約7年後
約7年後
今日の出来事を手に入れた大きめの魔石に記憶させてみる、小さい魔石でも5日間ぐらいの情報が記録できるみたいだ、これで紙に書くと言う面倒から解放されるが。
魔石はこの世界ではあまり安くないのが現状、できれば今後魔石の採掘なども手掛けてみようと思う。
魔石に文字や映像を記憶させていると部屋に訪問者が訪れた「はいられよ」と声をかけると、どうやらこの気の感じはローレアらしい。
ローレアはいつの間にかノキナを気に入ってしまったらしい、もしかしたら彼女にはノキナの秘密がばれてしまっているのかもしれない。
「お休みのところすみません」
「かまわぬぞ、何か話があるのだろう」
「私をノキナ様の弟子にしてください」
「それは構わぬが、アビスには話したのか?」
「それは…」
「ちゃんと話すがよい、あやつもちゃんと話せばわかるじゃろう」
「解りました明日話してみます、ちゃんと了解を得たら弟子にしてくださるのですね」
「それは大丈夫じゃ我にはすでに100人以上弟子がおる」
「100人!」
「話しておらんかったな、われは姫王とは別に気功術の師範と言う肩書がある。道場も何か所か有りたまに見回っては手ほどきしておる」
「私にも気功術を教えて頂けませんか?」
「良いぞ、今教えて進ぜよう」
ノキナはそういうとローレアに気功術の基本を教えることにした、さすがに人魚族は獣人に近く今は体調も万全のため気功術の初級はすぐに覚えすぐに中級を教えるところまで一晩で進んだ。
「気功術って魔法と似ていて面白いですね。こんなに簡単に身を守れるなんてもっと早くノキナ様に会えれば良かったです。」
「まあすべての出会いは偶然だからのういつ誰に出会うのか、その時期まではなかなか解らぬ、出会った時が最善の時と喜ぶべきかもしれぬな。」
「そうだな、もしおぬしあのまま死の淵をさまよい悪人の手に掛かり命を失ったらその後はどうなっておったか想像は付くか?」
「かの国は海竜様と人魚族の魔法で沢山の死人が出たかもしれません」
「わらわもそう思う、沢山の死人が出て意味のない戦争が繰り返されるかもしれなかった、だからこそ我がここに使わされたと思っておる。運命とはそういうものかもしれぬな」
「はいなんとなくわかります」
ローレアはノキナが助けてくれることも自分がこれからどうするかも未来予知で分かっていたが、運命とは未来予知で全てわかるほど単純ではない。
この世界は魔法が有る、たった一つの行動や判断の違いで運命は何処へ転ぶかも分からない。
女の力でどこまでできるだろう、自分一人の力等少しの未来を知った所で何の足しになるだろうか。
でも目の前にいるノキナは違った、力強く自信に満ちているローレアから見ても光り輝く太陽のように見えていた。
そう彼女は守るべき宝を見つけてしまった、彼女は今まで言われるがままに従うことしかできないでいた、未来を自分の手で変えるのが怖かったからだ。
でもノキナを見てそれは間違いだと気付いてしまった、自分の歳より20歳以上若い獣人の娘がこの世界に何を残そうとしているのか。
ローレアは運命に負けず強く生きていくノキナのそばにいたいと思ってしまったのだ。
ちなみにローレア達人魚族は竜族と同じぐらい最低500歳は生きる現在ローレアの歳は42歳アビスとの間に一度は子をなしたがその子は病気で死んでしまった。
その後は子を作るのも怖くなってしまい人族に騙されてからは体調を崩したのでアビスとの夜はほとんど無い。
ローレアがアビスに嫁いだ経緯は相互協力の礎みたいなものであった。
特にローレアは人魚族の中でも優れた能力を持っており、軽い魔法も使えたので家族もなく独り身のローレアを人魚族の長は海竜族の橋渡しとして嫁がせたのだ。
ローレアの父は彼女が23の時病で亡くなっている、兄が一人いたが彼女が16の時北の海から現れた怪物討伐の為駆り出されそのまま行方不明となって現在も所在不明だ。
ローレアの母は彼女が5歳のころ流行り病で亡くなっていたので、現在は近しい家族全てが居ない状態。
親戚は何人かいるが皆疎遠になっていて彼女だけが村の中で独りぼっち、人魚族の村にいてもどこか異邦人の様な居心地の悪さを感じていた。
そんな時海竜族からの申し出を受けアビスの下へ嫁ぐことになったのだ。
ローレアは人魚族特有のハープの奏者でもあり歌姫としても優秀だった。
人魚族の長はそんなローレアを見て、思うところがあったのだろう。アビスの下へ嫁いでくれと話を持ち掛けたのだった。
「ノキナ様質問なのですが…」
「なんじゃ」
「間違っていたらお許しください、ノキナ様は生まれ変わりですか?」
「転生者かという事か?」
「はい」
「少し違うな、われはこの体に憑依しておる」
もう隠すことは無いと思った、ローレアは薄々感じていたであろう、予知能力と言うギフトを持っているのだから。これからノキナの事を頼むにも俺は話しておいた方が良いと考えた。
「憑依…」
「そうじゃ、だがこの者はわれの心に非常に近い、我が去ってもそなたの事はちゃんとしておくので心配はないぞ」
「有難うございます、ノキナ様はいつ帰られるのですか」
「この体を本人に返す時期はわれにも解らぬ、明日かもしれぬし1年後かもしれぬ」
「今のノキナ様がいなくなると寂しいです」
「我も寂しい、だが運命じゃからなそれだけは変えられぬ。そうよのもし我が去った後この者を支えてくれるとありがたいのじゃが頼めるかの?」
「喜んでお仕えします」
ローレアは笑顔で答える、ローレアにはノキナの影がうっすらと別の人物に見えていた。
まるで幼き日に別れた兄の様な今は亡き父のような影に…彼女には魂の形が見えるのかもしれない。
夜は深まり結局その夜はノキナの隣でローレアは寝ることになった。
たった一日で色んなことが有った、出会いと別れ今までに経験したこともないような2万キロもの旅、奪われた内臓を全て取り返してきた、起こった事全てが夢のような一日だったのではないだろうか。
いつの間にか2人は抱き合うように眠りについていた…




