第80話 あの機能をオフにできた
「フハハハハ、何やら美味しそうな奴が――」
「――うるさい。今取り込み中だ」
特殊空間に入ると……俺はまず、そこにいた高等妖兵を封印魔法で隔離した。
殺さないのは、殺してしまうと特殊空間が消えて、神5のいる場所へ戻ってしまうからだ。
「プヨン、ステータスウィンドウ開いてくれるか? ……一人倒して、ステータスがどうなったか確認したい」
封印がうまくかかったのを確認すると、俺はまずプヨンにそう頼んだ。
ステータスを見るのは、単純に神5を一人倒してどうなったか確認したいのと……何か新しいスキルを手に入れたりしてないか、チェックしたいからだ。
二千年モノの流星魔獣を倒した時は、幻影色合わせゲームにハードドロップが実装されたり、プヨンが次元の地図を覚えたりしたしな。
そういう何かがあれば、それが神5攻略の手掛かりになるかもしれない。
「はーい!」
プヨンはそう返事をすると、ステータスウィンドウに変身した。
そこには、こう書かれてあった。
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名前:ハバ ユカタ
Lv.612
スキル:鑑定(―検索) 神剣飛行
状態:能力上昇(身体能力・魔法能力共に2割増加)
身体強化
適性:混沌剣所有
ユニークスキル:スライム召喚
(相方となるスライムを召喚できる。召喚したスライムは、特殊な能力を持つ)
プヨンのスキル:
?ステータス表示
?幻影色合わせゲーム
(同色のスライムの幻影を4つ繋げて消すことで、大魔法を放てる。連鎖消しすると、魔法も火力も爆発的に増加する)
※ハードドロップを実装
?次元の地図 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「レベルが70ちょい上がっただけ、か……」
俺はステータスを見て、ため息交じりにそう呟いた。
レベルは思った通り、上がるには上がっているのだが……実際にそのレベルのステータスで戦闘してさっきの結果だったのだから、それ自体が何か希望に繋がる訳ではない。
そして期待した新スキル習得は、特に何も無かった。
ステータスには、神5攻略に繋がるヒントは、何も無さそうだな。
これ以上ステータスを眺め続けていてもしょうがないので、俺は次の策を考え始めた。
まず手っ取り早く考えられるのは、単純に連鎖数を上げて身体強化に注ぎ込む魔力を増やすことだが……正直これは、現実的じゃないな。
というのも……仮に今まで組んだ最大連鎖数の16を超えて、17連鎖を組んだとしても、注ぎ込む魔力は15連鎖の4倍にしかならないのだ。
四人を同時に相手取るとなれば……四倍の魔力量じゃ、またしても接戦になるだけだろう。
かといって、18連鎖組むかといえば、(盤面の広さ的に理論上組めなくはないものの)俺のパズルスキルでも現実的じゃない時間がかかってしまうだろう。
なので、この案はとりあえず却下だ。
本当に他に何も思いつかなければ、意地でもやるしかないが。
「……プヨン、今度は混沌剣を鑑定してくれないか?」
「りょーかーい!」
というわけで俺は、次は混沌剣を鑑定してみることにした。
自分自身やプヨンのステータスにヒントが無いなら、次点で希望に繋がり得るのは、この主要武器たる混沌剣だと考えたからだ。
というのも、全く根拠も無しにそんなことを考えている訳ではなく……前にこの剣を鑑定した段階では、「・未覚醒効果(必要に応じて覚醒)」という項目があった。
必要に応じてというなら、今こそまさにその「必要な時期」だろう。
もしかしたら既に何かしらの効果が覚醒していて、それを駆使すれば勝てるんじゃ――。
そう思ったからこその、鑑定だ。
さて、結果は……。
【混沌剣DHMO】
リヴァイアサン討伐で手に入る神剣DHMOを、【混沌剣への進化】を用いて進化させたもの。
斬撃力が単純に十倍になる他、次のような効果を持つ。
・飛ぶ斬撃の追尾機能
・超光速神剣飛行(現在、光速の一億倍まで可能。剣の所持者のレベルに応じて上限が伸びる。相対論棄却機能付きなので、飛行による周囲への影響は皆無)
・自分用特殊空間の作成機能
・ユニークスキル強化
・未覚醒効果(必要に応じて覚醒)??
「……そうも都合よくはいかない、か」
残念ながら、未覚醒効果は未覚醒効果のままだった。
他の効果も、見覚えのあるものばかりだ。
飛ぶ斬撃の追尾機能に超光速神剣飛行、自分用特殊空間の作成機能そしてユニークスキル強化。
どれも戦闘には役に立たないか、既に恩恵を受けているものばかりだ。
ここにも、ヒントは無さそうだな。
しばらく俺は、この鑑定ウィンドウを開きっぱなしにしたままボーっと考えた。
さっさと他の方針に切り替えて何か策を立てるべきなのだろうが、肝心の「他の方針」が何も思いつかないからだ。
なんとなく鑑定の文字が視界に入っているだけのまま、無為に時間だけが過ぎていく。
――しかし、そんな中。
俺は不意に……鑑定の表示内容の一部が目に留まり、斬新な作戦を思いつくことができた。
「……相対論棄却機能、これだ!」
俺が目をつけたのは、相対論棄却機能。
俺が普段、周囲に何ら影響を与えることなく超光速移動ができているのは、この機能のお陰だ。
そして俺が思いついたのは……それを逆手に取ること。
超光速で飛んだまま、この相対論棄却機能を一瞬オフにしたら……えげつない超重力と空間の歪みを生み出して、効果抜群の範囲攻撃と化すことができるんじゃないか?
そんな考えがふと、頭に浮かんだのだ。
アイツらが移動時に光速以上のスピードを出さなかったということは……アイツらでさえ、質量を持った物体の超光速移動の影響は身体にダメージが出るということなのだろう。
つまり、俺がアイツらに差をつけられるとしたら……そこだ。
「相対論棄却機能、オフ」
俺はまず、そもそも相対論棄却機能というのがオンオフ可能なものなのか試してみた。
すると鑑定の「・超光速神剣飛行」の欄に、「※相対論棄却効果一時解除」という補足説明が追加された。
できるってことは……やるしかないな。
「相対論棄却機能、オン」
特殊空間を出たらまずは助走をつけるため、俺は相対論棄却機能を一旦オンに戻した。
あまり大きな影響を出し過ぎないため、この機能をオフにするのは、超光速で神5に最接近したほんの一瞬にするつもりだ。
それでも、太陽系全体に影響は広がるだろうが……そここそはダイさんの「?地上の事は一ミリも心配しなくていい」という言葉を信じるべきところだろう。
……特殊空間から出たら、神5に攻撃する隙を与えず、超光速で一気に距離を取る。
それから狙いをしっかり定めて、再び超光速で奴らに接近し、適切なタイミングで一瞬「相対論棄却効果」を解除する。
作戦を脳内で再確認し、覚悟を決めた俺は……封印状態の高等妖兵に対し、斬撃を飛ばした。
するとその斬撃は、高等妖兵を封印魔法ごと真っ二つにした。
次第に特殊空間特有の景色が薄れ、宇宙空間が見えだす。
――さあ、作戦開始だ。





