第19話 暴発は完璧に防いだ
「算段が無いわけではない? ……どういうことだ?」
俺の発言に、青髪のモトはそう聞き返した。
「そうっすね。流星魔獣の脅威が天災の滴の四倍程度なら、俺が天災の滴を処理した時の四倍の威力の魔法を放てばいいんじゃないっすか?」
まあ、降ってくる滴と暴れまわる生物では、多少は勝手が違うかもしれないが。
単純計算の上では、討伐は不可能ではないはずだ。
そう思っていると……冒険者たちのざわめきは、より一層大きくなった。
「四倍って、簡単に言うけどよ……あの天災の滴を退ける魔法の四倍だぞ? そんなのどう考えたって不可能じゃねえか」
冒険者の一人は、そんな発言までもし始めた。
そんな中、ロイゼンが小声で耳打ちしてきた。
「ユカタさん……。あの魔法の四倍の威力が出せるって……もしかして、天災の滴の時は本気ではなかったんですか?」
「手を抜いたってわけじゃあない。ただ、あの時は時間がなかったからな……全力の魔法を構築すると間に合わないから、途中で魔法を放ったんだ」
「そ、そんな……」
俺の説明に絶句するロイゼン。
だがロイゼンはすぐに我に帰り、会議室全体に向けてこう発言してくれた。
「とにかく、任せてみましょう。ユカタさん本人ができると仰っているんですし、どうせ他に打つ手など何も無いのですから」
「そ、それもそうだな……」
ロイゼンの力説に、青髪のモトはこくこくと頷いた。
そして、この会議をこうまとめ上げた。
「じゃあ、作戦はこうだ。まずユカタ、他の事は何も考えなくていいから、とにかく流星魔獣を倒す事だけに専念してくれ。場所は後で教える。他のSランク冒険者は、ユカタが流星魔獣を倒してくれる事を信じつつ、自分の出身の街を精一杯守るんだ」
「「「「「了解!」」」」」
青髪のモトの指示に全Sランク冒険者が賛同し、集会は終わりとなった。
神剣ハウスを出ると、青髪のモトは神剣飛行で浮かびつつ、一つの方角を示した。
「あっちにまっすぐ飛んでいってくれ。流星魔獣は巨大だからな……気づかずに通り過ぎてしまうことだけはあり得ないはずだ」
「了解っす」
俺はそう返事して、青髪のモトが示してくれた方角に向かって飛び始めた。
◇
「13……14……うーん、これじゃ暴発するな……」
俺はひたすら神剣飛行しながら、スライムを積み上げていった。
途中までは、簡単に組めた。
それこそ最初の折り返しから12連鎖あたりまでは、ほぼ思考停止で組み上げられた。
だがその辺から、ちょっとずつ組むのに頭を使わなければならなくなってきた。
「幻影色合わせゲーム」のスライムは、必ず二個連なったのがセットになって降ってくる。
しかも、それらは色違いであることが多い。
ここで気をつけなければならないのは、連鎖の暴発だ。
暴発とは、火力になるスライムを置くべき場所に配置した際、余ったもう一色のスライムの方が全く関係ないところの連鎖開始地点となり、同時消しが多発することだ。
連鎖数によってほぼ指数関数的に火力が上がる仕組みである以上、それは火力のガタ落ちを意味してしまうのだ。
それを防ぐためには、暴発の元になりそうな余剰スライムを、上部のみで終わる1〜2連鎖で消さなくてはならない。
天災の滴の時とは違い、今回は時間をふんだんに使って何度でも積みを修正できるのだ。
暴発なしの16以上の連鎖ができるまで、消しては積んでを繰り返そう。
そう思いつつ、俺は暴発の元になる余剰スライムを消し……その火力で、眼下の魔物に向けて攻撃魔法を放った。
特に狙いを定めなくても、俺の攻撃は全弾魔物に命中し、魔物を木っ端微塵にしていった。
あまりにも魔物の移動の密度が高すぎて、どんなに適当に魔法を放ってもどれかの魔物に当たってしまうのだ。
この規模となると……もし俺が流星魔獣に勝てたとしても、それが長期戦の末だとしたら、先に街の防衛が全滅してしまうかもしれない。
それでは意味がない。
一刻も早く流星魔獣を始末することを、意識して戦わねばな。
「ユカタ、『ほーるど』つかいわすれてるよー」
気持ちを新たにしたとほぼ同時に……プヨンは、そんなことを口にした。
「あ……そうだったな」
言われて思い出した。
「幻影色合わせゲーム」、ルールのほとんどが俺の十八番のパズルゲームと同じなのだが……実は一個だけ、相違点もある。
「ホールド」という、置き場所に困るスライムを一旦温存し、別の色のスライムを落下させる技が存在するのだ。
この点だけは、まるで某四つ連なった正方形を落下させて敷き詰めるゲームのようである。
ついつい忘れがちなその機能を思い出した俺は……現在落下中のスライムを「ホールド」することで、理想の積みを完成させることができた。
段位計算よし。
ちゃんと、暴発なしの16連鎖が完成している。
あとは連鎖を開始するのみ。
その状況になって十分くらいが経ったところで……突然、進行方向から巨大な火柱が立つのが見てとれた。
……おそらく、そこにいるのが流星魔獣とやらなんだろう。
「プヨン。一旦『幻影色合わせゲーム』はここで中断だ。ちょっと鑑定になってくれ」
「りょーかい!」
まずはパッと手に入る敵の情報だけでも入手すべく、俺は鑑定を発動した。





