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王都へ

 昼前は僕が一番好きな時間帯だ。眠気が完全にとれてなく、なんだか体がふわふわしている。この感覚が気持ちいい。馬車の窓からやわらかい風が吹き込んでくるのも最高だ。僕は春の季節に浸っている。


「どうしたの?今になって故郷との別れが悲しくなった?」


「まさか。」


 馬車には僕とケイトしか乗っていない。ケイトは制服を着崩し、仕事を完全に放棄している。


「お前、この仕事辞めたら何をするんだ?」


「全く決めてないわ。世界中を旅しようかと思ったけど、ほら、私美人だから男どもに絡まれるだろうし。」


 ケイトは美人だ。それは否定できない。自分で言うのはどうかと思うが。


「自由になってからのことは自由になってから考えるわ。」


「それもいいかもな。」


「今はただあの空間から抜け出したいだけ。」


 馬車は街を抜け、草原を行く。何もない。何もいない。草だけが揺れる草原をただひたすらに進む。

 心地よい風の中で眠りにつこうと体勢を変えた。その時だった。


「ハルカ、何か見えるわ。馬車?かしら。」


「こんなところに?わざわざ静かな道を選んだんだが。」


 窓から外を覗くと通り道に馬車が三台停まっていた。


「どういたしましょう。」


 御者が言う。


「そのまま進んでくれ。」


「誰か降りてきたわ。誰かしら。」


 降りてきた少女は薄緑色の綺麗なドレスで着飾っていた。そのドレスには見覚えがあった。


「フォルテ!?どうしてここに?」


「ここを通ると思った。御者さん、ここまででいいですよ。この人と一緒に行くから。」


「しかし、我々の任務は、」


「大丈夫、途中で時間潰してから帰ればバレないわ。」


「お前、こっちの了承は取らないのかよ。」


「許可してくれるでしょ?」


「…するけど。」


 相変わらず生意気なやつだ。


「おやおや?ケイトさんじゃないですか。お久しぶりですねぇ。屋敷猫が、屋外に出ることもあるのですねぇ。」


 一瞬空気が凍りついた。


「お久しぶりです、フォルテさん。薄汚れた服しか着ない貧乏貴族だと認識していたので、誰だか分かりませんでしたよ。」


 2人は握手を交わし、バチバチと視線を交わす。2人は仲が悪いのだ。

 間に入って2人を引き剥がすのが僕の役目だ。


「それで、フォルテ、どうしてここにいるんだ?」


「決まっているでしょ?ハルカと一緒に王都まで行くの。馬車も帰らせてしまったし。」


「ダメ。ここに置いて行くわよ。」


「ケイトは黙ってて。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 結局フォルテを乗せて行くことにした。

 馬車は今山を登っている。

 2人はニコニコしているが、空気はピリピリしている。


「なぁ、2人とも、もっと楽しくやろうよ。」


「私は楽しいよ。」


「私も楽しいわよ。」


「…」


 何だよこいつら。フォルテも、僕の馬車に乗って行くなら雰囲気ぶち壊すなよ。

 そういえばこいつ、どうして僕を待っていたのだろう?何気なくそんなことを考えていた。そんな時だった。


「気配感じるわ。」


「本当だ。結構多いな。」


 20人弱が馬車と少し距離を置いて並走している。


「何をしているんだろう、!?ケイト!」


「天壁!」


 突如、馬車が白い光の壁に覆われる。光の壁は迫り来る炎から僕らを守った。


「山賊か。ケイト、山賊に襲われるのは帰宅の時じゃなかったか?」


「こいつら本物よ。どうせ貴族のあなたを捕まえて身代金を要求しようって算段だわ。しょうもないわ。」


 外の男が大声で言った。


「我らはドレーク団!ユーザハルカの身柄を拘束する!言う通りにするなら乱暴はしない!」


「やれやれ、僕をお呼びか。」


 馬車の扉を開き、外に出る。盗賊たちは木の枝に立ち、身軽さを醸し出している。猿人族の男たちだ。一歩前に出ようとしたところで割り込んできたのはケイトだ。


「今日でやめるけど、今はまだあなたの護衛よ。」


 フォルテも僕の前に出る。


「その尖った耳に薄緑色のドレス!エルトリア家のフォルテだな!今日は運がいい!」


 山賊たちは高笑いを上げている。


「周りは囲んである!もう逃げられないぞ!」


「逆よ。逃げられないのはあなた方。」


 フォルテが冷え切った声で言う。山賊の顔から笑みが消えたのはフォルテとケイトの威圧を感じたからか。


「お前らやっちまえ!」


 リーダー格の男が叫ぶと山賊が一斉に飛びかかる。


「御者さん!こっち!」


 僕は御者さんを馬車の中に避難させる。外は2人で十分だろう。


「風刃!」


 フォルテがそう唱えると無数の刃が山賊を襲う。一射目でほとんどの山賊は息絶えた。リーダー格の男は何が起きたのか理解できていないようだ。当然だ。フォルテの風刃を目で追えるわけがない。


「全く、空歩も使えないのに空中から襲うなんて、戦闘初心者かよ。」


 ケイトが言う。


「ああああああぁぁぁぁーーーー」


 リーダー格の男は逃げ出してしまった。


「逃さねぇよ。空歩!」


 空気を踏み台にしてケイトが追う。

 枝の上しか足場にできない山賊が空気を足場にできるケイトから逃げられるわけもなく。


「捕まえた。」


 山賊はあっさり捕まってしまった。


「やめてくれ!命だけは!」


 ケイトはナイフで山賊の目を切り裂く。

 山賊は目をおさえて倒れこむ。


「ハルカを狙った報いだ。ここで死ね。」


 ナイフで首を刈り取ろうとした。その時、


「煙幕!」


 山賊の体から煙が溢れ出し、あっという間に視界を奪った。


「お前と、ユーザハルカ、エルトリアフォルテ。絶対に許さない。」


 そう言い残し、山賊は気配を消して去っていった。


「ケイト、大丈夫か?」


「えぇ、こっちに怪我はないけど、取り逃がしてしまったわ。」


「お前が無事ならそれで十分。」


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