにわかる。
額に包帯を巻き、万全の状態ではなさそうだが。
(無事に生きていてくれてよかった)
青年がつられて笑うと
「I'm with you again. Nice to meet you(またアンタと一緒か。よろしくな)」
共に戦った者やモルマスの酒場で出逢った冒険者など、見知った顔ぶれが次々と青年ににじり寄る。
「よろしくだとよ」
「こちらこそよろしく。顔見知りくらいの関係でも、一緒だと心強いな」
「悪運の強い連中だ。今日の冒険でも生き残るだろうな」
希望的観測ではあるが、そうなってほしい。
冒険を無事に終えたら、悪魔の出現を正直に告げよう。
監視の目が強まれば、悪魔も手を出しづらくなり、自然と被害も減少していく。
今は安全に悪魔の討伐をすることを優先せねば。
その後もモルマスの戦友と親交を深めると、ある一箇所に人だかりができているのに気がつく。
「魔毒竜に反応した刻印が熱を帯びているゥ! グォオォォ、し、静まれェッ、俺の右腕! アスカロン、竜殺しの力を寄越せェ!」
「What's that?(なんだ、あれ)」
「Don't get involved(関わるのはよせ)」
「ど、どこかで聞いた声が……」
突如として甲高い金切り声が鼓膜を震わす。
耳を抑え、冒険者らが群がる中心へと向かうと、以前遭遇した少年が、いわゆる思春期特有の呪いを発症していた。
天然記念物の邪気眼。
現代はもちろん、異世界においても、間違いなくレッドリスト入り確定の希少生物である。
「あ、いつぞやのクソガキじゃねェか」
「フ、また巡り合ってしまったようだな」
外套をたなびかせた黒髪の少年は、芝居がかった口調で、一行に喋りかけた。
「俺の善き剣は竜の心臓を貫き、必ずや勝利をもたらすだろう。英雄譚の一部になれるのを誇るがいい」
「確か聖ゲオルギウスの武器、だったかしら。何の役に立つかわからない、無駄な知識ばかり蓄えて……」
溜め息を漏らす直美に、青年は苦虫を噛み潰したように渋い顔をする。
無駄な知識、という放言が引っかかって。
現代では架空の武器の知識など、さほど役に立たないのは事実。
しかし一見無駄と切り捨てられたものが、特定の状況下で役立つことは、往々にしてある。
「無駄、か」
「急にどうしたの?」
「知恵というのは枝を伸ばした樹木のようなもの。昆虫を知れば、昆虫の好む植物の知識もついてくる。そしてその植物がどの時期に生えるか、どんな場所で種を残すか。そして今度は植物の育つ土壌を知る。乾燥した場所、湿った土壌……そうして人生をかけて実を実らせた大樹を育てていく。知識には際限がないよ」
直美が口を挟むも、無視して喋り続ける。
どうしても少年に伝えたい気持ちが、僕の中にあった。
「無駄な知識なんてものがあったとしても、それが分かるのは世界を作りたもうた全能の創造主だけ。人間にできるのは知識に意味があると信じ、学び続けること。僕はそうであってほしい。だから君も自分の道を信じたらいい。馬鹿にされたとしても」
「……」
少年は掌で顔を覆い隠したまま動かなかった。
僕の気休めの言葉に、多少でも救われたなら本望だ。
結果のでない努力は努力ではない。
正しい努力。
まるで社会的成功や結果に繋がらない一切を否定するような、軽薄な言葉には心底嫌気がさす。
知識も同様に、それ自体は価値を産み出さないものだ。
だが人の殺し方だろうが、知識自体に罪はない。
現に創作や犯罪分析の分野では、世の為に利用されている。
つまるところ知識をどう扱うか、人間性の問題だ。
無駄と切り捨てた文化は、社会の成熟さを表すもの。
余白なき社会というのは、人間らしさからかけ離れている。
「う、うぅぁあ……」
青年が語りかけると、少年は体を揺らし鼻を啜った。
泣くほど感動したのだろうか?
だとしても大袈裟な気がするが。
青年が慰めようと距離を詰めると
「ま、まさかお前は賢者ミッシャではないか?! また会えるなんて! ど、どうして悪魔の力などに手を染めた!」
まさかの裏切った仲間認定に、唖然とした。
白目を剥き、ウバザメのように大口を開けながら。
(ミ、ミッシャって誰? もしかして僕のことかな。いや、知らないよ!)
「俺の名を忘れたのか! 俺はイグル王国の王子ヒンメル。世話係のミッシャには、だいぶ世話をかけたな」
肩に手を置く少年から、垂れ流される妄想の洪水。
情報をまとめるとミッシャは王族の関係者で、長年王子を影に日向に支えた、という設定。
ならば敬語で話すのが、それっぽいだろう。
「だとしたら、どうなさるおつもりで。ヒンメルお坊ちゃま。僕の大義と貴方様の理想、決して交わることはない」
「共に魔王を討つと誓ったあの日のことを忘れたというのか、悪魔に誑かされたのかッ! サタンの娘サターニアに!」
一難あってまた一難、とでも形容すべきか。
新たな妄想が青年の脳味噌を揺さぶる。
少年がちらりと視線を送った先の彼女のこめかみには、猫の尾が如く血管が浮き出し、激しく感情を表現するみたいに揺れ動く。
尋常ではない怒りように、青年は獲物を飲む蝦蟇を思い起こさせる不細工な顔で目を細め、竜の逆鱗に触れたのを激しく後悔した。
(は、は、は、般若じゃ、般若がおる! この男の子、僕に直美さんを巻き込めと! い、嫌だ! 絶対怒られる! やめて、やーめーてーくーれー!)
「お坊ちゃまの察しの通り、彼女が僕に力を授け……オゥフッ!!! ……ぼ、暴力反対!」
……もしかしたら赦してもらえるかも。
一縷の望みにかけて勇気を振り絞ると直後、鋭い拳が脇腹を抉る。
世界で頂点を獲れる一撃に、青年は崩れ落ちた。
「ちょ、ユウさん?! しっかりしてーっ!」
「お、おっかねぇ。大丈夫か。あんまりナオミ、怒らせるなよ」
「待ってて、傷薬塗ったげるから〜」
「……あ、ありがと……ウィッカ……ちゃ……」
地面に倒れ込むと、視界は歪み、夜の帳が降りたように眼の前が闇に染まる。
死後硬直を起こしたかのように体を痙攣させた青年は、仲間の声を頼りに、なんとか意識を繋ぎ止めた。
妖精の小さな手が患部を優しく撫でるも、痺れにも似た痛みが襲い、言葉にならない呻きが漏れた。
悪ふざけが過ぎた。
「誰がサタンの娘よ! アンタのくだらないごっこ遊びに巻き込まないで!」
「……わ、悪ノリしてすみませんでした」
「なんと怖ろしい形相、やはり悪魔は実在したのか……!」
少年は一連のやりとりを見て、納得したように頷く。
しかし彼女の横でもう一人、ヒンメルに怒りを募らせる者がいた。
「テメーの茶番に付き合ったせいで、オレサマまで痛い目見たじゃねェか。どうしてくれんだ、クソガキ」
「ミッシャと俺の友情に水を差すな、ごろつきA!!!」
「なんでオレサマには固有名詞がねェんだよ。なんかムカつくな、お前!」
横っ腹を擦りつつ獣が唸るかの如く、ハリーは2人よりも格下の扱いに憤慨する。
「貴様は粗暴で粗野なのが取り柄のソーヤ! 今日は日課の昆虫踏み潰しはやらないのか?」
「殺す! 火炙りにした後、四肢を引き裂いて殺す! 市中を引き摺り回して殺す!」
火に油を注ぐ互いの発言に、少年と悪魔が一触即発の雰囲気を漂わすと
「耳障りだぞ、貴様ら。静かにできないのか」
声色の低い男の声が二人を一喝し、辺りは静寂に包まれた。
威厳に満ちた口調に平伏するかの如く、道を開ける。
青年にはその様子が、まるで王の凱旋を讃えるように映った。
やってきたのは青のローブを纏う男女二人組。
目が合うと男の方は、青年を切れ長の眼で睨み据える。
彼の瞳は、さながら闇で星がきらめくかのように輝きを放つ。
手にはそれぞれ水晶とタロットカードを持ち、屈強な冒険者とは似つかわしくない。
魔術道具と風貌から占い士だと錯覚してしまうが、彼らも冒険者。
「王族からの依頼というから協力をしてやるが……そこいらの冒険者にも劣る実力しかないようだな。先に忠告するが、足手纏いは捨てていく。ソフィ、俺から離れるなよ」
「イーサン、口が過ぎるぞ。貴方たちが雇い主でしたね。実力こそ私たちに劣るようですが、後方支援を頼みました」
厳格で言葉を選ばないイーサンを、笹の葉の形の耳が特徴的な金髪の女性エルフのソフィが窘める。
彼らは権力者を介して雇った、対悪魔の最終兵器。
なんでも竜退治で生き残った猛者とのことで、実力に関しては折り紙つき。
占星勇士と占札勇士と呼ばれ、名声を欲しいままにしていた。
「イーサンさん、ソフィさん、今日はありがとうございます」
「……」
「謝罪の代わりといってはなんですが、タロットカードで君たちのことを占わせてくれませんか? いい暇潰しにはなるでしょう」
「よろしくお願いします」
これを機に親睦を深めていこう。
快諾すると、一行は軽く自己紹介を済ませた。
ソフィは二十二枚のカードを掻き混ぜ、両手で持ち
「さぁ、この中から君たちの手で1つ選ぶんだ」
と、一行に告げた。
言われるがままカードの1枚へ触れた瞬間、目が合ったソフィに微笑され、彼は取るのを躊躇した。
ババ抜きの心理戦をやっているような錯覚を覚えたのだ。
悩んでも仕方ない。
青年は最初に我が物にしようとしたカードへ、手を伸ばし引き抜く。
全員がカードを手にしたのを確認すると、彼女は順番に込められた意味を述べていく。
「祐を表すカードは……世界。正位置なら完成、成功、完璧。逆位置なら未完成、惰性での継続を象徴する札。君は自分の至らない点がよく目につくみたいだ。だがそれは向上心があるからこそ。深く落ち込まない方がいいよ」
「え、はい。ありがとう、ソフィさん」
まるで僕の人生の一片を垣間見たかの如く、ピタリと当てた。
バーナム効果と切り捨てるのは容易いが、決めつけるのはまだ早い。
「直美を表すカードは……皇帝。正位置だと成功や権力、責任感。逆位置だと傲慢さを象徴する札。直美の目標を目指す力は素晴らしい。だが逆位置に心当たりがあるならば周囲と協調した方がいい」
「なるべく気をつけようかしら」
組織を率先して束ねる責任感に溢れた、直美らしいカードに、青年は感心しながら説明に耳を傾ける。
皇帝の男性の堅苦しい雰囲気と、生真面目な彼女は瓜二つだ。
しかし舌禍が招く問題にも言及され、結果を重く受け止めたようである。
「ハリーを表すカードは……悪魔。正位置なら堕落、破滅。逆位置なら執着やしがらみからの解放を象徴する札。君はついつい衝動的な行動をしてしまいがちでは。しかし竜……時に悪魔と称される怪物退治の依頼で、このカードが出るとは不吉な。もしかして君、本当の悪魔かい?」
「クククッ、どうだろうな? エルフの嬢ちゃん」
本来ならば否定するか、或いは笑ってやり過ごすか、どちらかだろう。
しかしハリーは含みを持たせた言い回しで、彼女に返事する。
まるで悪魔であることを、人ならざる力を有する存在であるのを誇示するかのように。
「英子を表すカードは……審判。正位置なら復活、祝福、再生。逆位置なら罰、罪の償いを象徴する札。青年との出会いは君の人生で、この上ない幸運。だが後ろ暗いことを隠しているとの暗示がでている。ありのままの君を受け入れてくれる人もいるだろう。無論、罪を償うのならば……だが」
「罪、ですか」
再生、復活は彼女の癒やしの魔法を表すもの。
だとすれば罪とは。
審判の大アルカナを彼女自身が選んだということは、何らかの罪を償うのを彼女自身が望んだということ。
現代でいえば高校生の彼女に、だいそれた悪事は働きそうにないが……。
歯切れの悪い返事には、様々な意味を孕んでいるように思えた。
「アシェルを表すカードは……運命の輪。正位置なら幸運、変化、運命、出会い。逆位置なら悪化、すれ違いを表す札。彼らと仲間になったのは吉兆。だが遠くない未来、君が最も大事にする相手との関係がぎくしゃくするだろう。でも心配しなくていい。運命の輪は廻り続ける。不幸も一時的なもの」
「……よかった」
彼の最も大事にする存在との関係の悪化。
家族や友人、恩人の誰かを指した内容を、俯きがちに聴き入る。
とはいえ解決を示唆する一言をソフィから伝えられ、彼は普段の微笑みを取り戻す。
「ウィッカを表すカードは……太陽。正位置なら天真爛漫さや無邪気さ、栄光。逆位置なら不調、悪化を象徴する札。ヒマワリのように底なしに明るい妖精の君は、人知れず人を救う力がある。意識していないから恩着せがましくもない。しかしいつか、心のわだかまりに立ち向かう必要があるかもしれない。仲間と乗り越えていくんだ」
「おおっ、すっごいね〜。やっぱり私は、みんなの太陽だよ〜」
太陽に彫りの深い顔が描かれたタロットに、満面喜悦のウィッカ。
ただ彼女の底には、人知れぬ魔獣が棲むようだ。
とはいえ今の彼女からは、後ろ暗い過去など微塵も感じられないが。
一行はソフィに感謝をしつつ、王国近辺の森へと向かう。
王国の平穏を望む責務を胸に秘め。
イーサン・マルティネス
MBTI:ESTJ
主人公が悪魔討伐に雇った、歴戦の占星勇士。
ソフィと一緒に魔毒竜を倒した、名実共に英雄と称される男性。
天体の軌道を読む惑星魔法を用いた破壊的な力で、魔物を蹂躙していく。
トラウマを抱えているのか、ソフィ以外の冒険者らには刺々しく排他的な態度を取る。
回復魔法を使えるが、生き残らせるものは強い者優先と冷徹な判断を下す、合理的かつ非情な一面があり、他の冒険者らからは煙たがられているようだ。
ソフィ・フォーサイス
MBTI:ESFJ
祐と直美が悪魔討伐に雇った、歴戦のイーサンの相棒で、占札勇士の職業につく、エルフの女性。
タロットカードによる魔法で仲間を支えるが、攻撃の魔法も人並み以上にこなす。
王国屈指の実力者でありながら、高潔で滅多に他人に心を許さないイーサンの、数少ない理解者。
イーサンには実力で劣ると自覚しており、常にたゆまぬ努力を怠らない勤勉な性格。
敵をつくりがちなイーサンと他の冒険者らの意思疎通を行い、彼に助力する。
初対面の一行に嫌悪感を露わにするイーサンとは対照的に、格下の冒険者にも礼節を弁え、柔和な態度で接してくれる。




