魔法
サオリと出会った日、午後は魔法を教える約束になっている。
今僕らがいるのは遺跡の屋上。
地上から800メートルはある。
遺跡の建物は外に行くほど低くなっていき、その先は砂漠だ。
ここからだと全体が見渡せる。
「魔法を教えるといっても、俺は適性無いから細かいことはは分からないけど、魔法には基本属性ってものがあるんだ。それは自然界に存在する、火、水、光、風、音、雷、重力を指す。」
「なるほど。」
「適性さえあればそれらを生み出すことは簡単で、って実際にやった方が早いな。」
僕は手のひらを返して上に向ける。
「僕の真似して。」
続いてサオリが手のひらを上に向ける。
「身体中のエネルギーを手のひらから抽出するイメージで力を集めてくれ。できるか?」
「ふんぬぬぬぬっ」
サオリの手に微量だが神気が集まる。
「その調子。」
神気が皮膚を通り抜けて手の上に浮遊する。
「心の中で叫んで。燃えろ!」
ボン!
神気が勢いよく燃え爆ぜた。
「火が出た!出たよ!」
「火に適性があるみたいだね。今、手のひらから出したエネルギーは神気と言って、適性があるなら意思を送るだけでその形に変化してくれる。これが最下級魔法だ。」
「なるほど、魔力みたいな物ですね!」
魔力ってのはよく分からないが。
「慣れれば慣れるほど多くの神気を出せるようになるし、量も調整できるようになる。」
「呪文とか魔法陣とかは使わないのですか?魔法と言ったらそのイメージなんですけど。」
「もちろん使うさ。呪文は複雑な魔法を使う時に使う。例えばさっきの火の温度を調節したり、球にして飛ばしたり。神気に送る意思に命令を込めれば、神気はその通りに動いてくれる。下に魔術書があったと思うからそれ見て覚えるといいよ。あげるから。」
「あざす!」
「補足だけど、世の中には神から天職を授かる人がいるんだが、そういう人は呪文無しで特定の複雑な魔法を使えることがある。例えば錬成士は「隆起しろ!」って心の中で叫べば地面が隆起する。」
リュータがそれだ。
「次に魔法陣。大きく分けて2種類あって、1つ目は呪文と同じで複雑な魔法を可能にするもの。」
僕は懐から一枚のカードを取り出す。面には魔法陣が刻まれている。
「例えばこれとか。」
手頃な石を一つ拾い、上へ向かって投げる。
続いて腕を内側から通し、カードに回転をつけて上へ投げる。
「加速。」
カードは急に速度を上げ、残像を残して上空へ消えていった。
「今のが物質の速度を上げ、硬質化させる魔法陣。」
空から落ちてきた石を片手でキャッチする。
そして、真っ二つになった石の断面を見せる。
「おぉー。」
サオリが手を叩いている。
称賛だろうか、煽りだろうか。
「…そして二つ目。」
また懐からカードを取り出し、少し離れたところへ投げる。
「使用者がその場にいなくても魔法を発動させるためのもの。ゴーレムに使ったり、トラップに使ったりする。」
切断された石の片方をカードに向かって投げる。
ゴゴゴゴゴゴッ
足が魔法陣に接触した瞬間、勢いよく炎が吹き出し、火柱を作り上げた。
「暑っ!」
「すまん。火の粉が飛んだか?」
サオリが手首を擦っている。
「とまぁ、こんな感じだ。僕の知り合いに魔法陣作りが得意な奴がいるから、今度紹介してやるよ。」
「あざす!」
「それで、これからお前はどうするつもりだ?」
「決まっているじゃないですか!冒険者になるんです!異世界と言ったらこれですよ!」
サオリの世界には冒険者ギルドも無いのか。男たちは退屈してそうだな。
「もちろんハルカ君も連れて行きますよ!」
「え?僕も行くの?」
「当然です!どの作品でもだいたい最初に親しくなった人が冒険のパートナーなんです。魔王討伐も出来ないですし、これだけは譲れません!」
この遺跡も大体の所は調べたし、最後の一ヶ月をギルドで過ごすのも良いかもな。
「分かった。付き合ってやるよ。」
「それでは早速出発しましょう。まだ見ぬ世界が私たちを呼んでいます!」
「悪いけど出発はまだ出来ないよ。準備しないと。まだ武器も持ってないでしょ?」
「そうでした。では出発は明日ですね!」
一人で興奮しているサオリを連れて、僕はリフトに乗って下へ進むのだった。




