第26話 神剣強化チャンス
表彰の日から更に一か月が経ち。
俺は国王に謁見すべく、王宮に向かっていた。
謁見の目的は、領主の代理人をつけてもらうための交渉だ。
俺、なんか流れで男爵位を貰ってしまったけど……正直、領地経営なんてできる気しないしな。
できれば、政治に詳しい補佐役を得て、任せっきりにしてしまいたいところなのだ。
もちろん、なんの対価も渡さず要求だけ呑んでもらおうなんて真似はするつもりはない。
今回……俺は交渉材料として、妖大将討伐で手に入れた水晶玉を国王に渡すつもりでいる。
「ユカタ殿、久しぶりじゃな」
謁見の間に入ると……国王は、朗らかな笑みを浮かべて待っていた。
「お久しぶりです」
「流星魔獣を討伐した英雄殿とお話しできるのは、実に嬉しい事ではあるのじゃが……何の用もなく会いに来た訳ではないのじゃろう?」
「そうっすね」
国王の方から、本題に入るよう促してくれたので……俺は早速、要件を話すことにした。
「俺、男爵の位を頂いたっすけど……正直、政治とか分かんないんっすよね。ですから……できれば、代理人みたいなのを派遣していただきたいなと」
「……ほ? なんじゃ、そんなことじゃったか」
俺が頼みを伝えると……なぜか、国王はカッカッカと愉快そうな笑い声を上げた。
しばらく不思議に思っていると……国王は、再び口を開いた。
「分かっておる。当主代理なら、既に手配済みじゃ」
「え、そうなんっすか?」
国王の言葉に……俺は思わず聞き返してしまった。
「当然じゃろう。ユカタ殿のように、自分で功績を上げて叙爵された者……特に、その功績が戦果である者は政治には疎い事が多いからのう。あらかじめ、代理で領地運営する人があてがわれるよう、手配しておるのじゃ」
「それは……ありがとうございます」
結論は……俺の悩みは、杞憂だったということだった。
ならもう、妖大将の水晶玉は渡さなくてもいいか。
そう思い、俺は謁見の間を去りかけたが……途中で気を変え、やはり国王に見せるだけ見せてみることにした。
高等妖兵の水晶玉ですら、買取制限がかけられたりするんだしな。
ましてや妖大将の水晶玉など、どこに持って行ったって買い取ってはもらえないだろう。
それに、妖大将の水晶玉、確かに価値は高くて使い道はあるのだろうが……自分ではその使い道も思いつかない。
だが国王に見せれば、この水晶玉の扱い方のヒントが得られる可能性があるんじゃないかと思ったのだ。
「実は……今回の謁見の為にと、準備していた者があるんっすけど」
俺はそう言って、国王の目の前に妖大将の水晶玉を出した。
すると……国王は驚きのあまり、玉座ごとバランスを崩しかけてガタンゴトンと言わせてしまった。
「そ、その水晶玉の大きさ……輝き……普通の高等妖兵のものではなかろう?」
「はい。本人曰く、妖大将だそうです」
「な……」
絶句する国王。
一瞬の沈黙ののち、国王はこう聞いてきた。
「ユカタ殿……一体、そんな物を持ち込んでどうするつもりだったのじゃ?」
「国王様にお渡しするつもりっした」
「……いやいやいや! そんな物、ユカタ殿から受け取れる訳なかろう!」
俺の返事に対し、国王は激しく首を左右に振りながらそう言った。
「そもそも余のどの宝物よりも価値の高いものを渡されては、余の立場がないじゃろう……」
国王はそう言って、頭を抱えてしまった。
うーん……この様子だと、国王からこの水晶の使い道を聞くのは無理そうだな。
仕方ない、諦めて帰るか。
そう考え、俺は国王に挨拶をしようと口を開いたのだが……僅差で先に言葉を発したのは、国王の方だった。
「そうじゃ。そういえば……ユカタ殿は、持ち帰る宝物はどれにするか決めたのじゃろうな?」
「あ……そういえばまだっすね」
「左様か。ならばせっかくじゃ。ついてこい」
そういえば、すっかり忘れていたな。
ここ一か月は、特殊空間でハードドロップを使いこなす練習に費やしてたし。
そんなことを考えつつ……俺は国王の案内で、宝物庫を見て回ることとなった。
◇
「……そして、これが『神剣進化の虫眼鏡』じゃ」
宝物庫を一巡し終える頃。
それまでは、なんとなく宝物の説明を聞いていた俺だったが……ここへ来て、急に面白そうな宝物を目にすることとなった。
「それ……いったいどんな物なんですか?」
「これはな、この虫眼鏡で焦点に集めた太陽光を神剣の刃先に当てることで、神剣の格を上げられるアーティファクトなのじゃ。材料に高等妖兵由来の水晶を使う上に、一回きりの使い捨てという貴重なものなんじゃぞ」
そして……その国王の説明で、俺は更なる名案を思いつく事ができた。
「なるほど。……ちなみにっすけど、それを作った魔道具職人って、お会いする事可能なんっすかね? できれば……この妖大将の水晶玉で同じものを作ってもらえればって思ったんすけど」





