第73話 いざ本格的に
「あ、ユカタおかえり。結界、無事展開したと思ったら一瞬で破られたんだけど……あれユカタが突っ切ってきたからかな?」
施設に帰ると……ダイさんは開口一番、そう聞いてきた。
「……多分そうだと思います。なんか一瞬、固いものにぶつかった気が……しなくもなかったんで」
「……やっぱりそうかー。でも、ユカタが『固いものにぶつかった』と感じたくらいなら、強度的には結構いい線行ってるのかな?」
「それは……一機の魔力にしては、ってところっすかね。……ところで、結界はその後はどうなって?」
「ああ、それなら割られた直後に自動修復されてるよ。……結界自体は、魔力供給がある限りは永遠に復活できるからね」
そして受信魔道具を眺めつつ、俺たちはしばらくそんな会話を続けた。
流星魔獣の卵くらいならまだしも……UFO48対策まで考えたら、俺が「固いものにぶつかった」と感じる程度じゃ、ちょっと物足りないだろうな。
だがまあ、それは魔力供給量を増やせばどうにかなる話だ。
あとは、割れてもすぐ自動修復されるというのも、優秀なポイントだな。
となると……。
「これ……俺が近づいた時だけ結界が通過可能になる機能と、結界が破られた際日時と方位を記録する機能をつけることって可能っすかね?」
俺は考えをまとめ、そう聞いてみた。
後に衛星魔道具を量産して結界の強度を上げることを考えると、今後はさっきみたいに強行突破はできなくなるかもしれないからな。
というか、UFO48対策を考えれば、俺が強行突破できないくらいの強度は欲しいところだし。
何らかの方法で、俺だけ通り抜けれる仕組みが必要だと考えたのだ。
というわけで、まずは一点目として、「俺が近づいた時だけ結界が通過可能になる機能」を頼むことにしたのである。
そして……結界に自動修復機能があるということは、良くも悪くも「結界が破られた痕跡が結界自体に残らない」ということも意味する。
つまり、何も策を講じなければ、「何者かが外部から侵入しても、結界が破られたことに気づかず、侵入者を野放しにしてしまった」という状況が発生しかねなくもあるのだ。
だが……逆に結界が破られた日時を記録するようにしておけば、結界の復活能力はフルに活かしつつも、記録を見るだけで簡単に侵入者の存在に気づけるようになる。
要は……ある意味、この結界がレーダーの役割まで担えるということにもなるわけだ。
この二つの機能さえ加えられれば、対宇宙の防御面はこの魔道具一つで完璧と言っても、過言ではないだろう。
「うーんと……要は、ユカタの魔力に反応して結界の一部が対物理の能力を失うようにする機能と、結界が破られた時その事実を用紙に出力する機能を付ければいい感じかな? それくらいなら一瞬でできるよ」
するとダイさんは、自信ありげにそう答えてくれた。
確かに、言われたような設計で全く問題無さそうだな。
「それでお願いします」
「よし、じゃあやるね」
そう言うとダイさんは、ものの数秒で二つの魔法陣を魔力受信魔道具に刻んだ。
「できたよ!」
「一瞬でしたね」
「この魔道具本体を作るのとじゃ、難易度が全然違うからね。……じゃあ、宇宙に飛ばす方の魔道具、もう何個か作ってこっか!」
「そうっすね。お願いします」
というわけで、欲しい機能は全部盛り込んだ防衛用魔道具が完成したので……俺はダイさんに、衛星魔道具の方を量産してもらうことにした。
「もう作り方は分かったし、魔力供給さえもらえれば空飛ぶ馬車みたいに同時並行でたくさん作れるけど……どうする?」
「じゃあもちろん、魔力も供給するっす」
再びダイさんに脳の回転強化と魔力供給をかけ、また30分ほど待つ。
そして衛星魔道具が大量にできた後、オリハルコン触媒の追加分も作り終えると……俺はそれらを自分用特殊空間にしまい、起動させに行くことにした。
「行ってきます」
「うん! ウチはここからどれくらい魔力受信量が増えるか、見守っとくね!」
そんな挨拶を交わし、混沌剣飛行で飛び立つ。
と、その時……俺の頭に、一つ名案が浮かんだ。
……この魔道具、どうせなら太陽よりもっとエネルギーのある恒星の周囲を飛ばせば、もっと魔力が得られるんじゃないか?





