第42話 襲撃者
「はじめましてユカタ様。私が当主代理を務めさせていただきます、リトアと申します。以前はアチャアにて、政務の補佐を担当しておりました」
リトアと名乗る女性は、そんな自己紹介をした。
アチャア……確か、ロイゼンの出身地だったところだよな。
実際に政治の経験はある人がやってくれるなら心強い……って、そりゃ当然か。
「リトアはな、年々減り続けていたアチャアの税収を一気に回復させた、凄腕の政務補佐だったのじゃ。勿論、無理な増税とかは一切なしでじゃぞ? して……ユカタ殿の当主代理としてはこれ以上適任なものはおらんと思うのじゃが、どうかね?」
国王は、そのようにリトアの経歴を説明してくれた。
……って、めちゃくちゃ優秀じゃないか。
そんな人が当主代理をやってくれるならありがたい事この上ないし……そもそも、これ以上の力量の持ち主なんて存在しないってレベルなんじゃないだろうか。
「いやもう是非リトアさんで。お願いします」
俺は二つ返事で、国王にそう意思を伝えた。
「左様か。それは良かった」
国王はそう言うと……先程サインを入れた書類の一部を手に取り、俺とリトアに手渡した。
「これは、ユカタ殿を正式がアイスストウム領主であることを証明するための書類じゃ。この認定証の効力は絶対で、これがある以上は誰もお主の領主の座を奪えん。リトアにも控えは渡しておるが……大事なものじゃから、失くさぬようにな」
国王の説明を聞きつつ、書類に視線を落とすと……書類にはでかでかと国王の印が押されているとともに、そのような文言が記されてあった。
「ドレンジアなら、現領主の息子の左遷の手続きがまだ必要じゃったが……アイスストウムなら、その書類さえ持っていけばすぐ領主になれる。出発の準備ができたら、すぐに向かうといい」
国王は更に、そう続けた。
「分かりました」
俺はそう言って、受け取った書類を特殊空間にしまった。
失くさないようにという事なら、ここが一番だろう。
なんせここは、俺専用の空間なのだからな。
「……ユカタ様、今書類をどこに!?」
すると……その様子を見ていたリトアが、驚きの声をあげた。
「特殊空間っすよ。安全性で言えば、ここが一番でしょう」
「と、特殊空間って……そんなところに入れて、次元妖に書類をズタズタにされたりしないんですか?」
「あ、特殊空間って言っても、次元妖のじゃないっす。神剣を強化したら俺専用の特殊空間が手に入ったんで、そこを引き出しがわりにしてるんすよ」
というか……次元妖の特殊空間だったら討伐するまで出られないし、手だけ突っ込んで物を出し入れするなんてできないからな。
まあリトアは冒険者ではないので、そこら辺については疎くてもしょうがないことだろう。
ちなみに、次元妖討伐に行こうとしたSランク冒険者が間違えて俺の特殊空間に来てしまう確率がゼロであることは、鑑定を用いて確認済みである。
「え、ユカタ様ってそんなことまでできたんですか……」
リトアはそう言って、絶句してしまった。
「それも特注版『神剣強化の虫眼鏡』の効果の一つなのじゃな? 天晴れなもんじゃのう……」
国王は前回の謁見の時を思い出したのか、そんなことをポツリと呟いた。
さて……必要な話は全部終わったみたいだし、そろそろお暇しようか。
そう思いかけた時のことだった。
突然……部屋の外から、劈くような爆音が聞こえてきた。
「ひっ……!」
「な……何じゃ、今のは!」
リトアも国王も、突然の出来事に動揺してしまっている。
俺も同じく、何が起きたのか分からないでいると……今度は、この部屋に入る扉の前で、いざこざが起こっているのが聞こえてきた。
具体的な発言内容までは聞き取れないが、これが異常事態なのは間違いない。
「どうしますか?」
俺は一応、国王にそう聞いてみたが……国王も事態を測りかねているらしく、返事はなかった。
そして、そうこうしているとついに……ガンッという音と共に扉が蹴破られ、衛兵らしき人が吹っ飛んで転がり込んできた。
扉があった場所には、額の刺青が不気味に光っている長身の男が、扉を蹴破った時の姿勢のまま立っていた。
その男は足を下ろすと……こんなことを言い放った。
「流星魔獣を倒した者はここにいると聞いたんだが」





