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第79話 作戦を練り直そう

「……って、今何が……!」


 喋っていた奴は、驚いたような声を上げると……困惑した表情で、重症を負った奴がいた場所を見つめだした。

 どうやら今の不意打ちでも、プヨンの存在自体には気づかれなかったようだ。

 この様子なら、まだもう一回くらいはプラズマタックルを切り札として使えるかもしれないな。

 などと思いつつ……俺は喋っていた奴に剣先を向けながら、こう口にした。


「悪いが、お前らと長々とお喋りするつもりは無いんだ。……誰からでもいいから、かかってこい」


 俺は「誰からでもいいから」を気持ち強調しつつ、そう言った。

 コイツら、プライド高そうだし……こう言っておけば、まんまと釣られてタイマン勝負に乗ってくれるかもしれない。

 そうなれば、四人で連携を組まれるよりは対処しやすくなる。


「……ふん。一人倒したくらいで良い気になるなよ? ヤツは神5でも最弱、ただのデバフ要因だ! それすら倒すのに不意打ちが必要な奴が、この俺に勝てる訳がない!」


 すると……目論見通り、喋りかけてきた奴は単独で俺に襲い掛かってきた。

 残り三人は、見物を決め込んでいるようだ。

 相手としては、デバフ要因が潰されたことなどどうでもいいみたいだが……デバフ要因というのは、得てして過小評価されやすい傾向にある役目だ。

 つけ込む隙があるとすれば、相手のそういう自信過剰なとこか。

 などと考えていると、混沌剣の剣技補助がかかりだし、激しい剣戟が幕を開けた。



「オラオラオラオルアァ! どうした、ちょっとは攻撃してきたっていいんだぜ?」


「……!」


 斬り合いは……予想以上に、防戦一方になった。

 傷を負うことなく戦えはするのだが、一撃一撃がとにかく重く、いなすだけで精一杯になってしまうのだ。


 ……15連鎖で身体強化しててこれかよ。

 精鋭部隊っていうくらいだし、ザネットより格上なのは分かっていたが……いくら何でも、これは桁が違い過ぎるだろ。

 これと同格の奴があと三人とか、全くどうかしてる。


 だが……勝機が無い訳ではないな。

 幻影色合わせゲームと体内エリクサー生成、この二つがある俺は、実質体力も魔力も無限大。

 それに対し、コイツに疲労という概念があれば……いつかは攻撃の手が緩くなって、反撃するチャンスが生まれるかもしれないのだ。

 そうでなくとも……もしコイツが痺れを切らして、大技発動か何かで隙を見せれば。

 再びプヨンによる不意打ちとのコンボを決めて、コイツも倒しきれる可能性が十分にある。


 とりあえず……俺は今できること、すなわち目の前の敵の剣を全て弾くことに専念した。

 実時間で何秒経ったのかは分からないが、体感時間にして30分ほどにも及ぶ剣戟が、淡々と続く。

 そうしていると……初めは楽しそうだった相手の表情が徐々に変わり、苛立ちを募らせているのが伝わってきた。


 攻撃の手はあまり緩まらないが……大技で隙ができる方のタイミングは、もうすぐ来るかもしれないな。

 そう思うと、だんだんと俺の心に希望が沸いてきた。


 ……だが、次の瞬間。

 敵の予想外の行動で、その希望は潰えてしまった。


「……あまりにじれったいので参戦するですー」


 なんと……見物していた三人のうち一人がそう言って、俺に襲い掛かってきたのだ。

 ……聞いてないぞ、それは。

 神5にも、あまりプライド重視じゃないメンバーもいたってのか?


 更に最悪なことに……一人が参戦を決めると、残り二人までもが同じ行動に出た。


 ……これはもう、多勢に無勢だ。

 一人処理するのでも精一杯の奴が三人も来るとなると、もう不意打ちとかそういう小手先の技でどうこうなる範疇じゃなくなってしまう。

 今の俺で三人を正面から相手しようなどとすれば……おそらくは、一瞬で斬り殺されてしまうだろう。


 ――仕方ない、一旦戦線離脱だ。


「プヨン、次元の地図で合流してくれ!」


 俺はそう叫び、鍵を開ける動作で混沌剣を動かして特殊空間に入った。

 不意打ちのためにプラズマタックルを発動した場所に留まってもらっていたため、一緒に特殊空間に移動することはできないが……俺が先に特殊空間に入れば、プヨンなら後から合流できる。


 流石に神5たちも、特殊空間までは追って来れないだろうからな。

 一旦安全な場所に移動して、冷静に戦略を練るとしよう。

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