第91話 異星からの感謝
一週間後……ちょっとした事件(?)が起こった。
記録装置が……また太陽系全体を覆う結界の破壊記録を出したのだ。
残党による報復かと思いつつ、「ワームホール」の出口のある場所に向かってみる。
しかし……行ってみると、UFO48関係者とはちょっと雰囲気が違うようだった。
「……どなたですか?」
全くと言っていいほど敵意が感じられないので、混沌剣は自分用特殊空間にしまいつつ質問する。
すると……ワームホールを介してやってきた貫禄のある男が、ニコリと笑って自己紹介をした。
「私は隣の銀河にある星からやってまいりました、カルコフと申します。ユーエフ王の施設にあった『ワームホール』の履歴を利用して参った結果、結界を割って入る形になってしまい……申し訳ございませんでした」
そう言って、男——カルコフと言った——は、軽く頭を下げた。
ユーエフ王の名は出てきたものの……敵というわけではなさそうだな。
「先日……あの忌々しいユーエフ王が、討伐されたと聞きましてな。我々の星はUFO48から酷い搾取を受けていたので、討伐した者にお礼を申し上げたいと思ったのですが……その手段として、ユーエフ王が最後に出向いた場所に行くのが手っ取り早いと思いまして。ユーエフ王の施設を強襲し、このような手段で参らせていただきました」
そしてカルコフさんは、そんな風に経緯を説明した。
……なるほど、ユーエフ王(及びUFO48)に虐げられていた者が、お礼に来たというパターンか。
宇宙人との交友関係ができるなんて、考えもしなかったが……言われてみれば確かに、銀河の支配者を倒せばそういう現象も起こり得る、か。
「実は……ユーエフ王を倒したのは俺でして。良かったら、屋敷でゆっくり話しませんか?」
俺はステータス画面に変形したプヨンを見せつつ、カルコフさんに屋敷に来るよう提案してみた。
「ふむ……スライムがステータスウィンドウとは、珍しいお方ですな。『革命家』の称号も確かにおありですし……承知しました。是非ご案内ください」
というわけで、俺はアイスストウムの屋敷の応接間に、カルコフさんを迎えることにした。
◇
屋敷につくと、改めてお互い自己紹介をする。
ちなみにリトアさんにも、同席してもらうことにした。
「単刀直入に申し上げますと……私は、今年ユーエフ王に貢ぐはずだった品をそのままユカタ殿にと考えておりまして。……ちょっとお待ちください」
カルコフさんはそう言うと、ポケットからスマホのように見えるものを取り出し……何やら操作しだした。
「……それ、何ですか?」
あまりにもスマホに見えるのが気になり、質問してみる。
「……これですか? これなら共有亜空間魔道具ですが……」
するとカルコフさんは、そう質問に答えた。
クラウドストレージって……日本にいた頃でいうドライブとか、ドロ〇プボックスみたいなものか?
いや……マジックバッグとかある世界だし、その「実体の共有できるバージョン」みたいなものだろうか。
「……もしかして、お持ちでないとか? もしそうでしたら、容量無制限プランのこちらを何台かお渡ししますよ」
などと考えていると、カルコフさんはそう言って共有亜空間魔道具を操作した。
すると……机の上に、カルコフさんが手に持っているのと同じような魔道具が六台出現した。
「い……良いんですか?」
「もちろん、ユーエフ王を倒して貰えたのですから、それくらいお安い御用です。というか……これを持ってもらわないと、こちらもお礼の品の受け渡しが大変ですしな」
そう言ってカルコフさんは、机の上にある魔道具を俺たちの方に寄せた。
一台手に取って、電源ボタンと思わしきものを押してみる。
すると……画面に、ユーザーIDとパスワードの入力画面が現れた。
特に意味は無いだろうが、日本にいたころのメールアドレスと良く使っていたパスワードで、アカウントを作成する。
すると……ファイルエクスプローラーみたいな画面が出現した。
「……アカウント登録、できました」
「な……説明する前に使い方が分かったのですか? 流石はユーエフ王を倒した者、恐ろしい習得の速さですな」
「いや……」
……それに関しては、単に過去に使用感が似た機器を使ったことがあるだけなのだが。
説明しにくいので、そこら辺までは話さないことにした。
「ということは、ユーザーIDをお決めになりましたな? それをお教えくだされば、早速お礼の品をユカタ殿の専用亜空間に転送します」
俺はカルコフさんにそう言われたので、自分のメアドを伝えた。
すると……数秒後。
俺の画面に、「謝礼の品」というフォルダが出現した。
タップすると、夥しい数の品目リストが並ぶ画面に切り替わる。
「こ、これ……全部俺にっすか!?」
「もちろん。ユカタ殿の専用亜空間に転送されたものは、どうとでもご自由にお使いください。……良かったら、お送りした者に目を通すまでお待ちしましょうか? 途中で質問があれば答えますので」
カルコフさんはそう言うと、リトアさんが用意したコーヒーに口をつける。
その間……俺は品目リストをざっと眺めることにした。
……どれどれ。
作物肥大化ポーションに四次元ビニールハウス、全疾患駆逐機能付き共生メカウイルスに浮遊大陸作成用セメント……ちょっと待った。
なんか……一つ一つが最先端過ぎないか?
しかもこんなのが、100項目以上続くって……なんか、今もらった物だけで、この惑星の全資源を軽く超える価値がありそうだぞ。
「なんか……これほどの物、受け取っちゃって大丈夫なんすかね? これ、どれも凄い貴重なんじゃ……」
「はは……確かに我が惑星の自慢の品ではありますが、受け取っていただいて困るものはありません。むしろ、お気に召して頂いて何よりです」
俺が心配すると、カルコフさんは笑いながらそう言った。
ユーエフ王を倒したばっかりに……思いがけず、とんでもない品々が献上されることになってしまったな。
俺はあまりの衝撃に、放心状態にならないようにするので精一杯になった。





