第51話 アダマンタイトが問題になってるみたいだった
鉱山を設置した俺は、その後はすぐ屋敷に戻った。
屋敷に戻って、俺はリトアさんに一部始終を報告したのだが……そうすると、リトアさんは「鉱山資源問題って、そんな力技で解決させるものでしたっけ……?」と言ったっきりしばらく固まってしまったのだった。
それからしばらくは、何の音沙汰も無かったのだが……数日経って、新鉱山の現場から現状に関する報告が上がってきた。
その報告を、リトアさんはこう要約して報告してくれた。
「まず……鉄、銀、ミスリルに関しては、問題なく精錬できているとのことです」
リトアさんの執務室にて。
リトアさんは報告書を片手に、そう話し始めた。
「新鉱山の鉱石は旧鉱山由来の鉱石に比べて金属含有率が高く、今の設備でもより高い産出量が見込めるそうです。ちなみにですが、新鉱山の鉱石は若干ミスリルの含有比率が高いと記載されておりました」
「なるほど」
ここまでの話を聞く限りは、全てが順調そうだった。
だが……ここでリトアさんは少し声のトーンを落とし、こう言い出した。
「ただ……実は一つ、問題が生じてまして」
「ほう?」
問題、と聞いて、俺は身を乗り出した。
大した問題でなければいいのだが……一体、何が?
「新鉱山の鉱石に含まれるアダマンタイトが、今の設備では精錬できないのだそうです。今の設備では、アダマンタイトの融点を超える高温を出すことができないのだとか。精錬自体に支障はきたしていないものの……現状アダマンタイトは不純物に混じった状態で廃棄せざるを得ず、それがもったいないと報告されています」
要は……現状アダマンタイトは精錬できないが、それも精錬できるようになればより嬉しいといったところか。
致命的な問題ではなく、むしろ解決できれば新たな可能性が開ける事案であったことに、俺は少し安心した。
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」
俺はそう言って、リトアさんの執務室を後にした。
……アダマンタイトの融点を超える高温を出すことができない、か。
その言葉を反芻しながら……俺は一つ、その問題を解決できるかもしれない方法を思いついた。
俺には炉とか精錬とかの知識は皆無なので、専門的な知見からそれを解決するのは不可能だ。
だが……そんなものは無くても、この魔法のある世界でならやりようはいくらでもある。
例えば……流した魔力の量に比例して発熱量が上がる魔道具を作って、そこにオリハルコン触媒のメガソーラーで発生させた大量の魔力を流しこんだりしたら。
もしかしたら、アダマンタイトの融点を越すことくらい訳なかったりするかもしれない。
それを思いついた俺は、思い立ったが吉日ということで、さっそく今日取りかかることに決めた。
こういう時は、行き先はもちろんあの方のところだ。
というわけで……俺は混沌剣で飛行し、ダイさんの地下施設の上に立つ古小屋を目指した。
◇
小屋の近くに降り立ち、例の呼び鈴を押して少し待つ。
「はい、ダイ=アキュートです。……って、ユカタか。それにプヨン。今回はどうしたの?」
しばらくして、ガチャリとドアが開いたかと思うと……ダイさんはそう言って、俺たちを中へと招き入れた。
「俺ちょっと前、新しい鉱山を作ろうと思って小惑星を一つ持ち帰ったんすけど」
階段を降りつつ。
俺はそう言って、話を切り出した。
「ぶっ……。あのー、鉱山って作るものじゃないと思うんだけどさ……。まあ、それがユカタか……」
「その小惑星、アダマンタイトを含んでたんっすよね。でもそれ、今の精錬設備じゃ融かせないらしくて。そこでなんすけど……アダマンタイトを融かせるような魔道具って、作ることできないっすかね?」
そう言いつつ、俺は必要になるかと思い、高等妖兵の水晶玉を一つ特殊空間から取り出した。





