第38話 服の性能──前編
今回の話、「1話にすると長いけど2話にすると短い」みたいな分量になっちゃったんで、今日明日で前後編に分けて投稿することにしました。
明日もお楽しみに!
しかし……テトラアンミンオリハルコン(Ⅱ)イオン、「日光を浴びると魔力を生成する」ってことは、言ってしまえば太陽電池の魔力版みたいなものと考えればいいのか。
もしそういうことなら……この触媒を使えば、魔力を生成するソーラーパネルみたいなものも作れるかもしれないってことになるよな。
それが可能なら、結構面白いことができそうだ。
例えば、この触媒を塗った巨大な帆を展開する人工衛星を、宇宙空間に設置したら……それだけで、膨大な魔力の供給源ができてしまいそうだ。
宇宙太陽光発電にちなんで、宇宙太陽光発魔とでも命名するか?
なんか語感悪い気もするが。
魔力、電気以上に便利なエネルギーだし……そんな装置ができれば、何かの役に立つことは間違いないだろうな。
具体的な魔力の利用法については、まださっぱり思いついてはいないが。
そんなことを考えていると、ギルドに到着したので……俺は一旦考え事をやめ、受付に向かった。
「ユカタさん!」
カウンターの前まで行くと……受付嬢は待ってましたとばかりにそう言った。
「オリハルコンの溶かし方について、何か分かったんですか?」
「はい。溶かし方とか溶かしたものの性質とか、色々と」
「な、そこまで……」
そう言って、絶句する受付嬢。
具体的な話に入る前に、ダイさんが作った服の性能の方をまずは調べてしまいたいと思った俺は……例の服をカウンターの上に置いて、こう切り出した。
「まあ、細かい話は後でじっくりするとしまして。この服は、溶かしたオリハルコンを用いた最初の発明品『着るだけで魔力を補給する服』なんすけど……これ、誰かに試着してもらうことってできるっすかね?」
そう伝えると……受付嬢は、今度は目を見開いてその服をマジマジと見つめだした。
「……え、もう具体的な発明品まであるんですか!? そうですね、でしたら……」
そんなことを言いつつ、書類をめくる受付嬢。
しばらくすると、「あ、この人なら。ちょっと待っててください」と言ったかと思うと……受付嬢は、依頼掲示板を眺めている一人の男の元へと走っていった。
そして、程なくして……受付嬢はその男を連れ、カウンターに戻ってきた。
「この方は、Aランク冒険者のムゲジュです。一応、この街では一、二を争う実力者でして、神剣さえあればSランク上位にも匹敵するほどの方なんです。私としては、ムゲジュさんこそその服の試着の適任者だと思うのですが……」
受付嬢はそう言って、男を紹介した。
「はじめまして、ムゲジュです! ユカタさんの実験に協力させていただけるなんて光栄です! 表彰式の時は、あまりの人だかりに遠目に見るので精一杯だったので……」
そして、ムゲジュと名乗る男は……目を輝かせながら、そう自己紹介してきた。
何というか……この男の反応、転移前、俺が実況者だった頃のサイン会に来てくれていた人たちに似てる気がするな。
まあ、それは一旦置いておくか。
確かにAランク最強クラスの実力者なら、かなり消費魔力の高い魔法を放てるはずだし……試着候補としては最適なんじゃないかと思うしな。
俺の方からも、この方に試着の協力をお願いするとしよう。
「いえいえ、今日はよろしくお願いします」
そう言ってから……俺はこの服の概要、そしてどういう風に実験に協力してほしいかについて説明した。
◇
そして……受付嬢とムゲジュさんにひとしきりの説明を終えた後、俺たちはギルドの訓練場へと移動していた。
理由はもちろん、ムゲジュさんに服を着て魔法を使ってもらうためだ。
本来なら、Aランク冒険者がこんなところで本気の魔法をぶっ放すなど言語道断なのだが……俺が訓練場全体に膜状の対魔法結界を張るという条件付きで、許可を得ることができたのだ。
ここの訓練場は日当たりもいいし、実験にはもってこいだ。
「なんか凄いですね、この服! どんどん力が漲ってくる感じがします!」
試着しているムゲジュさんは、早速服の効果を感じているようだが……果たして、実際に魔法を使ったらどうなるのか。
「準備OKっす! いつでもどうぞ!」
俺が合図すると……ムゲジュさんは渾身の一撃を放った。
ムゲジュさんの手からは巨大な闇の龍が出現し──その闇の龍は、訓練場の的に思いっきり噛みついた。
闇の龍は、ギリギリと的を噛み砕こうとするが……俺が何重にも結界を張ってるだけあって、流石に的が破壊されることはなかった。
十数秒経つと、やっと闇の龍は姿を消した。
「どうですか、撃ってみた感じは」
俺はムゲジュさんに、そう質問してみた。





