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第47話 アイスストウムに着いた

アイスストウムに向かう交通手段だが……自分一人なら一瞬で着く距離なのに馬鹿正直に馬車とかで移動するのもアレだと思ったので、国王に相談してみたところ、宝物庫にあった「空飛ぶ馬車」なるものを借りれることになった。


「これは昔ダイ=アキュートが開発した魔道具の一つなのじゃが……実際に空を飛ぶには膨大な魔力が必要という欠点があってのう。実用的に運用するのは誰にも不可能ということで、宝物庫にお蔵入りとなっておったのじゃ」


国王は実物を前に、そう紹介した。


「ダイ=アキュート曰く、『注ぎ込む魔力が多ければ多いほどスピードが出るように、そしてどれほどの魔力を流しても壊れないよう設計した』とのことじゃからの。ユカタ殿にはぴったしじゃと思うわい」



……なるほど、それは便利だな。


そういう設計になっているなら、すぐにでもアイスストウムに到着できそうだ。


にしても……動力源は魔力なのに、空飛ぶ「馬」車なのか……。

まあ馬を繋げば見た目はまんま馬車になるだろうから、便宜上そう呼ぶのは間違って無い気もするが。


そんな考えが一瞬頭をよぎったが、俺は余計なツッコミは入れず「空飛ぶ馬車」を借りていくことにした。


「ではリトアさん、中へ」


リトアさんに車内に入ってもらい、それから俺も中に入った。


……どれどれ。

見た感じ、車体の真ん中についてる半球っぽいものが動力源っぽいな。

ここに魔力を充填すればいい感じか。


「すみません、最後に……アイスストウムってどの方向ですか?」


「あっちじゃ」


「ありがとうございます。ではまたいつか」


「またねー」


連鎖を組みながら、俺はプヨンと共に車体から顔を出して国王に挨拶した。

そして、まずは試しにということで4連鎖消しした魔力を、車体の真ん中の半球に注ぎ込んでみた。


すると……車体は一気に高度を上げ、それから俺が指定した方向に向かって猛烈なスピードで進み始めた。


「うわ……な、なんですかこのえげつないスピードは! ……てか、なんかバリバリって音聞こえますけどこれ大丈夫なんですか!?」


あまりのスピードに面食らったのか、リトアさんはそんなことを叫んだ。


「このままじゃ、ばしゃこわれちゃうよー」


そして、この程度のスピードではもはや動揺しないはずのプヨンも……そう心配そうに伝えてきた。


……確かに、バリバリはまずそうだ。

借り物な上にリトアさんもいるこの状況で、音速を超えた瞬間車体が爆散、なんてことになったら目も当てられない。


俺は急ぎ2連鎖ダブルを組み、この馬車の正面に流線型の対物理結界を張った。

すると空気抵抗が大きく軽減されたお陰か、バリバリという音は消えて一気に静かになった。


「多分、これでもう大丈夫です」


「なら良かったです。にしても……たった数秒で王都が点みたいになるなんて、信じられない速度ですね……」


リトアさんはこの馬車の後部についてる小窓を覗きつつ、そう口にした。



もう少し速度を上げようか、とも思ったが、車窓から流れる景色をボーっと眺めるのも悪くない感じだったので、俺はそのままの速度で飛行を続けた。


そうして、待つこと数十分。


「あ、あそこがアイスストウムです! そろそろ速度落とせますか?」


リトアさんにそう言われ、俺は着陸のための制御を始めることにした。


着陸といっても、この馬車は魔力で浮いているので、対地速度を0にしても空中にとどまることは可能だ。

というわけで、俺は飛行機の着陸ではなくヘリコプターのランディングみたいな挙動で「空飛ぶ馬車」をゆっくり地面に降ろした。


「じゃあ俺はちょっと馬車を返してくるんで、ちょっとそこで待っててください。一瞬で戻ってきますんで」


そう言って、俺は「空飛ぶ馬車」を特殊空間にしまってから混沌剣飛行で王都に移動し、宝物庫の門番に馬車を返した。

そして、混沌剣飛行でリトアさんのいた場所まで戻ってきた。


「では行きましょうか」


「ちょっと待ってください。『馬車を返す』って、どこに返してきたんですか?」


「王都の宝物庫に」


「えぇ……。ユカタさんにとって、馬車っていったい何なんでしょうね……」


リトアさんには絶句されたけど……まあ借りたものは返さないといけないからな。

あの国王様なら気前よくずっと貸してくれてそうな気もしないではないが、それをあてにするのもちょっと申し訳ないし。


今後のことを考えれば、一台あると便利なのは確かだろうが……まあそれに関しては後日、ちゃんと自分用のをダイさんに発注するとでもしよう。



などと考えつつ街中を移動していると、俺たちは領主用の屋敷の前に到着した。


国王から貰った書物を特殊空間から取り出し、衛兵に見せる。

すると……


「ハバ ユカタ様ですね。ようこそ、新領主様。私がご案内しますので、ついていらっしゃってください」


衛兵の案内のもと、屋敷紹介が始まった。

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