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第67話 驚愕の生産量

 実際にエリクサーが装置から出てきはじめるまでの間……俺はダイさんと、エリクサーの分配について話し合うことにした。


「ところでダイさん……生成されたエリクサー、どのくらいの取り分が欲しいとかありますか?」


 今回の装置作成の動機はネルザイア病患者の完治である以上、患者への配布は最優先だが……これだけ協力してもらった以上、ダイさんの取り分も決めておきたい。

 例えばネルザイア病は季節性の風土病なので、流行ってない時期は一定の割合をダイさんの取り分とするとか。

 そんな、お互いの利害が一致する落としどころが作れないかと思いつつ、俺はまずそう切り出してみた。


 だが……それに対するダイさんの回答は、極めて無欲なものだった。


「別にウチは……エリクサーはいらないかな。前だったら、寿命を伸ばすために少し欲しいとか言ってただろうけど……あの乳酸菌を食べてから、その必要もなくなったし」


 なんとダイさんは、できたエリクサーは全く受け取らなくていいというのだ。

 まあ言われて見れば……確かにラクトバチルス・エクス・マキナ株を摂取している以上、自分用にエリクサーは全く不要か。

 ダイさんはお金に困ってる様子も皆無だし……売る用にある程度もらうということも、考えに無いのだろう。


 俺は助かるが……これだけ協力してもらっておいて、それだとちょっと申し訳ないな。

 じゃあ、エリクサーで分配するんではないにしても、何かいい謝礼の品が無いか考えようか。


 毎度毎度高等妖兵の水晶玉で報酬を支払っていても、いずれ試したいことがなくなってマンネリ化するだろうし……何か良い物は無いだろうか。

 そう考えていると、ダイさんはこう続けた。


「そんなことより……ウチとしては、彗星竜だっけ? アレの素材をまた今度、扱わせてほしいかな。ユカタの依頼を最優先で受けてるのは、普通絶対手に入らない素材で面白い発明を楽しめるからだし。何かお礼にって思ってるなら、そこんとこを頼んどくよ」


 ……なるほど。

 彗星竜の素材――正確には、「自分の技術を遺憾なく発揮できるような素材と、その活用案」こそが一番の報酬というわけか。


 何というか、実に職人らしいアンサーだな。

 ダイさんの一番の望みがそれなら……俺は、斬新な案をひねり出すまでだ。


「そういうことなら、全力で考えておきますよ」


 ついさっきだって、流星魔獣の卵が産みつけられそうになったばっかりだしな。

 それにUFO48のこともあるし……近いうちに、対宇宙の防衛設備を整えておきたいと感じているところでもあったのだ。


 具体的な案があるわけではないが……彗星竜の死体ほどのものなら、何らかの形でそういった設備の構築に役立つ確率は高いだろう。

 そうなれば、ダイさんの要望にも応えられて一石二鳥だ。


 そんな考えを浮かべつつ、俺はそう返事をした。


 ◇


 その後は特に他愛もない話が続き……更に約一時間が経過すると。

 ついに……生命維持装置のエリクサー取り出し用蛇口から、液体が出始めた。


「一時間あたりどれくらい採れるか、量ってみよっか」


「そうっすね」


 俺が受け皿のところに目盛り付きのバケツを置くと……ダイさんが計時魔道具のスタートボタンを押し、測定を始めた。

 それから更に、待つことちょうど一時間。


「見て見て、凄い量採れてるよ!」


 真っ先にバケツの中身を覗いたダイさんが……興奮気味にそう言ってきた。


 だが……続いてバケツを覗き込んだ俺は、正直正反対の感想を抱いた。


「え……言うほどってか、少なくないっすか?」


 この一時間で採れたエリクサーは、たったの8リットル。

 流星魔獣と同格の魔物の腸を使ったんだし、正直バケツじゃ一時間もすれば溢れ出すのではと思っていた俺には……少々肩透かしに感じられたのだ。


 だが……。


「どこがよ! 大人一人の一回の用量が100㎖、それだけ用意するのも困難な国宝級の薬なのに……。これでももう年間生産量くらいはできてるんだよ!?」


 ダイさんは更にハイテンションになり、そうまくしたてた。



 ……そう言われてみると、結構たくさん採れてることになる、のか?

 一時間で80人分ってことは、一日で1920人分……確かに、重病に困っている領民全員に支給できるくらいのペースでは生産できている……気もする。


 まあ、当初の目的はネルザイア病に苦しむ領民を0にすることだしな。

 これで足りるかどうかは、帰ってリトアさんに年間発症者数を聞いて判断するとしよう。


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