右手の人格
ノールと出会った日の夜、僕は1人で森の中にいた。ギルドからは少し離れている。魔法陣が作動した時に感じた違和感、推測が正しければ、僕はもっと強くなる。
「おや?マスター、こんな山奥で何をしているのですか?もう寝ていると思ったのですが。」
ノールが胸ポケットから覗いている。
「お前、どこから顔出してんだ。」
「私はあまり人に見られる訳にはいかないので、普段はこうやって登場しようかと。」
「びっくりするからやめてくれ。」
ノールも出てきたし、ちょうどいい。
「ノール、お前、魔法陣を使う手伝いをするって言っていたよな?」
「ええ、言いました。」
「早速あの力を使ってみたい。」
黒い気を使った時の痺れ、明らかに右腕に電気が流れていた。
「良いですよ。魔法陣を作動させましょう。」
ノールが人差し指をタクトの様に振るう。すると、魔法陣が碧色に輝き、黒い気があふれ出した。掌に神経を集中し、気を操る。
「ほうほう、2回目にしてはなかなか上手いですね。」
気を頭上に浮遊させる。
「稲光!」
叫んだ瞬間、天目掛けて雷が登っていった。碧色の雷だった。
「もう気付いてしまいましたか、さすが我がマスター。」
「これが何なのか説明してもらうぞ。どうせ碧目の男が関係しているんだろう?雷魔法の使い手だったってリュータが言っていたからな。」
「ええ、あの方は関係しています。」
「あいつがお前の創造主なんだろう?」
「いいえ、創造主様ではありません。申し訳ありませんが、これ以上は言えません。創造主様とのお約束なんです。」
あいつが創造主ではないのか?そう言えば、フードをかぶった女の話をナナセさんがしていたな。碧目の男もフードを深く被っていたし、あいつらが割と大きい組織の可能性はあるか?
「碧目の男の組織のトップがノールの創造主か?」
「何を言っているのですか?」
違うのか。結構本気で推測したのだが。
「創造主様の詮索は禁止です。」
「ごめん。」
「この気を実戦で使うには私とマスターの連携が必要なわけです。信頼するのは重要です。」
「ああ、ごめん。そろそろ帰ろうか。」
さっきからギルドの方向で何かが光っている。誰か居るのだろうか。
そう思いつつ、僕とノールは山を下った。
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「あれ?ハルカくんじゃあないですか。何していたんですか?」
部屋に戻ろうとする途中、廊下でサオリとばったり会った。
「サオリこそ、こんな時間に何やっているんだ?」
「ふふ、新しい杖を明日まで待っていられるわけないじゃないですか。」
「鍛錬していたんだな。僕も同じだよ。」
「サオリ様!」
「あ、ノールくんじゃあないですか。どうしてポケットの中にいるのですか?」
ノールはまたポケットから顔を出していた。
「お前、やめろと言ったよな?」
「申し訳ありません。あまり人に見られる訳にはいかないので、目立たないところから登場したいのです。」
「へー、可愛いですね。」
煽てるのはやめてくれよ。やり続けちゃうだろ?
「ところで、サオリも夜型なんだな。」
「えぇ、そうですよ。まだ眠れないです。」
「それなら、今からクエストにでも行くか?」
「行きます!今度こそ私も役に立ちますよ!」
「決まりだな。準備してクエストカウンター集合。」
「了解です!」
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「どれにします?」
「これなんかどうだ?ガルム8体の討伐。報酬は1万ベン。」
「ガルムってさっき倒したやつですよね?違うやつがいいです。」
「そうか、これはどうだ?ノブスマ2体の討伐。報酬は8千ベン。」
「それにしましょう。出発ですよ!」
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「サオリ!一体そっち行った!」
ノブスマは木から木へ飛び移る魔物で、とてもすばしっこい。一体はやったが、もう一体は逃してしまった。
「任せてください!風刃!」
サオリが杖を振るうとノブスマの体は真っ二つになって地に落ちた。
「風刃なんて使えるようになっていたのか。」
「さっき練習しましたから。1体私が倒しましたよ!」
「すごい進歩だ。」
クエストは無事に完了し、2人は今度こそベットに潜った。




