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恋バナに入るかなあ。
体育の後の更衣室がツラい。
一応あるだけましか。
小学校は教室だったし。
汗臭い中学男子の溜まり場なんて
地獄でしかない。
自分も汗臭いけど。
気休めにウェットシートで拭うと
すかさず目ざとい奴が騒いだ。うるさい。
「坂下クセー 何だよ、女子かよ」
余裕で頭1コ分下を見下ろして
「あぁん? 何だうるせーな」
と黙らせると
「女子受け狙ってんじゃねえよ」
捨て台詞で逃げた。
意識してんのお前か。
茶髪で運動神経も良いのが不満なのか。
俺より少し身長が低いのが気に入らないか。
出席番号順でロッカーの近い佐藤くんが
つっかかってくるのもうざい。
女子だったらさらっと流せる嫉妬も
男子相手だと相手をするのもだるかった。
更衣室を出ると、
昼前の購買へ向かう生徒で廊下が溢れていた。
なおはこんな戦場でいつもパン買ってるのか。
狩りみてぇ。
自分の想像でにやにやしてたら
女子に引かれた。何で。
説明したら逆に呆れた顔された。
「なおに彼氏出来たらどうするのよ
尚樹お兄ちゃん?!」
「別に応援するし」
「うそー 絶対彼氏にダメ出ししそう」
そうだそうだ妹離れしろーと野次が入る。
「俺、好きな子いるよ?」
「え。うそ!!教えて! 教えろー!」
そこら辺の女子が寄ってきて
掴みかかってきた!
て言うか、シャツの腹の辺り掴まれて
遠巻きにした男子の目線が冷たい。
羨ましいか、こら。離せ。上履き脱げる。
口から出任せでも何でもなく
好きな子はいた。
仲良くなりたいと思うけど
好きな子ほど怖い。
付き合うのではなく
仲良くなりたいだけの男子なんか
鬱陶しいだけだって
諦めていた。
同じ学年の女子だから
たまに目に入るくらいの遭遇率。
黒のストレートロング、
文化系の部活に入っていて
放課後も見かけた。
声をかけたくて目で追ってしまうけど
そうじゃないんだ
つき合いたい訳じゃなくて
ただ話してみたかった。
いっそおネェキャラだったら良かったのか?
引かれること間違いない。
なお~
助けてくれ。
やっぱ妹離れしたくない。
続く。